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511. 旅行最後の夜

 僕、ライルはマリアンジェラを僕のベッドに寝かせ、アンジェラにリリィを見に行くように促した。アンジェラは落ち着いた様子で、自分の宿泊している部屋に入って行った。そしてすぐに戻って来た。

「ライル、リリィがいない。」

「え?マジか…。電話かけてみなよ。」

 アンジェラは慌てて電話をかけたが通じず、次にリリアナに電話をかけた。

「リリアナ、私だ。アンジェラだ。リリィはどこにいるか知らないか?」

「え?リリィなら私達と一緒にスパにいるわよ。アンジェラ達も先にスパでスッキリしてから夕食にしましょう。待ってるわね。」


 ん…?なんだか違和感を感じた。

「アンジェラ、とりあえずリリィを見に行ってきて。あとね、アンジェラは見てないんだけど、こんなことがあったんだ。」

 そう言って、僕はリリアナがアズラィールに核を握りつぶされ、新しい何かを入れられるところを記憶の譲渡で見せた。

「ライル、なぜ早く言わない。」

「あ、さっきアズラィールが説明してくれてさ、あの黒い核はダメだから新しいのをあげたって。自分で怒って転移して行ったし…。」

「そ、そうだな…。確かにブチギレていた気がするが…。」

「デコピンされて怒ってたんだよ。ふふふ。」

「ははははは…。」

 二人で大笑いになったところで、マリアンジェラが目を覚ました。

「ふぇ…パパ。あれ?また、夢見てたのかな…。」

「マリー、どこも痛くないか?」

「うん。おなかすいた。」

「まだ食べるの?」

「夢の中で食べたのはお腹いっぱいにならないんだよ。」

 いや、実際食べてただろ…。と心の中で思う…。

 アンジェラがマリアンジェラを抱っこして、とりあえず3人でリリィを探しにスパへ行った。


 スパでは、どんちゃん騒ぎに近い状態だった。

 マルクスとフィリップがすっかり酔っぱらった状態で、今までの人生の中で起きた恥ずかしい出来事ランキングを発表していたのだ。

 観客のようにリリィとリリアナ、そしてアンドレとアズラィールや左徠、徠央までいる。水着姿で漫才?という感じだ。

「リリィ、大丈夫か?」

「あ、アンジェラ。マリーどうだった、行ってきたんでしょあっちの世界。」

 全然心配してそうじゃない…。どういうこと?

 後から聞いた話では、リリィはまた夢を見たんだそうだ。

 どうやら僕達が『神々の住む場所』のサロンで『祭壇に食べ物を置いてくれ』と言われている辺りから聞いてたみたい。帰る方法を教えると言ってた辺りでリリアナがスパに行こうって誘いに来たんだとか…。ちゃんと帰れそうだと思ったら、気分も良くなったらしい。

 そうか…最初の方の話、聞かれなくて良かったかも…。

 自分が本当は死ぬはずだったとかいうのは聞きたくないよな。


 アンジェラは皆に『もう7時過ぎているぞ、ダイニングに集まるように』と言った。

 そう、この日はこの親族旅行では最後の皆でとる夕食だ。

 アンジェラは皆が揃うまでの間、厨房に行き、何かを指示していた。

 30分後には、皆ダイニングに集まった。

 アンジェラが皆の前で挨拶をした。

「皆、全員で楽しく過ごせてうれしく思う。今回、アンドレとリリアナ達が最初不参加であったが、途中問題が起き、それをライルが解決してくれて無事に戻って来た。

 ライアンとジュリアーノも今までにない素晴らしい能力を持ち、これからも私たち、そして人類のために役に立ってくれることだろう。

 誰一人欠けることなくこれからも過ごしていこうではないか。長く生きていれば嫌なこともあるかもしれないが、皆で助け合って乗り切っていけたらと思う。」

 皆、頷き拍手をする。そこで、手を挙げる者が一名いた。マリアンジェラだ。

「パパ、あれ、言わなくていいの?」

「マリー、何をだ?」

「あの…神様の話…。」

「ん?」

「えっと、みんな、祭壇にお供えしたら、ルシフェルとアディが美味しいもの食べられるから、お願いねって言う話…。」

 え?それ…?アンジェラは笑いを堪えながら皆に説明した。

「我々の起源である大天使ルシフェルとアズラィールと話す機会があったのだ。

 彼らは我々とは違う次元に存在しているが、祭壇に供えたものを食すことが出来るらしい。兄上の店の新作スィーツとラビオリを所望しているそうだ。」

 それを聞いて、みんなドッと笑った。そしてマルクスが言った。

「社長、俺たちの事務所にも祭壇作ってくれよ。」

 確かにそう言われると、城と教会にしか祭壇はない。そんな中ニコラスがアンジェラに駆け寄った。

「アンジェラさん、大天使様達にお会いになったのですか?もっとお話しを聞かせて下さい。」

 目を潤ませてそういうニコラスにアンジェラは目を細めて言った。

「ニコラス、全て見せてやるから後でライルの部屋に来い。」

「あ、ありがとうございます。」


 皆が食事を終えたのは午後9時半を過ぎていた。

 リリアナ達はちびっ子たちを連れて部屋に戻り、ミケーレとマリアンジェラはアズラィールと左徠と共にゾンビ映画を見に地下のシアターに行った。

 ニコラスと、なぜか未徠夫妻、そして徠神がライルの部屋に集った。

「未徠も知りたいのか?」

 アンジェラが聞くと、黙って頷いた。未徠は徠人がどうなったのかが気になっているのだろう。

 アンジェラは静かに言った。

「ライル、頼む。今日あったこと、彼らに見せてくれるか?」

「いいけど、いいことも悪いことも含めての話だと思って見て欲しい。」

 皆首肯したのを確認し、僕の手を掴むように言った。


 僕は封印の間で起きたことから始まり、リリアナが一度死に、新たな核を与えられたこと、そして『神々の住む場所』に場所を移動した後に大天使アズラィールに聞かされたマリアンジェラの出生に関わること、そして、僕達が全て大天使の核を持つ者であることを説明された記憶を見せたのだ。

「私たちは、クローンなのか?」

 未徠が衝撃を受けたような面持ちで言った。

「おじいさま…。知りませんでしたか?僕たちのDNAが完全一致していること…。」

「…。確かに、おかしいとは思った。私は日本に来たドイツ人の4世に当たるというのに、どこにも東洋の要素がない。」

「父様はDNA鑑定をして知っていたようですよ。アズラィールと父様のDNAも、僕と父様のDNAも100%一致していること。」

「では、徠夢と徠人は私たちの子供ではないということか?」

「いや、それに関しては、彼らの言ったくだりからすると、間違った考えだ。

『地上の人間と交わり子を生したときに天使の核が必要になる。』のだと聞いた。

 あくまでも子を生したのは間違いない。ただ、そこに天使の核なるものが入ると何かが変わると考える方が自然だ。」

 アンジェラはフォローするように言った。

 僕は、あの絵本を思い出して更に付け加えた。

「双子じゃないと天使になれないって、絵本に描いてあったんだ。それに双子なのにも理由があるって言ってた。バックアップだって。」

「ねぇ、ライル。さっきの話だとマリアンジェラはあなた達と違うってこと?」

 祖母の亜希子が悲しい顔で言った。

「そう、マリーはクローンじゃなくて、初めて天使と天使の間に生まれた子供なんだって。アンジェラとリリィの実の子ってことだよ。」

 ニコラスは話しについて行けなくてびくびくしている。

「ニコラス、何か聞きたいことはあるかい?」

「い、いや…私は、かなり混乱しているよ。何を聞いていいかわからない。

 で、でも私たちのルーツがこの世界では『神』で、全てがその神の思し召し通りに進んでいるという事なのかな。」

 最後に徠神がポツリと言った。

「うちの店にも祭壇作ってくれるとありがたいな。試作品を食わせてやりたい。」

「あるじゃないか、リリィの天使像が。あの前にでも台を置いておけばいいだろう?」

「そんな簡単な感じか?」

「本人たちを目の前にしたら、兄上も考えを改めると思うぞ。」

「???」

 僕は思わず突っ込みを入れた。

「確かに、大天使アズラィールはうちのアズラィールと同じレベルで軽かったね。

 言い方変えると『気さく』ってのかな…。」

「父上は軽くはないだろう。あれは『順応性が高い』というのだ。」


 皆で顔を見合わせてドッと笑った。

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