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503. ハツユメ(6)

 白い光が眩しくて目をギュっと瞑った。マリアンジェラと繋いでいる手が、少し汗ばんでいる。そして、僕の顔に生暖かい風が吹きつけた。

 ハッとして目を開けると、そこには超絶近い二人の顔が…。ミケーレとリリィである。

「なっ。何してんだよ。ちかっ。」

 そう言って右手で二人を遠ざける。左手はまだ繋いだままだ。

 手を繋いで寝ていたことに文句でも言われるのだろうか…そう思いながらマリアンジェラの方を見ると、僕と繋いでいる手ごとギュッと抱きしめている。

 怖かったんだな…アンジェラとリリィがこの世界から消えると聞いて…。

「マリー、起きてる?目を開けて。」

「う、ううぅ…。」

「マリー大丈夫か?」

「あ…。夢だった…。」

 リリィが僕に触ろうとしたが、僕は手を払いのけた。

「えっ?」

 リリィが少し悲しい顔をした。でも、夢の中で見た記憶を見られたくなかったのだ。

 マリアンジェラがすかさず僕をフォローした。

「ママ、わたしたち、すごく嫌な夢を見たのよ。だから、ライルは見られたくないって思ったんだと思う。」

 リリィはわかったという風に頷いて口を開いた。

「二人ともなかなか起きて来ないから、ドアをノックしたの。でも反応が無くて…。勝手に入ってごめんね。でも、二人が眠っている時にライルのおでこの真ん中が皮膚の内側でずっと白く光っていて、怖くなっちゃったのよ。」

「ママ…。大丈夫よ。未来の事を見た夢とかじゃないの。」

「え?じゃあ、どんな夢だったの?」

 ミケーレがリリィより先に言った。

「大天使のルシフェルとアズラィールが、ベッドの…」

 僕は思わずマリアンジェラの口を押えた。

「マリー、それはいいよ。」

 僕は差しさわりのないところだけリリィとミケーレに説明した。

 あくまでも夢の中の話だという事、大天使ルシフェルとアズラィールはこの世の『神』と呼ばれる存在に等しく、『創造主』であること。そして、彼らは、ここだけではなくいくつもの『地球』を別の時空に多数存在させ、それを見守っていると夢の中では聞いたこと。僕達は彼らからこの世界の『抑止』『救済』などのめいをうけていること。

 そして、そのいくつもの世界は、いずれ淘汰され、一つだけが残ったときに彼らの元から離れるということを教えてもらったことをだ。


「あくまでも夢だからね。矛盾も多い夢だったし…。シチューの味がしたり…。全部が大理石みたいなもので出来ていたのに、シチューを食べたら色づいて普通に見えるんだ。とにかく不思議な夢だよ。」

「それがライルとマリーの初夢なの?」

「あ、そだ。これがハツユメだよぉ。タカは出てこなかった。」

 ミケーレの問いにマリアンジェラが答えた。

 全くもって、現実になられては困るような夢である。


「マリー、ライル、もうそろそろ起きて朝ごはん食べましょ。」

「うん。マリーお腹ぺっこぺこ。」

 リリィに促されて、僕らは身支度をした。

 朝食を食べている時に徠夢と留美、未徠と亜希子の四人が隣のテーブルに座っていた。

「どうだ、マリー。初夢は見たかな?」

 そう聞いた徠夢にマリアンジェラが無邪気に答える。

「見たけどぉ、タカは出て来なかったよ。」

「そうか、他にも富士山とか茄子なんかも縁起がいいらしいぞ。」

「ふーん。それもなかった。ごつごつの山とね、お城とね、大天使と…ケーキ。」

 留美がニコニコしながら楽しそうに言った。

「縁起物だけじゃなくて、いい夢だったら現実になる。悪い夢だったらそうならないように気をつける。って考えればいいらしいわよ。」

「そっか…。」

 そう言うと、マリアンジェラはアンジェラの膝の上によじ登り、ちゃっかり抱っこされて食べ始めた。

 アンジェラは文句など言わず、マリアンジェラに言われるままに食べ物を取ってあげたり世話をやいている。

「マリーね、パパのお膝の上大好き。」

 アンジェラは嬉しそうに「そうか。」と言った。

 マリアンジェラはアンジェラと離れる未来を受け入れるつもりはないという意思を表しているのだろう。

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