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484. 年末のあれこれ

 12月28日、火曜日。

 誘拐事件から一夜、僕は自宅で眠れぬ夜を読書をして過ごした。

 マリアンジェラが疲れてアンジェラと共にアンジェラの寝室に行ってしまったのだ。

 いつもならマリアンジェラの夢に入り込み、色々な意味でリフレッシュできているのだが…マリアンジェラも昨日は色々と興奮したり、苛立ちがあったのだろう。僕の所には来なかった。


 朝、6時頃、もう本も読みつくし、そろそろ新しい本を何冊か購入しておこうかと思った時だ。父様からメッセージが届いた。

『私たちは洗脳を解いてもらうことを決断した。マリアンジェラに伝えて欲しい。』

 僕にはどんな洗脳をされているのかさえよくわからなかったが、父様達はそれを解明したいと結論を出したという事だ。

 まずはマリアンジェラに伝えるにしても、どんな洗脳が施されているのか僕も知る必要があるな…。朝食の時にでも聞いてみよう。


 もう少しすると朝食の時間だが、その前に倉庫に行き、もう一つの世界から何か送られてきていないか確認した。

 ピンク色の封筒に手紙が入っていた。

 JC瑠璃リリィからの手紙だった。

『ライル、CDありがとう。

 めちゃかっこよくて、歌も良かった。CDのジャケットの写真も最高。

 私のいる世界にお兄ちゃんのライルがいなくて残念だよ。

 あ、それから、無事に犯人も捕まって今警察が取り調べてるんだけど、どうやら身代金の要求は下っ端の誘拐実行犯が企んでたことみたい。

 どうやら指示した別の人がいるらしいけど、まだ誰だかわかっていないんだって。

 私ももうアンジェラの家と自分の家だったら転移できるように回復したので、今回は手紙を送るためにイタリアに来ていて、年末と年始はこっちで過ごすつもりです。

 また何かわかったらお手紙書くね。瑠璃リリィより』


 こっちでの誘拐事件も知らせておくとするか…。

 僕は一度部屋に戻り便せんに手紙を書いた。

 もう一つの世界で起きた拉致事件とほぼ同じように日付は違うが拉致事件が起こったこと。しかし、僕がおとりとなって潜入し実行犯達と、黒幕を逮捕したことだ。

 黒幕が僕の認識している『由里杏子』で、教授と呼ばれ、大学で研究室を持っているようだという事も付け加えた。

 僕もまた何かあったら知らせると付け加え封をして日付を書いた。

 そのまま倉庫の中に転移し、封筒をあの絵画の上にのせた。

 封筒が消えるのを見届けて、僕はシャワーを浴びて着替えを済ませた。


 着替えを済ませて自室のクローゼットから出ると、マリアンジェラが目をこすりながら僕の寝室でべっどによじ登っているのが見えた。

「マリー、おはよう。またここで寝るのかい?」

「あ…ライル。ううん。寝ないけど…なんかちょっと寒いからブランケットに潜ろうかと思ってたの。」

「もう朝食だろ?ダイニングに行こう。」

「うん。」

 僕はマリアンジェラを抱っこしてダイニングに向かった。

 ダイニングでは、目の下にクマを作ったリリィが機嫌悪そうにクロワッサンをかじっていた。

「おはよ。すごい迫力のある顔だね。」

「あん?そお?喧嘩売ってる?」

「あ、いえ。そういうつもりでは…。」

 マジで機嫌の悪いやつだ。マリアンジェラを席に座らせ、すでに用意されている目玉焼きとベーコンとクロワッサンとコールスローをプレートにのせてマリアンジェラの前に置き、そっとマリアンジェラの耳元で『何かあったの?』と聞いた。

 マリアンジェラはニヤッと笑って言った。

「あぁ、うん。ママね、すねてんの。自分だけ赤ちゃんライルを抱っこできなかったって。」

 そう言えば、マリアンジェラとアンジェラとリリアナには抱っこされた気がする。

「でもすねてるだけじゃ目の下にクマはできないだろ?」

「頭にきて眠れなかったの!みんな私だけのけものにして、ひどい。」

 リリィが突然大きい声で怒りだした。

 追加で焼いたクロワッサンをオーブンから取り出していたアンジェラがテーブルに近づいてきて言った。

「リリィ、大人げないぞ。やめなさい。」

「ママ、ママだけじゃないよ。僕なんか赤ちゃんライルを見せてもらってもないよ。」

 ミケーレが言った。僕は仕方なく口を挟んだ。

「もしかしたら、また警察に行く必要があるかもしれないから次の機会には必ず二人に声をかけるよ。」

 ミケーレとリリィは少し機嫌をなおしたようで、『絶対ね』と何回も言っていた。


 アンジェラが席に着いたのを見計らって、JC瑠璃リリィからの手紙を渡した。

「あの脅迫状も同じやつらが書いたものだったのか…。」

「そうみたいだね。」

 誘拐事件の話題はここまでとなった。そういえばリリアナ達が起きて来ない。

「リリアナ達はまだ寝てるの?」

「いや、四人で500年前に行ってるんだ。」

「そうなんだ…。」

「パパ、ジュリアーノとライアンがせんれーってのを教会でやるって言ってたよね?」

 ミケーレが補足した。

「そうなんだ。すっかり忘れてたとか言って、昨日の朝慌ててたんだよ。」

「双子連れての帰省は大変だね。」

「そうだな。」

 どうやら彼らは今回、年明けまで数日あちらで過ごすらしい。

 一応伝言を聞いていると言ってアンジェラが教えてくれた。

 毎回、毒とかいろいろと問題が起きる事があるため、1月3日の早朝に帰って来なかったら、迎えに来て欲しいというのだ。

 リリィが妊娠中のため、僕に頼みたいと言う。

 もちろん、承諾した。


 ミケーレが『僕達もどっか行きたい』と言いだし、年末はミケーレの城、聖ミケーレ城に二泊することにした。

 日本で言うところの年越し温泉旅行みたいなものだ。

 アンジェラは親戚中に行きたいヤツは連絡したら迎えに行くとメッセージを送っていた。確かに、人数多い方が楽しいからね。

 出発は12月30日の朝と決定した。

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