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437. レッツゴートゥーザズー(1)

 リリアナ達にサンディエゴに行くことを伝えたが、反応は微妙だった。

「どうしたの、リリアナ…気が進まない?」

「ライル、考えてみてよ。この子達すぐに翼を出してその辺飛び回っちゃうのよ。だから今まで一度の家の敷地の外に連れて行ってないのよ。」

 正論である。

「あ、じゃあさ赤い目で命令しておけばいいんじゃないの?『お前たちは翼を出すことが出来ない。』とかさ。」

「あ…なるほど…。そっか。思いつかなかった。ちょっと、早く言ってよ、もう。」

『バシッ』と僕の肩を叩くリリアナの力の強いこと…恐ろしい。

 リリアナは早速赤い目を使い双子に『お前たちは今から翼は出せない、飛べない。』と命令していた。でも、リードはつけて行くようだ。もう、すっかり歩き回れるようになったので、どこに行っちゃうかわからないからね。

 双子用の横に並んだベビーカーに二人を乗せて、大量のオムツとおやつと着替えと…。すごいな…ミケーレとマリアンジェラの時もこんなんだったかな?

 アンドレは自分とリリアナの着替えを用意して、終始ニコニコしている。

「うーう。」

「あーあ。」

 双子がまた何かを訴えている。

「さっき食べたばかりじゃない。」

 リリアナが切れ気味に言いながら、赤ちゃん用のおやつを出して双子の口に突っ込む。

「え?肉まん?」

「大丈夫よ、ほとんど冷めてるから。」

「いや、そこじゃないところに突っ込みたかった。」

「あぁん?」

 こっわ。目が据わっている。僕、アンドレのこと、尊敬してます。

 逃げるようにその場を離れ、マリアンジェラとミケーレにも伝える。

「うしょ…。動物園デート…できるの?」

 マリアンジェラは自分のお絵描きから発展した外出に、目を潤ませて、ちょっとドキドキしているようだ。

「僕、スケッチブック持って行く。」

 ミケーレはスケッチブックと色鉛筆をリュックに入れて準備を始めた。

 そこにリリィが来て子供たちの服を用意し始めた。

「これがいいよね。」

 そう言って取り出したのは、以前、夏休みにフロリダに行った時に用意した探検隊のような短パンとシャツと帽子の組み合わせだ。

 ミケーレとマリアンジェラがお揃いで着ると超絶かわいい。

「あ、それ、いいよね。かわいいし、似合ってる。」

 だが、マリアンジェラは気に入らない様子だ。

「えー、ママぁ、デートはもっとフリフリの着た方がかわいいよねぇ。」

「マリー、デートじゃないよ。家族で動物園に行くだけだもん。」

 あ…あぁ…言っちゃった。マリアンジェラの目が、みるみる白目がちになっている。でもどうやらマリアンジェラはリリィの発言のガン無視を決め込んだようで、それ以外の服を自分で選んでスーツケースに入れ始めた。他にもおもちゃと絵本も入れている。その辺はまだお子ちゃまだ。僕はそんな三人をその場に残し、自室に着替えなどを用意しに戻った。

「動物園か…。行ったことあったかな?」

 僕はジーンズと黒いパーカーなど、地味な服と下着、パジャマを中心にスーツケースに入れ、一応タブレットと充電器を放り込んだ。


 集合場所はアトリエだ。

 僕が行くと、リリアナとアンドレはすでに準備が出来ていた。まだ30分も経っていない。その後、廊下でバタバタと走る音がしたかと思ったら、リリィ達が来た。

 結構な荷物だ。そして、最後にアンジェラが来た。

「みんな、ずいぶん用意できるのが早いな。」

「パパ、そりゃそうよ、動物園デート、楽しみすぎる~。」

 満面の笑みでそう言ったマリアンジェラにアンジェラは突っ込ますに一言。

「そうか、マリーが喜んでくれてうれしいよ。」

「ライル、ここなんだが、屋上のヘリポートに皆まとめて転移できるか?」

 アンジェラがネットの地図アプリで示した場所を確認する。

「ちょっと待って、先に一人で確認してくる。」

 僕は一人だけ先に転移した。広さから、下りる場所を少し調整した方が良さそうだ。ヘリが一台停まっていたからだ。

 一瞬でまた家に戻り、準備がいいか聞く。

「じゃ、行くよ。ヘリが停まってるから、着いた時に動かないように気をつけて。」

 皆が返事をしたと同時に物質転移で家族と荷物が送られたのだった。


 サンディエゴは午前8時前、まだ空気は涼しくさわやかで寒いくらいだ。

 海が見えるビーチサイドの高級ホテルのヘリポートに着いた僕たちは、アンジェラが先にマスターキーでヘリポートの鍵を開錠すると、そこから1つだけ螺旋階段を使ってフロアを下りた。客室としては最上階のペントハウスだ。

 普段は一般の客も利用可能なようだが、今日はアンジェラがマリアンジェラの動物園デートを実現するために、ペントハウスの空きをチェックしたようだ。

 部屋は寝室が4つもあり、それぞれが豪華な造りとなっている。

 アンジェラが内線でフロントに電話をかけた。

 すぐにそこのホテルの支配人がやってきた。

「あれ?フロリダのホテルの支配人さん?」

 僕は思わず見慣れた顔に話しかけてしまった。

「あ、いえいえ、わたくしは、フロリダで支配人をしている者の双子の弟でございます。」

「え?そうなの?」

 アンジェラが支配人に何か指示を出している。

 どうやら時差があるから、こっちでは朝食の時間らしい。

 そう言えば、家ではもうちょっとで夕食の時間だったか…。

 アンジェラの指示で、朝食のメニューの他に夕食のメインとも思えるほどの肉や料理が追加され、ルームサービスで食べることになった。メキシコが近いからか少しエスニックなメニューも見受けられる。アンジェラが運ばれてきた食事を前に皆に言った。

「このあと、午前10時、約二時間後にここから車で動物園に行くことになっている。それまでに食事を済ませておくように。いいな。」

「「「はーい」」」

 マリアンジェラ、ミケーレ、リリィの三人が同じように返事をしている。子供か。

 やっぱり、大人数でワイワイ食べるのがいいね。

 リリアナとアンドレはフライドチキンにかぶりついてる双子から鳥の骨を回収するのに必死だ。

 食後、少し休憩をしていたら、すぐに出発の時間となった。

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