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413. 衣装の試着

 10月5日、火曜日。

 学校のランチタイム、寮の部屋でベッドに座り、読書をしていると、アンジェラからローマの事務所に衣装が届いたと連絡があった。

 会議室に置いてあるので、いつでも取りに行っていいとのことだ。

 じゃあ、どうせ時間があるからと思い、そのままローマの事務所まで転移し、そのまま自宅の自分の部屋に持ち帰る。

 とりあえず、アンジェラには持ってきたことを言っておこう。

 そう思いアンジェラの書斎を覗くがそこには電気も点いておらず、アンジェラはいない。

 時差があるのでイタリアは夕食時だ…まだ食事中か…。次にダイニングを覗いた。

 いたいた、全員揃っている。しかも大変なことになっている。

 ジュリアーノとライアンが飛び回って、それを捕獲しようとリリアナとアンドレが奮闘中だった。

「リリアナ、大変そうだね。」

「ライル~、ちょっと、捕まえてよ。」

「いいけど。」

 僕は僕の目の前の天井すれすれを飛行中のライアンをキャッチした。

 ジタバタするので、ダメもとで聞いてみる。

「ライアン、ちゃんと座って食べなきゃだめだろ?ほら、ミケーレとマリアンジェラを見てみろ、お行儀よく食べてるじゃないか。」

 言ったことを理解したのか、ライアンがミケーレ達を見た。

 二人とも、静かに座って夕食を食べている。特にミケーレは優雅に、口を拭きながら、ナイフとフォークも上手に使ってカチャカチャと音を立てることもない。

 マリアンジェラはちょっとお肉を切るサイズが大きいようで、一口がかなりの大きさだが、マナーは最近かなり良くなっていて、問題ないくらいだ。

 それを見たライアンがこっちに視線を戻す。

「お前たちもあれが食べたいのか?」

 ライアンが大きく頷いた。

 リリアナの左眉がぴくっと上がった。

「ライアンはお肉が食べたいから逃亡したってわけ?はぁ…」

 大きなため息をついたあと、僕からライアンを受け取り、ベビーチェアに座らせると、リリアナは自分のプレートのお肉を細かく切って、ライアンのプレートにのせた。ライアンは満足げな顔で、先割れスプーンでお肉をすくいあげ、にゃむにゃむしている。

 それを見たジュリアーノもすごい勢いでリリアナのところへ戻ってきた。

「ジュリアーノもお肉が食べたいのね?」

 ジュリアーノも大きく頷いた。

 二人は満足げにお肉を食べていた。

「肉か…。成長が早いから体が欲しているのもな…。」

 アンジェラが何事もなかったように呟いた。リリィは追加で焼いた数枚の大きなお肉を持って来てテーブルの真ん中に置くと、マリアンジェラのプレートに一枚のせた。マリアンジェラがニンマリ笑っている。


 おっと、忘れるところだった。

「アンジェラ、メッセージありがとう。衣装持ち帰ったよ。ハンガーにかけておいた方がいいかな?」

「お、早いな。そうだな、しわにならないようにハンガーにかけてクローゼットに入れておくといいい。」

「うん、そうする。」

「ライル、今日帰ってからでも一度試着して、不具合がないか確認するようにした方がいい。マリーも一緒にな。」

「パパ、じゃあ、マリー起きて待っててもいい?」

「マリー、寝ていても起こしてあげるよ。」

 僕がそう言うと、こっちをチラリと見てこくりと頷いた。

 いつも帰ってきたら爆睡しているからね。


 僕は、その後、自室から寮に戻り、午後の授業を受けたのだった。

 家に戻ったのは、午後11時ころだ。

 マリアンジェラは僕のベッドで寝ていた。

 そっと揺すって起こしてみる。

「マリー、僕だよ。帰ったよ。」

 全く起きる気配はない。

「マリー、起きて…僕にチューして。」

 マリアンジェラの瞼がバチッと開いた。

「チュウ?」

「ははは…起きてるんじゃん。」

「バレてたか…。」

 マリアンジェラは寝たふりをしていたようだ。抱き上げて頬にチュとしてあげるとユデダコみたいに真っ赤になって喜んでいる。

「あ、大きくならなきゃ、試着できないよ。」

「そうだった…。」

 マリアンジェラは、抱っこされたままむくむくと大きくなる。

 でも、おかしいな…重さが同じだ。というか、元々ものすごく大きさの割に重いのだけれど…。抱っこしたまま大きくなったので、密着感が…すごくある。

 あぁ、ヤバい。変な気起こしそうだ。ベッドの上にマリアンジェラを慌てて置いた。ポフッとベッドの上に放り出されて、マリアンジェラは楽しかったらしく、ぎゃはぎゃは笑っている。

 中身は幼児…。そう言い聞かせて、クローゼットからマリアンジェラの衣装を持ってきた。

 僕は、リリィを電話で呼び出した。

「リリィ、マリーに衣装を着せてあげて。」

「おっけい。」

 僕はクローゼットに戻り、自分の衣装に着替える。

 クローゼットの中の鏡で前からと脇など、不具合がないか確認する。後ろの方はリリィに見てもらおうか…。

 クローゼットから出ると、アンジェラも来ていた。

「おかえり、ライル。」

「あ、ただいま。」

「後ろ、見てやるから。」

 そう言ってアンジェラが僕の向きを変えた。僕もアンジェラの子供の一人みたいだな。後ろから声がした。

「キャー、ライル。しゅっごい素敵っ。」

 マリアンジェラだった。そういうマリアンジェラもヤバいくらいキラキラしてる。

「ライル、後ろも問題なさそうだ。動きにくくないか?」

「うん、意外と柔らかい生地で動きにくくはないよ。暑くもないし。」

「見た目もとてもいいな。二人、並んでみろ。」

 二人で並んだ。マリアンジェラが僕の腕に手をかけ、腕を組んだようにした。

「これは、ヤバいな。このまま事務所のウェブサイトに載せようか?」

「え?」

「ゴンザレスのデザインの宣伝になるんじゃないか?」

「アンジェラ、社長のズルい顔になってるよ。」

 リリィが言った。ゴンザレスさんのお店はライエンホールディングスの傘下だ。

 アンジェラが4人でユートレアに転移すると言い出した。

 結局、ユートレアの塔のテラスでくっついたり向かい合わせになったりしながら、月夜の城をバックに写真を何枚も撮られた。

 最後は翼を出せとか、翼を上に上げて向かい合わせになって手を握れとか…注文が多くなった。

 後から考えると七五三の写真撮影風景に似ている。


 僕達はこの時、まだ翌日に起きる大騒動の原因がこの写真だとは思いもしなかった。

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