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496. 年越しと専属カメラマン

 12月31日、金曜日。

 僕、ライルは年末の親族旅行で聖ミケーレ城に滞在中だ。

 昨日はかなり遅い時間にライアンとジュリアーノが助けを求めて過去から転移してきたことで、マリアンジェラと共に国家間の争いにまで発展したアンドレとリリアナ拉致事件を解決するために帆走した。

 結局二人を拉致した浅はかな隣国の王は城をユートレアに占領され、クロガザールは無くなった。

 僕とリリィは体と核を分離できるため、危険な事をしなければいけないときには、体を封印の間に置いて活動するのだが、リリィは妊娠がわかって少し経ったことから、体を分離できなくなっていた。

 そんなわけで必然的に危険なことは僕の方へ回ってくるのである。

 今日は、もう危険なことなど全くない楽しい城ライフを送れそうである。

 しかし、朝、マリアンジェラの超絶激しい寝相で目が覚めるまで、のんきにぐっすり爆睡していたのだ。


 ん…顔の上に丸太が落ちて来たかのような重さと衝撃だ…。

 痛さはあまり感じないが、ものすごい重量感で目を覚ました。

「うっ、ひゃっ。」

 目を開けると右手にピンクにリボン柄の幼児のパンツが見える…。

 そして、マリアンジェラの足が僕の顔の上にのっていた。あれ?僕は昨日自室に戻り、一人でベッドに入ったはずだ。どうして、いつの間に眠ったのだろう…。重い…。

 その細さからは信じられない重い足をよけ、さすがの僕もため息をついた。

「はぁ…。マリー、いつ僕のベッドに入ったの?」

 マリアンジェラを揺すりながら、声をかけた。

「ん?あ、あれ?おかしいなぁ…自分のお部屋で寝てた…気がするけど…。」

 そもそも僕は普通なら眠れないのに、眠っているのが変なのだ…。

「マリー、正直に言ってよ。」

「あははは…はは…。バレちゃった?そーっと転移してきて、ライルを眠らせて、自分も夢に入ろうと思ったら…」

「思ったら?」

「真っ暗で夢も何もなかった。まっくらけ…。」

「…。」

 なんだか雰囲気が悪くなったところで、思い出した。

「あ、今日さ、かえでと一緒におせちの食材を買いに行かなきゃ…。

 マリーも一緒に行く?」

「え?いいの?」

「もちろん。マリーがおせち食べたいって言ったんだろ?」

「そうなの。お正月はおせち食べるっておじいちゃまが言ってたの聞いて…。」

「じゃ、早くシャワー浴びて支度しよう。時差があるから、もう昼過ぎだよ。」

「うん。」

 マリアンジェラは宿泊中の部屋に戻りアンジェラにお風呂に入れてもらい。

 僕は自分でシャワーを浴びた。

 出かける準備ができ、スマホでかえでさんに電話をかける。

「あ、僕、ライルだけど…。かえでさん、今日おせちの食材を買いに行くって、リリィと話してただろ?あれ、僕とマリアンジェラが行くことになったから、準備が出来たら教えて。」

 かえでさんはもう準備ができていると言った。大きくなっているマリアンジェラと合流してサロン前でかえでさんを待つ。荷物持ち要員だからだ。すぐにかえでさんが来た。

「お待たせして申し訳ありません。」

「僕らも今来たばかりだよ。」

 三人でアンジェラの芸能事務所の東京支店、会議室に転移した。

 さすがに会社はお正月休みで、誰もいない。

 ドアは中からは出られるが、外からは入れない設定にアンジェラがしてくれた。

 事務所からはタクシーで御徒町や築地などを巡り、大量の海鮮食材などを購入。

 途中マリアンジェラが座り込んで言った。

「かえでしゃん…マリーは朝ごはんを食べるの忘れて今死にそうなのよ。」

「あ、あぁ…気づかず申し訳ありません。今すぐに食べられるものを買ってきます。」

 そう言ってお肉ゴロゴロのメンチカツとカレーコロッケなどを買ってきた。

 マリアンジェラは見た瞬間に1個目完食、あっという間に6個を食べきった。

「ふぅ…落ち着いた。」

 すごい勢いをみてかえでさんも若干引き気味だ。

「かえでさん、調理はどこでするの?」

 僕が聞くと、朝霧邸で作って聖ミケーレ城に持って行くと言う。

 調味料や調理器具が対応できるかわからないとの事だ。僕は購入した食材を持ち替えるふりをして、度々朝霧邸のダイニングテーブルの上に物質転移で送った。

 すごい荷物だったからである。


 買い物ももうすぐ終わりかというとき、観光客も多い築地で、僕たちは人の目を引いてしまったのだろう。誰かが『あれってライルじゃない?』『あ?あのCMの?』

『一緒にいるの共演してるMじゃない?』『え、うそーヤダー。ラッキー』

 という声が聞こえて来た直後に人だかりを作ってしまった。

 アメリカでは警戒していたが、日本でも認知度が多少あったのか…。

 というか、マリアンジェラはここでは『M』となっているのか?

 僕たちは顔を見合わせ二人で首を傾げた。

「M?」

「さぁ…マリーは知らないよ。」

 そこで、かえでさんが教えてくれた。日本のTV番組でマリアンジェラを推すコメンテイターがいて、何かの情報番組でマリアンジェラの事を『Mは世界で一番美しい。』と断言してたらしい。

「しゅっごい、笑えるねぇ。マリーじゃなくて『M』だって。」

「長くて言いにくかったのかもな、日本人には…。」

 三人で苦笑いだ。そうこうしているうちに、本気で脱出不可能なくらい人が集まって来た。仕方がない、裏技を使うか…。

 僕たちは飲食店に入るふりをして、そのトイレに行き、人の目が無いことを確認し、そのまま朝霧邸へと転移したのだ。


 日本の朝霧邸では普通の三段重が二つと大きな丸い寿司おけがあったので、それに三段入るようにかえでさんが料理を作ってくれた。

 煮豆など時間がかかる物を調理している最中に、他の料理をちゃっちゃと作っていく。

 マリアンジェラは味見専用部隊だ。

「この大根と人参の細いのなあに?」

「それはね、ナマスっていうのよ。」

「ふ~ん。」

 そう言いながら、大きめの味見をする。

「お、お、おぉぉぉぉ…すっぱーーーー。ぶふぉっ。」

 かえでさんと僕で大爆笑だ。

「マリー、一口が大きすぎるんじゃない?」

「むぅ、小さいと味がわからないもん。」

「味見だけで半分くらい無くなりそうだよ…。」

「ぶぅ。」

 そんな感じではあったが、どうにか5時間ほどで料理も出来上がり、重箱や寿司おけに詰めて聖ミケーレ城に持って戻ることが出来た。

 もう一つかえでさんが年越しそばも用意してくれた。

 従者が食べる分も含め、かなりたくさんの麺と具材、そしてダシをとったりなど…。

 城に戻っても準備が大変だったようだ。


 うちの親族は殆どが日本で生活したことがあるため、和食も大好きであるが、和食で大盛り上がりだったのは、従者たちである。

 最近はドイツやイタリア、フランスなどでも和食ブームだが、本気の和食はなかなかない。どちらかと言うと、別のアジア圏の国出身のシェフがなーんちゃって和食を提供していることが多いと感じる。

 そんな中、夕食を提供する時間帯になりアンジェラが家族も従者たちもみな一緒にダイニングに集まり、好きに食事を摂るように言った。

 洋食に少し飽きていたせいもあり、日本から来た家族はもちろん、みんな期待大だ。

 そこにリリアナ達が転移で到着…。

 なんと、いつもの行きつけのすし屋に電話でお持ち帰りの注文をしていたようで、50貫入りの大きな寿司おけが10段っも積み上がった状態で持ち帰って来た。

「うっわ。リリアナ、ぐっじょぶ。」

 マリアンジェラの本気の誉め言葉である。

 こうして、親睦会も兼ねた年越し和食ディナーが始まったのである。


 従者も家族も皆ごちゃまぜで、皆、話が弾む。

 そんな中、芸能情報大好き左徠が、ネットニュースを開いてアンジェラに報告していた。

「ライル…築地で騒がれたのか?」

「え?あ、うん。ちょっと…。普段人の多いところに行かないから油断してた。」

 アンジェラが右の口角を上げてニヤリと悪い笑いをした。

「うわ…何、怖いんだけど…。」

「実はな…。1月1日の日本時間の朝、お前の初写真集を売り出すんだ。」

「はぁ?聞いてないんですけど。」

「言っていなかったからな。写真はこれまでのCM撮影時の裏方の写真とか、家での普段の様子とか、そういう写真ばかり何だが…。」

「ちょ…ちょっと、家での写真っていつ撮ったのさ。」

「うちの専属カメラマンが、日々密着して撮影してくれたんだ。な、ミケーレ。」

「うん、結構いいのが撮れたの。パパに自慢したら写真集にしてくれるってお約束してくれた。僕、カメラマンとして名前載ってるんだよ。」

 リリィがささっとどこかに行ったかと思うと、その写真集を持ってきた。

 う…マジだ。本当に写真集だ。


 写真集を受け取ってパラパラと中を見る。CMの撮影の時に打ち合わせてる様子や、メイクしている所は、スタッフが撮ったのだろう。

 その他に、あるわ、あるわ。サンルームでピアノを弾いてる写真、マリアンジェラとツイス〇ーをやっている写真、チェスをやっている写真、朝食を食べている写真、ベッドでくつろぎながら本を読んでいる写真、風呂上がりのバスローブ姿で頭を拭いている写真、青い薔薇を一輪咥えている写真…これはミケーレに『ちょっとこれ咥えて』と言われた気がするが…。そして、小さなマリアンジェラとベッドで爆睡している写真。

「こ、これは…この最後のは、ヤバいのでは?」

「なぜだ?4歳児の姪に添い寝しているだけではないか?」

「そうだけど…。」

 確かに、写真は全て上手に撮れていた。チェスの駒の間からピントを合わせたり、動きのある写真はすごくいいところで撮れている。

「これ、この前アンジェラにもらったデジカメで撮ったのか?」

「うん、あのカメラ僕の宝物なんだ。」

 家の中にパパラッチがいるようなものだと思った瞬間だ。

 もう発売まで数時間の所でいうなんて…。まぁ、早く言われたら絶対拒否ってたと思うけど。マリアンジェラがその写真集を手に取って見始めた。

「パパ、マリーもこれ欲しい。」

 アンジェラがマリアンジェラにも写真集をあげる約束をしている。

 どういう罰ゲームなんだ???

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