404. 双子羽化する
その日の夜、夕食も終わり、子供たちは入浴後、子供部屋に行き眠りについた午後9時過ぎだった。
リリアナがアンジェラとリリィの部屋に走ってきて、一応ドアをノックした。
『コン、コン、コン』
アンジェラがドアを開けるとリリアナはアンジェラを素通りしてリリィの所まで行った。
「リリィ、ねぇ、ちょっと来て。早く。」
「え?何?もしかして繭がどうかなってる?」
「どうしてわかるの?」
「あ、ライルが今日二人が出てくるって言ってたから。」
「マジ?」
「うん。」
「知ってたなら早く言ってよ…。いいから、来てよ。」
リリアナに引っ張られて、リリィが小走りに進む。アンジェラはそのすぐ後ろを心配そうについて行った。
部屋に入ると、ピンクと薄いブルーの繭が淡い光を発し、明滅を始めていた。
リリィは傷や損傷を癒すときのように、繭の中を透かして中を見てみる。
「リリアナだってできるでしょ、どうして自分でやらないの?」
「だって、怖いじゃないの…。」
中は特に変わった様子はない。二人とも、見た目は以前のまま、かわいい顔でスヤスヤ眠っている。
その時だ、繭の中心が溶けるように消滅し、大きな穴をあけた。
そして、中の二人が同時に目を開けた。
繭のふちを握り、つかまり立ちをするが、柔らかいためバランスを崩した。
フラッとよろめいたのをバランスを取ろうとしたのか、ベビーベッドの縦の柵を掴み踏ん張っている。
おっ、しっかり手に持って、二人とも立った。
掴まり立ちが出来た瞬間だ。アンドレが思わず感動の声をあげる。
「おぉーっ」
薄いピンクの繭からはクリーム色のような薄い金髪の毛先がピンクがかったジュリアーノが、そして白いが青みがかった繭からは、髪が青く艶めく黒色で、瞳が空色のライアンが繭になった時より、少し髪が伸びた状態で出てきたのだ。
そして、二人とも翼を出し、ブワッと翼を開いた。
「わっ、すごい。二人とも天使になったねぇ。」
リリィが思わず声に出すと、リリアナとアンドレがその場で床に倒れ込むように座った。
「良かった~、死んじゃうんじゃないかと思った…」
リリアナも感動の涙を浮かべている。
リリィがジュリアーノを抱き上げアンドレに、ライアンを抱えてリリアナに渡した。
「少し大きくなったかな?」
リリィがそう言うと二人も頷いた。
「あ、あ…。」
「う、う…。」
ジュリアーノとライアンが何かを訴えようとしている?
「お腹すいたのかな?」
リリィが言うと、リリアナがいきなりブラウスのボタンを外し両方のおっぱいを出した。
「ちょっと、いきなり両方出さないでよ。」
「別にいいじゃない。授乳くらい。」
すかさず双子は床に座ったリリアナの前面に仲良く直立し、立ったまま授乳を受け始めた。すごい勢いでおっぱいを飲む…つーか、すごい出るのね。しかも、立ち飲みって聞いたことないよ。
しばらく息継ぎもしないで飲んでいたが、二人同時に飲み終わり、自分でベビーベッドの上に飛んで戻り、翼を収納した。
「「げふっ…。」」
双子は大きなゲップを同時に出し、あっという間に寝てしまった。
リリアナとアンドレは素っ裸のジュリアーノとライアンに下着を着せ、おむつを履かせ、パジャマを着せた。
なんだか以前より顔がツヤツヤしている。
翼以外の能力はまだわからないが、そのうち見せてくれることだろう。
後ろから見ていたアンジェラはリリアナのおっぱいには驚いたようだが、終始にこやかに様子を見ていた。
「本当に赤ちゃんって、かわいいな。」
アンジェラがポツリと言った。
「そう言えば、ライルに聞いたけど、リリィどっか具合悪かったの?入院してたの?」
リリアナが心配そうに言った。
「あ、うん。もう大丈夫。ご飯食べるの忘れてちょっと能力を使いすぎたら、体に戻った後に貧血になっちゃって。」
「そっか…出血や貧血は能力では治せないものね。気をつけてよ。」
「ありがと。」
ほのぼのした雰囲気のまま自室に戻ったアンジェラとリリィはこれから自分たちのところに生まれてくる赤ちゃんがどんな赤ちゃんなのか、想像するのだった。
ベッドに横になってアンジェラが言った。
「リリィにそっくりな女の子がいいなぁ。」
「じゃあ、私はプラチナなブロンドのアンジェラに似た超イケメンの男の子がいい。」
「ミケーレは二人とも金髪だと言っていたぞ。」
「え?」
アンジェラはミケーレが第三の眼を覚醒した日に予知をしていたとリリィに教えた。
「そう…ミケーレが…。ちゃんとコントロールできるようになったら、すごく意味のある能力よね。」
「そうだな。」
あいまいな予知夢とかではない、かなり正確な予知である。期待もあるが、心配事も多いアンジェラとリリィであった。




