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436. 反響と週末の約束

 ミケーレが集めた卵や、温室で採れた野菜を持ち、ミケーレとマリアンジェラを抱っこして転移した。おっとっと…重さのバランスが難しいぞ。

 ミケーレはカゴを自分でキッチンに運んで、冷蔵庫に卵をしまっている。

 マリアンジェラは僕の首にぶら下がったままだ。

「マリー、もう着いたよ。」

「えー」

 そう言って、渋々下りた。僕はアンジェラの書斎に急いだ。

 そこには書斎の立派な大きい机の前の社長椅子に座るアンジェラと、その膝にちょこんと座ってアンジェラとチューしてるリリィがいた。

「ちょっと、サーバーが落ちた大変だって言うから来たのに、チューしてるとこ見せたかっただけ?」

 アンジェラは少し赤面し、リリィの顔を少し離して言い訳をした。

「いや、その…リリィがコーヒーを入れて持って来てくれたものだから、お礼のつもりで…。」

 リリィは恥ずかしそうでも何でもなく、まだ膝の上にちょこんとのっている。

「そ、それで何がどうしたって?」

 僕は若干ぷんぷんしながらアンジェラに聞いた。

 アンジェラは会社のヨーロッパ拠点であるローマの事務所からの報告をメールで受け取り、それを開いていた。

 それによると、朝の情報番組で『素晴らしい経営戦略』という題名でCMがいくつか取り上げられていたのだが、そこに本来出る予定ではなかった『リアルエンジェル・プロジェクト』の動画を、番組に出ていたコメンテイターが、『おすすめ動画ありますよ』と言って見るように促し、生番組の途中で、急遽再生されたらしい。

 その番組では、その動画を芸術性が頂点レベルで高いと評価し、その上で、何を売ろうとしているのか明確にしていない、そこのところが逆に興味を持たせてもっと見たい、もっと何かやって欲しいという欲求を視聴者に持たせていると分析していたそうだ。その番組で取り上げられた直後から、会社のサーバーがダウンするまで、約10分。アクセスが集中し、視聴したユーザーが書き込めるコメントのスレッドもパンクしたらしい。

 その結果、ローマの事務所、東京の事務所に電話やメールの問い合わせが殺到し、本格的な企業系のCMやドラマ等の出演依頼が300件以上、女優の名前を知りたいという問い合わせは数千件に及んでいるらしい。


「それで、どうするわけ?」

「どうもしないさ。」

「あの姿では仕事は受けないってこと?」

「あぁ。うちの動画は時々アップしていこうと思っている。あとだな、昨日ライルに言われた私の歌、フルで歌って、そのプロモーションビデオを作ろうかと思っているんだ。」

「まぁ、それはいいんじゃないの。」

「オンデマンドで配信すればいいと思うのだ。」

「そうだね。」

「また撮影に付き合ってくれるか?」

「他に人を入れないでやるならいいよ。いくら変化へんげしてるって言っても、女装だからさ…。」

 僕とアンジェラが見ている間に、サーバーダウンが直ったらしくメッセージが来たようだ。リリィがアンジェラの膝の上でタブレットを操作して、動画を見始めた。

「あー、私じゃん。ん?なんだか私よりきれい…。」

 アンジェラが、リリィの髪を指ですきながら、サラッと言った。

「君よりきれいな人なんかこの世にいないよ、リリィ…。」

 リリィが頬を赤くしてアンジェラにしがみついている。とんだバカップルである。

「じゃ、僕もうここにいなくていい?」

「あぁ、すまんなライル。」

 僕はひらひらと手を振ってその場を後にした。


 午後になり、サンルームでピアノを弾きながら紅茶を飲んでいた時、アンジェラがやってきた。

「ライル、一つ提案なんだが…。」

「何?提案って、僕にとってプラスだったらいいけど…。」

「出来高により報酬は支払う。」

「ふーん。まぁ、大学進学もあるしさ、出してもらうばっかりじゃ申し訳ないから、仕事としてちゃんとやるよ。それで、提案って何?」

「プラチナブロンドのリリィの姿で芸能活動するときの芸名を決めた。」

「へぇ、ま、確かにリリィって言っちゃいそうだからね、決めておくのはいいと思うけど。で、なんていうのさ。」

「ルーナ(Luna)だ。」

「ふぅん。なんか意味ある名前なの?」

「月の女神の名前だ。」

「へぇ、いいね。なんだかセクシーな感じで。」

「曲ができるまで数日かかるから、来週末に撮影できるか?」

「うん、いいよ。僕は平日の午前中でもいいし。」

「そうか、助かるよ。」

 アンジェラは本当にあの動画のために作った曲を完成させて発表することにしたようだ。また売れるといいな。

 話が終わったかと思い、またピアノを弾き始めたらアンジェラが咳ばらいをした。

 何か言い忘れたことでもあったのだろうか…。

「なんだよ。」

「ライル、動物園はいつ行くんだ?」

「あ…そうだな。決めてなかった。」

「そうか…なら、これも提案なんだが、サンディエゴ・ズーに今から行くのはどうだ?サファリ・パークでもいいぞ。」

「ん?サンディエゴ?」

「あぁ、私のホテルがあるから、皆で今から一泊で行くと言うのはどうかと思って…。」

「え?いいの?」

「あぁ、もちろんだ。こういう時のためのホテル経営だ。」

「それ、言ってる意味わかんないし。」

「ははは、よくツアーであちこち行くことが多かったんだが、どこに行っても満足のいくホテルがなかったんだ。だから私の満足のいくサービスを提供するホテルを経営することにしたのだ。」

「うわ、マジか…。」

「マジだ。」

「じゃ、みんなに言ってくるよ。」

「あぁ、そうしてくれ。1時間後に出発しよう。私もホテルに車の手配と夕食の手配と部屋の確保を依頼しておくからな。」

 僕はリリアナ達、マリアンジェラ達に出発の準備をするように言い、マリアンジェラの希望である『動物園デート』を叶えるべく、自分も準備を始めた。

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