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412. お揃いの衣装

 午後になり、軽く昼食をとったところで、アンジェラから急に呼び出しがあった。

「ライル、今日は何か予定はあるか?」

「いや、ないけど…。どうして?」

「ホームカミングのダンスパーティーの衣装をデザイナーに作ってもらうことになったんだが、サイズを合わせなければいけない。」

「あ…すっかり忘れてたよ。」

「そうだろうと思っていたんだ。話を聞いてすぐにデザイナーに言ってはあったんだが、あいつも忙しいらしくてな。さっき、今日の午後なら時間が取れると急に言ってきたのだ。」

「確かに、もうそんなに日にちがないよね…。」

「マリーも一緒にサイズを合わせる予定だ。では、14時にローマの事務所へ行ってくれ。事務所のスタッフが案内してくれる。あそこから徒歩3分ほどの場所だ。」

 もう、30分ほどで出発だ。

 僕はマリアンジェラに大きくなっておくように言いに行った。


 マリアンジェラはアトリエにミケーレと一緒にいた。

「マリー、あと30分ほどで出かけるから、大きくなっておいてくれないか?」

「ん?どこにお出かけ?」

「デザイナーさんにダンスパーティーの衣装を作ってもらうんだ。」

「ダンスぱーちー?」

「あ、タコダンスはしちゃダメだよ。当日、どうやって踊るかは僕が教えるから。」

「マリーがライルと行っていいってこと?」

「あ、言ってなかったっけ…。アンジェラとリリィがマリーを連れて行ったらって、言ってくれたんだ。」

 マリアンジェラの嬉しそうな顔が、パアッと花開いたようだ。


 あっという間に出発の時間だ。

 マリアンジェラはリリィにお出かけようの服に着替えさせてもらったようだ。

 どうやら、リリィのおさがりのワンピースの中から、淡いブルーのフリフリのを選んだようだ。

「マリー、似合ってるよ。かわいい。」

「ほんと?」

「あぁ、本当だ。マリーは青が良く似合うね。」

 小さい姿もかわいいが、大きくなったマリアンジェラが本当に美しい。

 アンジェラとリリィには内緒にしなきゃだけど、正直誰にも触れさせたくない。

「にゅ?」

 一人、脳内でそんなことを考えていたら、マリアンジェラが僕の顔を覗き込んだ。

 思わずキスしそうになる。う…恥ずかしい。ギリギリで我慢した。

 だって、ドアの隙間からリリィがじとっと覗いているんだもの。

 僕達は、アンジェラの芸能事務所のローマ支店に転移した。


 会議室に転移後、事務所の中に入り、スタッフに話しかけた。

「こんにちは…。アンジェラからデザイナーさんのところに連れて行ってもらえると聞いたんですけど…。」

「きゃー…ライルさん?まじ、カッコイイ。会いたかったんですよぉ。社長がなかなか連れて来てくれなくて…。文句言ってたんですけどぉ。」

「ははは、そうなんすか…。すみません。じゃ、案内をお願いしますね。」

「了解ですっ。」

 僕達は事務所のスタッフに案内され、デザイナーの店に行ったのだった。


 もう何年も前からなじみのあるデザイナーだが、最近、ローマに新しい店を作ったらしく、看板も何も出ていない場所に到着した。

「ゴンザレスさん、ライエンエンターテインメントの者です。社長に言われてライルさんとマリアンジェラさんをお連れしました。」

「待ってたわよっ。」

 少しごついおねえ系のデザイナーが少し奥まった場所に案内してくれた。

「あら、ライル君、大きく成長したのね~。でも顔は超フレッシュな感じでいいわぁ。あ、あら?あら、あら、あら?今日はマリアンジェラちゃんの衣装もって聞いていたんだけど…、あなたはどなた?」

「え?マリアンジェラですけど…。」

「きゃー、なになに…マジ?あのちびっこがこんなに急に大きくなるって言うの?」

 僕は慌ててアンジェラに電話をかけた。

「アンジェラ…ゴンザレスさん、ちょっとマリアンジェラの大きさで混乱して…」

 アンジェラとゴンザレスさんが電話で話した。

「なんだ…そういうこと…。紛らわしいわ。全く。」

「にゅ?」

 マリアンジェラも困惑気味だ。

 どうやら、アンジェラはうっかりマリアンジェラの名前を出してしまったらしく、大きめの三歳をイメージしていたらしい。まぁ、当然なんだが…。

 電話でアンジェラは、今日来ているのは娘のマリアンジェラではなく、タレントのマリアンジェラで、親戚だと説明したようだ。


 僕が着るのは、ブラウス、マリアンジェラが着るのは前をボタンで留め、途中からフリルスカートになっているワンピースだ。

 両方白地にグラデーションのある金糸を使用した刺繍を襟と前合わせ部分に施してある。襟元に近づくにつれ、どんどん金糸の色が濃くなっていくのだ。

 デザイン画を見ると、表向きの刺繍の模様は一般的な蔦模様だが、背面には、天使の翼が刺繍されていた。

 しかも、翼が出てもやぶれない様ないつもの加工がされる予定だ。

「あ、あの、これ…。」

「いつものやつよ。これだと破れないでしょ。」

「知ってるんですか?」

「アンジェラ様の翼が本物でだってことくらい知ってるわよ。」

「そうなんですか…。」

「私もアンジェラ様に育てられたのよ。アンジェラ様は自分の食べるものが無くても私達や、もっと早くに拾われた子達に食べ物と寝るところと、教育を与えてくれたわ。いつもいつも皆のこと大切にしてくれたの。最近は新しく子供を拾ってきたりはしなくなったけれど…昔はよく皆で一緒に食事をしたのよ。」

「へぇ…そうなんだぁ。」

「コショウをかけすぎて、くしゃみをしたときに、シャツが破れて…翼がこうバッと開いたことがあってね。」

「ぷっ。アンジェラらしくないな…。」

「そりゃ皆驚いたわよ。天使みたいに優しくて素晴らしい人と思っていたら、本当の天使だっていうんだもの、口からシチューが駄々洩れよ。」

 ゴンザレスさんだけではなく、一部の関係者は皆秘密を知っていても、アンジェラのことを信頼し、秘密に関しては一切公表しないのだ。


 刺繍の位置決めや、身頃のサイズなどを測り、きっちり作ってくれるそうだ。

 一応、ダンスパーティーの今どき情報はリサーチ済らしく、その点に関しても加味して作成してあるとの事だった。

 出来上がりは3日後、ローマの事務所に届けておくと約束してくれた。

「アンジェラ様によろしくお伝えくださいね。」

 僕とマリアンジェラは快諾すると、その店を後にした。

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