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48. 現実

 十一月一日月曜日。

 予想通り、僕の家の前では報道陣の山が出来ていた。

 父様が事前にアンジェラと徠人に僕の登校についていかないことを承諾させていた。

 報道陣は元の姿に戻った僕やアズラィールには特に気にする様子もなく、ガヤガヤと騒がしいだけだ。


 校門前でアズラィールと別れた。

 教室に入ると予想通り、橘ほのかが突進してきた。

「朝霧くん、ちょっと、どうなってるのよ!アンジェラ様とあんたの叔父さんで同じ女を取り合ってるわけ?そして、あの女っていったい誰?」

「し、し、知らないよ。そんなの。」

 やばい、顔が真っ赤になる~。キスしたこと思い出しちゃうじゃないか。

 だめ、だめ、興奮しちゃ!抑えろ、抑えろ…。

 自分に言い聞かせる。背中がムズムズしてきた。ヤバい。

 と、とりあえずトイレに隠れよう。授業が始まる直前だったが、トイレに駆け込んだ。個室に入ったと同時に翼が出てしまった。

 父様にスマホで連絡をするが、出ない。

「もぉ、父様。空気読めないだけじゃなくて、タイミングも悪いんだから。」

 アズラィールに電話を掛けると、家の前で報道陣同士のもめ事が起きていて父様もアズラィールもそっちに対応中らしい。

 とりあえず、アズラィールに状況を説明する。落ち着いたら父様に頼んで車で迎えに来てくれると言うことだった。

 十分ほど経ってスマホにメッセージが入った。

 学校の裏手に車を停めてあるから出てこれるかというものだ。

 誰かに会っちゃったらどうしよう…。と思ったらドキドキがひどくなった。

 その時だった。トイレのドアをノックする音。

「俺だけど、大丈夫か?ジャケット持ってきたから、これ上からかけろ。」

 その声は徠人だった。

 あっ。トイレの壁の上からジャケットが飛んできた。

 ジャケットを羽織って、トイレのドアの鍵を開ける。ジャケットから徠人の匂いがする。徠人に手を引かれトイレから出る。

「おいで。」

 ドキ、ドキ、ドキ、心臓が跳ねる。いつの間にか、僕は、また女になってしまっていた。

 徠人がまたやさしく抱きしめてくれる。

 あ、やだ、ダメダメ。また唇にキスを…。あっ、翼が縮んだ。

「大丈夫か?」

「う、うん。」

「とりあえず、帰るぞ。」

「うん。」

 父様が車で待っていてくれた。家の前ではなく、動物病院の駐車場に車を停め、動物病院の中に入る。

「危なかった~。」

 父様は徠人の手が僕の腰に回っているのを引きはがしながら、僕を見て言った。

「しばらく学校は休んだ方がいいんじゃないか?」

 確かに、これじゃあ行けないな。

「うん。」


 その日の夜、父様は夕食の時に今日の僕の変身について皆に話し、父様からの提案をした。

「ライルの変身がこう頻繁だと、見られるリスクが高いので、しばらく学校は病欠することにしたよ。少なくとも一か月は入院の予定だと言っておいた。」

 父様は、僕の方をちらっと見てから続ける。

「それと、ライルがせっかく家にいるんだから、ライルに徠人とアズラィールの勉強を見てもらおうと思ってるんだけれど。反対意見は?」

 アンジェラが手を挙げる。

「それって大学入試に向けてってやつ?」

「そうだよ。」

「小学生に教えられるの?」

「アンジェラ、ライルは僕の記憶も持っているからね。どんな勉強をしたか、どんなやり方でやるかなどは問題なく出来ると思うよ。どうだい、ライル。」

「あ、うん。出来るとは思うけど、アズラィールと徠人が嫌なら…。」

 徠人が、父様に質問する。

「ライルは俺専用にしてくれないか。」

「却下。」

「アズラィールが触るかもしれないだろ。」

「それは、お前だろう、徠人。」

「父様、じゃあ二人一緒に勉強する時間と、それぞれに教える時間を設けるっていうのはどうですか?」

「まぁ、得意なものとかそうでないものもあるしね。それはいいと思うよ。」

 アンジェラが口を挟む。

「ずるい!。私だけ仲間外れじゃないか。」

「えー?」

「アンジェラ、一緒にやりたいならやってもいいんだよ。でも何になりたいんだい?」

「そうだなぁ…。じゃ、何目指すかはこれから決める。」

 結局、僕は三人に勉強を教えることになった。



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