426. 進路相談
10月18日、月曜日。
学校の寮に転移し、校舎に行くと学校のガイダンスカウンセラーからメールが入っていた。朝の時間に面談したいという。
げげっ、もうその時間じゃないか…。
慌ててカウンセラーのオフィスを訪ねた。
ノックをして中に入ると中年の男性が一人いた。
「ライル・アサギリです。メッセージをもらっていて、今気づいたもので…。」
「はいはい、大丈夫ですよ。さっき送ったばっかりだからね。」
カウンセラーの男性は僕に椅子に座るように促した。
「実はね、申し訳ないんだけど、前学年で、途中で飛び級したんだよね?」
「はい。」
「そのせいでね、カウンセリングのリストから漏れちゃっていたんだよ。」
「え?」
「ごめんね。本来だったら、半年以上前に受けなくちゃいけないテストとかがあってね。今からだと12月のがぎりぎり間に合う感じでね。他の子達はもう願書出しちゃってる子もいるくらいの時期なのよ。」
「はぁ…。じゃ、テストの申し込みをしたいのでお願いします。」
「申し込みはね、オンラインで自分でやってね。はい、これがやり方の書いた紙ね。10月の初めに申し込んでたら再来週のテストを受けられたんだけどね。
それでね、どこら辺の大学を希望しているかお家の人と話し合って決めてリストを作って欲しいわけ。」
「あ、来週にテスト、あるんですね。申し込みされてればいいってことですか。はい、わかりました。」
「あとね、各大学にもすぐに願書をオンラインで送らないとダメだからね。すぐにやってね。」
「わかりました。」
何枚かの記入例みたいな紙をもらい、同じように書いてくるように言われた。
「単位はね、ギリギリ大丈夫そうだね。短い期間に頑張ってるね。
あとね、推薦状を書いてもらわないといけないから、よく顔を合わせる先生数人にお願いする必要があるね。これもすぐにやった方がいいね。」
「わかりました。」
カウンセラーのオフィスから出た僕は、そのままトイレに駆け込み、先月末あたりの寮の部屋に転移し、11月初めに行われるテストの申し込みと、手当たり次第にに大学の学部をチェックした。10分ほどで終わり、授業へと足早に移動した。
授業が全部終わってから、家に帰ってアンジェラに進学先の相談をすることにした。基本的にどこの大学も寮での生活が基本の様だ。
アンジェラはまだ仕事中の様だった。
書斎を覗いて話しかけてみる。
「アンジェラ…ただいま。手が空いたら、ちょっと話せる?」
「あぁ、あと10分ほどで終わる。ダイニングで食べて待っていてくれ。」
僕はダイニングに移動し、置いてあった取り分けられた夕食を食べ始めた。
少ししたらアンジェラが来た。
「どうした?何か問題でもあったのか?」
「あ、いや。問題とかじゃないんだ。学校の進路のことでカウンセラーからリストから漏れていたから、すぐにやってくれって言われて、学校のリストアップとか、色々相談したくて。」
「そうか。それで、行きたい大学はあるのか?」
「正直、まだ全然決まってないけど。普通は4,5カ所くらいは出すらしいんだ。」
「アメリカだと寮か?」
「そうみたい。一人部屋じゃない寮もあるみたいだから、それは避けたいな。」
「学部の希望は決まっているのか?」
「う~ん、今のところバイオロジーかな。」
「そうか、希望の学部があるなら、大学もおのずと決まって来るだろう。金のことは遠慮せずいくらでも好きなところを選べ。」
「じゃあ、アイビーリーグの大学の中で、行けそうなところを探ってみるよ。」
アンジェラは少し笑顔で頷いた。
「ライル、おまえなら、きっと大丈夫だ。」
僕は、少しの間ダイニングテーブルの上に資料を並べて、自分の考えをまとめた。
希望する大学と学部のリストをすぐに完成させ、明日の朝カウンセラーに見せられるように用意した。
願書に書けるようにもう少しボランティアをした方がいいだろうか。
父様の動物病院とかでボランティアとか出来ないかな?
とりあえずメッセージでも送っておくとしよう。
寮に戻って願書の内容をチェックしなければ…。明日は少し早く寮に行こう。
そう決めて、片付けた後、部屋に行くと、マリアンジェラが眠っていた。
アンジェラ…よく許してくれたな…。またチューする夢とか見ちゃいそうだとか言ってダメだと言われるかと思った。
マリアンジェラは、スヤスヤと眠っている。
今日は、リクエストは聞かず、彼女の見ている夢にお邪魔するしよう。
そう頭の中で考え、そっとマリアンジェラの首筋に手を添えるのだった。
マリアンジェラが見ていたのは、猫カフェで猫にまみれる夢だった。
100種類もの猫じゃらしを一本一本試して、ランキングを発表すると言うものだ。しかし、猫という動物は思い通りに行かない。
途中で飽きて、マリアンジェラにドンドン猫が寄ってくる。しまいに、暑苦しくて汗だくになる夢だ。
実際は僕に抱きかかえられるように眠って暑かったというのは、朝になるまで気づかなかったのだが…。
僕も、あっという間に夢の中で猫にまみれた。




