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470. 思いがけないプレゼント

 僕はなんだかとても晴れやかな気分だった。きっと父様に言いたいことを言っちゃったせいかもしれない。普段委縮して父様には言いたいことが言えなかったのだが、今日、過去に戻り、彼の命を救ったことで僕の中では劇的な変化が起こっているような気がした。僕は、僕の足にしがみつきながらこちらを見上げるマリアンジェラの頭を撫でて微笑んだ。

 マリアンジェラも僕に微笑み返してくれた。

「ライル、今右側の方を見るとね、もれなく面白いものが見られるんだよ。」

 マリアンジェラが目線を言った方に向け、指を指した。

「え?右…。」

『ブフォッ』あまりの衝撃に変な空気が漏れた笑いをしてしまった。

 目線の先には、ローストターキーの巨大なもも肉をむんずと掴み、かぶりついているリリィの姿があった。

「まるで野獣だな。」

「あのね、ママはねぇ、気持ち悪いの治ったら、急になんでもおいちくなったんだって。さっきからすごいんだよ。しかもライルの事は全然心配してなかったし…。」

 僕がいることに気づき、ターキーのもも肉をかじりながら満面の笑みで手を振るリリィだった。


 久しぶりに皆で雑談したり、マリアンジェラがこっそり持参していたいつものゲーム『ツイス〇ー』で、おじちゃん達がマリアンジェラにたっぷり筋肉痛のプレゼントをもらっている頃、アンジェラが皆に宣言した。

「皆、聞いてくれ。知ってる者も多いと思うが、リリィが来年の春に出産予定だ。」

「アンジェラ、また色々と忙しくなりそうだな。」

 アズラィールがアンジェラの肩をポンポンと叩きながら声をかける。

「ところで、アンジェラ、お前の新しい曲聞いたぞ。リリースされた時は、毎日毎日うちの前で報道陣が大騒ぎだったんだ。」

 未徠がそう言うと、アズラィールが続けた。

「そうだよ。おかげで車を出すときに邪魔で仕方がなかったんだよ。」

「父上、まぁ、そう言わないでくれ。自宅の場所を公開していないから、親戚だということで場所が割れているここに来てしまうんだろう。」

 アンジェラがそう言った時に、左徠が話に食い込んできた。

「ねぇ、アンジェラ様…あのLUNAって誰なんですか?教えてください。

 僕、気になって気になって…。もうあの動画見ただけでドキドキしちゃいました。」

 ミーハーの左徠がそう言うと、徠輝も同じように知りたいと言い始めた。

「あれは、ライルだ。」

 何の躊躇もなくアンジェラが言った。

「「え?まじ?」」

「まじだ。」

「バラすなよ。夢が消えたよな?」

 僕は少しふざけて言った。アンジェラはそれに被せるように言う。

「あくまでも実在しない人物で仕上げたかったんだ。実際はリリィの上位覚醒した姿なんだが、今妊娠中だからな。ライルが代わりに撮影に協力してくれたのだ。

 なかなか魅力的な動画になっただろ?ミケーレも手伝ってくれたのだぞ。」

「ほぉ、ミケーレも?」

 未徠が感心してミケーレの方を見ると、嬉しそうに少し照れながらミケーレも言った。

「うん、僕カメラで撮ったり、パパの子供の時の役でも出たんだよ。へへ」

「そうだよ。それで、変なところに飛んじゃって大変だったんだ。」

 僕が苦笑いで言うと、留美と亜希子が反応した。

「「あ、あの時の女の子」」

「そうそう、女の子から戻れなくなっちゃうしさ。」

「あの子、すごく可愛かったわ。」

 そう亜希子が言うと、ミケーレがアンジェラのスマホで動画を未徠に見せてあげた。

「なっ…これがライルなのか?可愛いなぁ。」

 ゲッ…なんだか超恥ずかしい。

「まぁ、あくまでも天使の所在を突き止めようとする輩を翻弄するためのものだがな。実在しない存在なら、見つけられるはずがないのだから。」

「そう言う事か…」

 左徠と徠輝が納得してくれたようだ。


 じっとしていられなくなったジュリアーノがウロウロし始めた。

 ホールの植木のところまで行き、植木鉢の中に入っている木製チップを手で探っている。アンドレがジュリアーノを抱き上げようとした時…ジュリアーノが手に何かを持っていた。

「ん?ジュリアーノ、それはなんだ?」

 アンドレのいう事など全く聞かないジュリアーノは、手を握ったまま開かない。

 そのままアンドレに抱かれたのだが、急にぐずりだした。

「ママ…、ママ…。」

 全く困ったものだ…。その時、手から何か落ちた。そして、たまたまその下にいたミケーレの額にコツンと当たった。

 周りにいた大人はそれを見ていたが、木製チップではないその物は、ミケーレの額にコツンと当たり音立てて当たった後、忽然と消えたのだ。


 額をさすって、キョトンとしていたミケーレだったが、急に未徠と亜希子のところに走って行った。

「おじいちゃま、おばあちゃま、ちょっと違うお部屋でお話ししてもいい?」

 未徠と亜希子はミケーレを連れてサロンへ行った。

「どうしたの?ミケーレ…。」

 そう言ってミケーレの頭を撫でた亜希子の手の下で、ミケーレの体を青い光の粒子が覆った。

 ミケーレはむくむくと体が大きくなり、180cmほどの長身でかなり痩せた男になった。着ているものも体に合わせて大きくなった。

『父さん、母さん。会いたかった。俺だよ、徠人だ。』

「えっ、徠人?でも5歳で亡くなったはずじゃ…。」

 亜希子が動転して言うと、彼は続けた。

『そうだな、2回目では5歳で終わった。だが、さっき俺が吸収した涙の石は一回目の時に落ちたものだ。俺は30歳まで生きた。母さんは最後に一度だけ顔を見ただけだったな。もっとちゃんと話したかった。』

「徠人、あぁ間違いない。そうだ、私には過去が変わる前の記憶も多少だが残っている。お前が池に飛び込んで意識不明になった後、やっと戻ってきたと思ったら、皆が見守る中、息絶え家で消えてしまったんだ。」

 未徠がそう言って『徠人』の手を取った。

『父さん、すまない。俺、どうしてもあいつの側にいたかったんだ。だから自ら回収されて、生きなおす選択をした。』

「あいつってライルのことか?」

『それが、よくわからないんだ。今はミケーレとして幸せに生きている。俺の徠人としての意識はどんどん薄れ、思い出せることも少なくなってきている。あの二人の息子として、俺は今のこのミケーレとしての人生が気に入っている。』

「徠人…。」

『俺、父さんと母さんの子供として生まれたこと、幸せだったよ。

 ただ、悲しまないでくれ。徠人は死んだのではなく、別の人間としてやり直すために肉体を消滅させたんだ。それを伝えたかった。』

『徠人』は未徠と亜希子にハグをした。

『そろそろ涙の石の力が切れる。もう、この姿で話す事は叶わないと思うが、いつも二人のこと、愛しているよ。じゃ、行くね。』

『徠人』だった姿は青い光の粒子に包まれ小さくなり、元のミケーレの姿になった。

 ミケーレは何事もなかったように、ゆっくり瞬きをして二人を見上げると言った。

「おじいちゃま、おばあちゃま。あっちに戻ろ。」

「あぁ、そうだな、ミケーレ。」

 涙ぐんでいる二人の手を引きホールに戻った後、そっとアンジェラとリリィの間に割り込み、二人と手を繋いだのだった。

 繋いだ手から記憶を読んでしまったリリィは、しゃがみこんでミケーレに言った。

「おじいちゃま達、喜んでた?」

「うん。」

「そっか…でも、ミケーレ、まだあの石がそこら辺に落っこちてるって、怖いね。

 あの石は過去の変化に左右されないのかな?」

 自分の理解を超えた現象に戸惑うリリィだった。


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