表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/678

45. 悲しみの先に

 悲しみで胸がつぶれそうだ。

 ん?頭の後ろを大きな手でなでられ、耳元でささやきが聞こえた。

「おまえ、起きたばっかで居眠りってどういうこと?

 アンジェラのライブ始まってんぞ。」

 え?ダイニングのテレビがついてる、徠人はまだ若い。

 テレビで次は最後の曲だと紹介された。

「わーーーーーーーーっ。」

 多分、僕の人生でこれだけ早く走ったことはないと思う。

 間違えちゃだめだ!自分に言い聞かせる。

 僕はアンジェラの部屋に行き、ゴミ箱をひっくり返して漁り、髪の毛をつかんだ。

 僕の体は光の砂になって消える。


 それと同時に、僕はアンジェラのイベントステージに金色の光になって忽然と転移した。

 歌い始める直前のアンジェラの髪の毛を掴んだ状態で登場してしまった。

 ごめん。いや、よし、思った通りだ。

「アンジェラ、翼出せ。今すぐ。」

 僕も翼を出し、浮上を始める。戸惑ったアンジェラも翼を出し、浮上を始めたとき、ボートに乗った暴漢が、刃物を持ってステージに上がって来た。

「アンジェラ。もっと、上へ。」

 狂ったように刃物を振り回した男は、アンジェラに手が届かないことを知ると自分の首に刃物を刺し倒れた。

 アンジェラと僕は近くのセキュリティスタッフが乗るボートに降り安全を確保した。

「ライル。」

「間に合ってよかった。帰ってきたら詳しく話すけどさ。

 愛してるよ。アンジェラ。」

 僕はアンジェラの髪から手を離した。

 僕の姿は金色の光に包まれて、その場から消えた。


 テレビに僕が出てきて家族は大騒ぎだったようだ。

 僕がテレビの画面から消えた後、慌てて探したら翼を出したままアンジェラの部屋の床に倒れていたみたい。

 襲ってきた襲撃者は、刃に塗ってあったと思われる神経毒で死に、その後熱狂的なアンジェラのファンが無理心中を図ろうとしたと言うことがわかったそうだ。

 イベント中の僕の出現やアンジェラの翼のことは、ものすごく話題にはなっているけれど、イベントの演出だと言い張ってごまかしているそうだ。


 その四日後、全てのツアーのステージを終え、ようやくアンジェラが家に戻って来た。

 ツアーは大成功だったらしい。

 あのハプニングが生中継されてしまったことで困っていないかとも思ったのだが、逆にリアル天使で売ってたアンジェラに本物の天使が現れて助けたと話題になってDVDとかの売れ行きが数倍になっているらしい。

 結果オーライ、といきたいところだが、徠人の機嫌は超悪い。

 僕も危なく死ぬところだったのだ。

 かといって、アンジェラを見捨てられないよね。

 とにかく、無事でよかった。

 一通り説明した後「抜け毛が多くてよかった」って言ったらアンジェラの機嫌がすごく悪くなった。どうも地雷を踏んでしまったようだ。

「落ちてたのが頭の毛でよかったよ。」

 と言ってみんなを爆笑させたのはアズラィールだった。

 うわっ、想像したくない…。


 そういえば。ライブの放送があった翌日、橘ほのかがまた近づいてきてしつこく話しかけてきた。

「昨日のアンジェラ様のライブは最高だったわ。あの最後の天使の出てくるシーンってすごかったわよね。LIVE中継であれが出来るってすごいわ。

 あんた、早くサインもらってきてよね。」

「いやだよ。プライベートには干渉されたくないだろ。」

 本当にしつこい奴だ。


 十月二十九日金曜日。

 アンジェラが帰って来た翌日、学校が終わってから、僕と徠人とアンジェラで北山先生のお見舞いに行った。

 アンジェラの「ゲイ愛人疑惑の報道」の時に病院から家に電話で知らせてくれていたのに、なかなかお礼を言えなかったからだ。

 病院でもアンジェラや徠人はみんなの注目を集めてすごいことになっている。

 北山先生は傷は少しずつ回復しているけれど、痛みがひどいらしくリハビリしながらもう少し入院することにしたらしい。

 北山先生は僕と一緒に行ったアンジェラと徠人を見て、本気で驚いていた。

 病室でも徠人はベタベタ僕に触ってくるので、それが疑惑の原因だとわかったようだ。

 その日、先生はトライアスロンの中でも水泳が得意だとわかった。

 もしかしたら、海の中から浮上するとき体が緑に光ったのは北山先生の能力なのかも…。

「先生、痛いのが早く良くなるように。僕もお祈りしたいから、傷のところをパジャマの上から触ってもいい?」

「じゃあ、セクハラにならない程度になら、いいわよ。」

「え?」

 傷はそんなに下じゃなかったはずだけどな…。

 まぁ、いいや。無事に競技が出来るようになるように、完全に癒すだけだ。

 アンジェラと徠人が自分たちは似ていないとくだらない言い合いを始めた事に北山先生が気を取られてる隙に癒しは完了した。

「じゃあ、早く良くなってください。学校で待ってますね。」

 そう言って病院を後にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ