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438. レッツゴートゥーザズー(2)

 ワイワイ、ガヤガヤと大人数でエレベーターで一階のロビーまで下りた。

 そこで支配人が待っており、僕達を誘導して正面玄関の前に停まっているやたらと長いリムジンに誘導してくれた。

「アンジェラ様、いってらっしゃいませ。」

 うやうやしくホテルの従業員が並んで礼をする。リリアナがポツリと言った。

「城の召使いより丁寧だわ。」

「リリアナ、ユートレアはフレンドリーなんだよ…。」

 アンドレが少し反論を口にしたが、リリアナは聞いちゃいない。

 リムジンが出発する前に助手席にいたガイドと思われる男がアンジェラに質問をしてきた。

「アンジェラ様、本日はサンディエゴ・ズーまたはサファリ・パークとお聞きしておりますが、どちらに行かれますか?」

「そうだな、子供たちが喜びそうな方で頼む。」

 意外な子ども思いの発言に一瞬固まっているようだ。

「では、サファリパークをおすすめいたします。」

 ガイドはそう言って運転手に指示したのである。到着すると、ガイドはすぐにチケット売り場に走り、すぐに戻ってきた。

 チケットをリリィに手渡すと、また深々とお辞儀をし、「いってらっしゃいませ」と言った。リリアナはまた呟いた。

「城の教育係とかに連れて行きたいわね…」

「リリアナ、やめろよ、立派な拉致だぞ、それは…。」

 僕が思わず言うと、『チッ』という舌打ちが聞こえた。


 そんな感じで若干寒い雰囲気のままサファリ・パークに入場した。

 ガイド付きのカートに乗って場内を回るツアー付きのようで、最初に何時のツアーにするかを決めて予約しておかないといけないらしい。

 リリィが予約をしてきたので、それに間に合うように乗り場に戻る必要がありそうだ。時間まで、近いところの歩いて回れる展示を急ぎ足で見て回った。

 場内MAPを見ながら『XXのトレイル(こみち)』と書かれた道をひたすら進む。

 しかし、檻に入った動物などは見当たらず、自然の中で出ないようにしてあるのか動物がいるにはいるのだろうが、簡単に見つけられない。


「パパ、あんまり動物いないね。」

「そうだな。もっと、こう、ごちゃごちゃといるのかと思ったな。」

 スケッチブック持参で絵を描く気満々だったミケーレはなんだかがっかりしてそうだ。マリアンジェラは、とりあえず歩いて見て回っているので、置いて行かれないように僕の手を握って、手を繋いで進んでいる。

 しかし、顔が…非常に険しい。

「どうした、マリー。お腹でも痛いのか?」

 アンジェラに声をかけられ、『ふぅ』とため息をついたマリアンジェラが言った。

「パパ、ここ本当に動物園なの?どこに行っても木ばっかりで動物いないよ。」

「そ、そうだな…。きっとカートに乗ったら、もっといっぱい動物がいるところに行けるんだと思うぞ。」

「そお?」

 そんな会話のあと、渋々先に進む僕達だった。リリアナとアンドレはカート乗り場の側でソフトクリームを食べながら待ってると言い張り、ついても来なかった。

 結局、2カ所ほど行ってみたが、動物の気配もなく、カート乗り場に戻ってきた。

 ちょうどカートに乗り込む時間だ。

 ベビーカーを置いてリリアナとアンドレが双子を一人ずつ抱っこし、他は適当に座る。ミケーレはアンジェラとリリィに挟まれてご機嫌だ。

 僕はマリアンジェラと座った。

 カートが出発し、ガイドの中年男性が、話し始めた。

『自然の地形を利用して…』まぁ、お決まりの説明なんだろうな…。

『ここの左手にキリンのエリアがあります。出産したばかりであまり顔を出しません』

「…。あ、見えた。キリン…。」

 僕が指を指すと皆一斉にそっちを向いた。

「ちっちゃ…。」

 マリアンジェラの一言が、その場を凍らせた。

 そりゃ、わからんでもないよ。野性に近い感じにしてるんだよね、そうだよね…。だからすごく車の通る道から距離を取ってるんだよね…。

 だから、肉眼ではようやくキリンが動いてるのがわかる程度の大きさにしか見えない…。

 ガイドが『ここは、サイの…』と動物の名前を出す度に一応探してみる。

 いた。石ころくらいの大きさに見える多分サイであろうグレーの点々。

 45分もの間、それの繰り返しだ。

 マリアンジェラの機嫌はどん底で、アンジェラが少し焦っている。


 カートから降りる頃には、アンジェラは迎えのリムジンの手配をしていた。

「ちょっと思っていたのと違うな…。すまん、マリー。」

 アンジェラが先に謝ったため、マリアンジェラもそれ以上は何も言わなかったが、残念な感じだった。


 僕達は3時間ほどでホテルに戻った。

 ホテルでもあまりにもすることがないので、マリアンジェラが遊び道具を出してきた。いつものツイス〇ーだ。

「アンドレ、ね、やろう。」

「おっ、久しぶりだ。今日こそ負けませんよ。」

 マリアンジェラ対アンドレの対決を皆で見守る。

 マリアンジェラは途中、手が届かなくなると大きく変化へんげした。

「マリー、本気ですね。絶対に負けませんよ。」

 アンドレ、何気に本気みたいだ。

 しかし、アンドレはどうも体が硬いらしく、時間が経過してくると、自分の筋肉のプルプルするのに負けてしまうようで、べちょっと自滅するパターンだ。

 三回ともアンドレが負けて、マリアンジェラが勝利の雄叫びを上げ、次の対戦相手にアンジェラを指名した。

「パパしゃん、かかってきなしゃい。ふんす」

 興奮のため、鼻息を荒くしてそう言った娘を拒絶できず、素直に参戦するアンジェラ…。130歳オーバーのアンジェラは無事生きてゲームを終えられるのか?

 意外にも善戦し、二対一でマリアンジェラの勝利となった。

 途中、不幸にもブリッジ状態となったアンジェラの上に双子がよじ登るというハプニングがあったが、それはそれ、楽しい家族団らんのひと時となった。


 少し早めの夕食を部屋に運んでもらい、豪華な食事をいただいた。

 マリアンジェラが気を遣ってくれ、最初に融合して僕が食事をとった後で分離した。そこからは、言わずと知れた爆食いを見せてもらった。

「アメリカのステーキ、結構おいひいよね。」

 かなり巨大な肉をローストビーフにしたものを、大胆な厚さに切ってもきゅもきゅと食べながらマリアンジェラが言った。

「マリー、それ、多分ローストビーフだよ。これ、このソースかけて食べるやつ。」

「そうなの?」

 たくさんの人数で食べる用のローストビーフ丸ごとも、マリアンジェラにかかっては一瞬だった。ソースをかけたら、更に食べるスピードが上がる。

「パパ、これ、お肉おかわりしていい?」

「わかった、電話しておく。」

 家でも、よく肉は大きいまま焼いてるけど、調理する人が違うとまた違うんだろうしね。ゲームで運動になったようで、いつもよりさらに食べるマリアンジェラであった。


 その日は旅行先での恒例、アンドレとリリアナのベッドルームは映画三昧で。

 リリィとアンジェラは二人で静かに眠り。

 僕が割り当てられたベッドルームはマリアンジェラとミケーレも一緒にベッドに入った。

 僕はそっと二人の首筋に手のひらを当て、昔テレビ番組で見た上野動物園の様子を思い出しながら、家族で上野動物園に行く夢を見させた。

 夢の中で、ミケーレはアンジェラに肩車をされ、マリアンジェラは僕の肩車で、ぞうにリンゴをあげたり、カバにキャベツをあげたり、モルモットやウサギを触ったり、普通の動物園を堪能したのだった。

 夢の中でアンジェラが言った。

『次は北海道のあさひやま動物園だな。』

 子供たちは大喜びで、パパに抱きついていた。

 アンジェラにも同じ夢見せてあげれたらよかったけど…。

 そんなこんなで夜は更けていくのだった。


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