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449. ライナとミケーレ(2)

 ちょうどその時、地下書庫からエレベーターを使ってかえでさんがホールに出てきた。

 かえでさんがミケーレの姿を見て驚いている。

「徠人様ですか?」

「僕、ミケーレだよ。」

 かえでは何が何だかわからないと言う様子だ。未徠がかえでに声をかけた。

「かえで、それは何だい?」

 かえでは大きなゴミ袋を持っていた。

「地下書庫の整理をするように言われていたんです。いくつか不要そうなものと紙屑などを持ってきました。あ、あと…これなんですが…捨ててもよろしいですか?」

 かえでがゴミ袋からビビッドなカラーともいえるピンク色の絵本を取り出した。

「何だいそれは?」

「外側は絵本なんですが、中には何も書かれていない白紙なんですよ。」

「あーっ、それ捨てちゃダメ!パパが集めてる大切な絵本なの。」

「そうなのか?」

「おじいちゃま、この絵本、もらっていい?」

「あぁ、かまわないよ。」

 未徠に了承され、絵本を手に取るミケーレはすごくうれしそうだ。

 しっかり絵本を脇に抱え、置いて行かれないように僕の手を握るミケーレ。

 僕とミケーレは二人で過去のライルの手を取った。

「頼むよ。」

「2027年の12月10日だっけ?」

「そう。」

「そこに行けたとして、どうやって戻るの?」

「自分の生きている時間軸に戻るって念じればいいよ。」

 なんだか不安そうな顔をしている。

「大丈夫だよ。ライルはすごいんだ。そして、僕のママ、リリィもすごいんだよ。たくさんの人を助けて、そして前よりももっとすごくなってるんだ。」

「ママ?リリィがママ?」

「そうだよ、忘れちゃったの?」

「僕はライナじゃないから、全部は知らない。ミケーレはリリィと青く光る羽の天使の子供なの?」

「うん。パパはアンジェラ、背が高くて、翼がすごく大きくて、羽が青く光るんだよ。」

 過去のライルは自分の中に入っているリリィ(ライナ)がどうやって結婚して母になるのか、考えてみたけど疑問が残るだけだった。

『体がない人格だけのリリィがそんなことできるはずないのに…。』


 少し悩んだが、やってみるしかない。そう思ったようで、僕とミケーレの手を取って小さい声で言った。

「じゃ、やってみるよ。失敗したらごめん。」

 過去のライルは言われた通りに行く先の日付を意識して、『行け』と心の中で思った。サロンの中にいるのは一緒だが、さっきまで目の前にいた未徠とかえでが消え、代わりに留美が赤ちゃんを抱っこして哺乳瓶でミルクを飲ませていた。

 横には未徠の妻、亜希子もいた。

「あ、あら?ミケーレじゃないの?どうしたの?」

「おばあちゃま~。」

 ミケーレが亜希子に甘えて抱っこしてもらっている。

 どうやら成功したようだ。

 過去のライルは固まっていた。死んだはずの祖母がいるのと、学校で先生をしている北山先生が赤ちゃんを連れて家にいたからだ。

「北山先生?」

「ライル君…?なんだか小さいわね。どうしたの?」

 僕はその場で朝霧邸での自室に転移し、ワンピースを脱いで変化できるか試した。

 金色の光の粒子に包まれて、僕は元の姿に戻ることが出来た。

 クローゼットに置きっぱなしになっていたパーカーとジーンズをはいてサロンに戻った。

「あ、ライル、元にもどったー。」

 ミケーレが嬉しそうに僕に抱きついてきた。

「あ、お兄ちゃん。」

 過去の僕が僕の事を思い出した様だ。

「ありがとう。助かったよ。帰れるかな?」

「やってみる。」

「ダメなら、もう一回ここに来て。」

「うん。」

 少しの間、過去のライルが戻って来るかもしれないと思い、そこで待ったが戻って来なかった。きっと帰れたのだろう。

 僕は、ミケーレを連れて家に帰ろうとしたのだが、留美に話しかけられた。

「さっきの小さい女の子って誰なの?」

「あ、あれは僕が化けてたんだよ。アンジェラのミュージックビデオの撮影のためにね。」

 片手にワンピースを持ち、片手にミケーレを抱っこして家に戻った。


 家に着いたらマリアンジェラが僕のベッドで泣き疲れてぐったりしていた。

 ミケーレを連れアンジェラを探し、書斎で頭を抱えているアンジェラを見つけた。

「パパー。絵本見つけたよ。」

「ミケーレ、どこに行っていたんだ?心配したんだぞ。」

「パパとママが結婚するもっと前だったよ。」

 僕はもう学校に行かなければいけない時間だったので、アンジェラに記憶の譲渡をして、言葉をかけずに家を出た。

 学校の寮に転移し、慌てて校舎に走って行ったら、ウィリアムが話しかけてきた。

「ライル?ライルだよな?」

「あ、おはよう、ウィリアム。」

「髪の色どうしたんだ?それにリップグロスなんかつけて…。髪飾りもついているぞ。」

「あ、しまった。」

 僕は慌ててパーカーのフードを被った。

「ちょっと撮影しててさ、そのカツラとか、色々と…。」

「そっか、またCMとかに出るのか?期待してるよ。じゃ、またな。」

 ウィリアムは別の教室での授業だ。

 僕は一度寮の部屋に帰り、髪飾りを外し唇を拭いて、髪の色を戻した。

 こう言うのは変化を解除しても取れないのか…。あぶなく、コスプレ変態野郎になるところだった。

 アンジェラからスマホにメッセージがきていた。

『映像は十分に撮れた。編集したら見せるからな。ありがとう。』というものだった。

 絵本を手に入れるために起きたハプニングなのか、ミケーレのライナに会いたいという望みを叶えるためのハプニングなのかわからないが、能力が完全に使えないとかなり恐怖だという事がわかった。

 こういうハプニングは避けたいところだ。


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