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489. 年末の親族旅行(4)洗脳解除開始

 午後5時過ぎ、殆どの親族がこの城のいわゆる食堂であるグレートホールに集まった。

 朝振舞われたブランチの時は4人掛けのテーブルが10セットほど設置してあったのだが、ディナーの時は長いテーブルが一カ所にドドンと置いてあった。

 よく王様達が晩餐をしている時に座るようなテーブルだ。いわゆるお誕生日席に椅子が2脚、その両脇にはずらっと椅子が並べられ、今回は全部で22脚の椅子が置かれていた。


 お誕生日席にはアンジェラとリリィが座り、その両隣に向かい合わせでミケーレとマリアンジェラ、その隣に僕が座った。

 ディナーはコース料理だった。

 前菜にタコのマリネ、アスパラガスのポタージュ、スモークサーモンとチーズのサラダ。

 パスタはラビオリ、ボロネーズ、カニのトマトソースの三種。

 メインはビーフのグリル又はミラノ風カツレツなどだ。

 もちろん、お店ではないので足りなかったら追加を頼めばいくらでも持って来てもらえるらしい。


 皆がそろっていることを確認し、最初にアンジェラが話し始めた。

「ここは500年前のユートレアの王オスカーにミケーレが賜った城だ。

 今日は、急に提案したにも関わらず、皆が集まってくれたこと、うれしく思う。

 アンドレとリリアナとニコラスが、今ユートレアに帰省中でいないが、皆遠慮せず楽しんでくれ。」

 皆、楽しそうに笑い、食事が始まった。

 普段一緒にいないドイツ組と、徠神率いる日本組、そして朝霧の本家のメンバーだ。

 混ざり合って座っていることもあり、色々と話がはずんでいる様だ。


「ところで、アンジェラ、この料理、どうしてパスタが三種類もあるんだ?」

 普段おとなしいルカが聞いた。

「あぁ、今日は特に料理人を雇ったわけではなく、いつも私達に仕えてくれている従者を呼んであるのだが、得意な料理が少し異なったようでな、いっそ三種盛りにしたらどうだと言う話になったのだ。」

 アンジェラも真面目に答える。

「マリーね、これ全部好きなヤツだよ。」

 聞いてもないのにマリアンジェラがそう言うと、従者が三種類のパスタをてんこ盛りにしたプレートをマリアンジェラの前に置いた。

 驚いた顔をしたマリアンジェラに皆の注目が集まっている。

「うっそ…、食べていいの?」

 アンジェラの方を見てマリアンジェラが言った。

「残してもいいから、好きなだけ食べなさい。」

 マリアンジェラが首肯して言った。

「次はカニのパスタだけ大盛りで食べてもいい?」

 アンジェラが『クスッ』と笑って従者に合図をした。

 僕は内心、こんなに食べてもまだおかわりするってすごいな…と思いつつ、食が進まないまま周りの様子を見る。

 リリィが僕に気が付き、気を遣って話しかけてきた。

「ライル、ごめんね。なんだかさ、今回の妊娠ですごくライルとの距離が出来た気がするの。融合も出来なくなって、正直不安なんだよね…。」

 …。うーん。どうこたえるべきか?

「リリィ、大丈夫だよ。最近はマリーが協力してくれて、ご飯も食べてるし、彼女の夢に入ればそのまま僕も眠れるんだ。」

 言ってる僕も複雑だが、聞いているリリィはもっと複雑な顔をした。


 午後7時半頃、皆楽しい食事を終え、思い思いの場所へ散っていく。

 僕とマリアンジェラは一足早く城内の一階、普段は誰も立ち入らないような厳かな空間である大聖堂に行った。

 聖マリアンジェラ城に比べ、その大聖堂は非常にシンプルで、狭い空間だった。

「想像よりすごく小さいね。」

 マリアンジェラが言った。僕も思わず首肯する。

 うす暗い大聖堂の中で、置かれているろうそくにいくつか火をつけマリアンジェラと僕は、洗脳を解きたいと言った僕の父親徠夢とその妻留美、そして立ち合いをするリリィとアンジェラを待っていた。


 そこに最初に入ってきたのは僕の祖父である未徠と祖母の亜希子だった。

「ライル、マリー、私たちも見届けさせてもらうよ。」

 先日、赤ちゃんライルを目の前にして、異常な様子を見せた息子夫婦に不信感を持った二人が、何が原因で一体今日何が起こるのか、見ておきたいと言うのだ。

「はい。よろしくお願いします。」

 父様と留美と同居している祖父母が事情を知っていてくれる方が僕にはありがたい。

 次に大聖堂に来たのはアンジェラとリリィだった。

「ママ、持って来てくれた?」

「はい、これ。」

 リリィからマリアンジェラがリュックを受け取っている。

 ん?なんだろう???


 そして、父様と留美が入ってきた。

 これで面子が揃ったのである。マリアンジェラが父様に聞いた。

「徠紗は乳母といっしょ?」

「そうだよ、ここには連れてこない方がいいと思ったんだ。」

「うん。準備いいね。」

 皆無言で首肯する。マリアンジェラがむくむくと大きくなり、15歳の僕に合わせた大きさになった。

 いつも不思議なのだが、最近彼女は大きくなると、言う事まで大人びて感じる。

 マリアンジェラが口を開いた。

「おじいちゃん、そして留美さん。この前のこと覚えてるよね。

 ライルが赤ちゃんの姿になったときに二人の様子がおかしかったこと。」

 二人は頷いた。マリアンジェラは続けた。

「マリーね、手を当てなくても見ようと思えば、人の体やいろんな物をスキャンすることができるの。

 だからどこか悪かったり、怪我をしている人は体から変な色が漏れてるのが見える。」

 マリアンジェラは、赤ちゃん姿の僕を見た二人が急に脳の黒い部分が現れて変な反応をしたと言うのだ。

 マリアンジェラは続けた。

 今、赤ちゃんじゃないライルを見てもそれが出ていないというのだ。


「ママ、お手伝いして欲しいの。これは目に見えないから。わかりやすくするために、マリーがどんな風に見ているかママがマリーの代わりに皆に見せて欲しい。」

「どうやって?私もそんな風には人の体は透けて見えないよ。」

 マリアンジェラがリリィに近づき、手を握った。

『ブワッ』と眩い白い光が一瞬大聖堂の中を全て白く埋め尽くした。

 光がおさまると、マリアンジェラがリリィに言った。

「今だけママにもこの能力が使えるようにしたから、パパの方を見て、胸のあたりを見て集中してみて。すごくきれいな核が見えるのよ。」

 リリィは言われるままアンジェラの体の胸のあたりを見つめた。

 アンジェラの体の色が少し薄くなり、衣服なども透明になった。そこにには青い大きめの核が炎を纏い、核の中に青と真珠の粉の様なキラキラした物が渦巻いているのが見えた。まるで惑星の様だ。

「きれい…。すごくきれい。」

 マリアンジェラはリリィの手を触れば、リリィの見ているものを同じように他の人にも見えるようにできると言い、未徠と亜希子、アンジェラの三人にリリィの手に触るように言った。

「ママ、記憶の譲渡じゃなくて、今見ているものを共有するつもりでイメージして。」

 リリィが言われるままにイメージをすると、三人にもリリィに見えているものが脳内に見えた。

「これ見る時、皆は目をつぶった方がいいかも…。画像が二つ重なって何がなんだかわかんなくなるから。」

 三人が目を閉じてみる。アンジェラが少し笑いながら言った。

「自分の魂を見透かされているようで恥ずかしいものだな。」

「パパ、この核ってものは、私たちにしか無いのよ。ママ、おばあちゃまの方見てみて。」

 胸元を見るが心臓が動いているのが見えるだけだ。

「は、恥ずかしいわね。」

 亜希子も恥ずかしいと言った。

「ところで、マリー。今だけ使える能力って?私は基本的にライルと同じで触ると能力のコピーができるんだけど…。」

「ママ、この能力はね…多分天使の能力じゃないから、マリーが使わせる許可をしないと使えないんだと思う。浄化は天使の能力だからコピーできてるけど、今までこれは使えてないでしょ?」

「そんなことあるんだ…。」

 僕はリリィの側に行き、手を触った。

『ブワッ』と眩い光が出てライルにも能力が付与された。

「うわっ、ビックリした。」

 僕にまで能力が行くとは思っていなかったのか、マリアンジェラは少し驚いたようだった。

「それじゃ、始めるね。」

 そう言うとマリアンジェラは自分の小さいリュックから赤ちゃんライルが着ていた服を取り出した。

「ママ、おじいちゃんと留美さんの頭を見てて。」

「うん。」

 僕も父様と留美さんの頭のあたりを見つめていた。

 その時、マリアンジェラが僕に近づき言った。

「ちょっとこれ、持ってて。」

 赤ちゃんの服を僕に持たせる。え?なんか変なプレイみたいでいやだな。

 そう思った時、ぐらっと体が揺らいで、僕の視界が急に変わった。

「うわあっ」


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