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397. 証拠隠滅

 8月18日、水曜日朝8時頃。

 アンジェラの寝室のドアがバーンと開いて、入ってきたのはリリアナだ。

「アンジェラ、いつまで寝てんのよ。」

「…。」

「ちょ、ちょっとライル、なんであんたがここで全裸で寝てんのよ。アンジェラ達は?」

「ん?え?うわっ、ノックくらいしてよ。見たな~。」

「見たくて見たんじゃないわよ。二人はどこにいるの?」

「ここにいないという事は、またユートレアじゃないの?」

「全く…もぉ。」

 リリアナは怒ってどこかに転移して行った。


 行った先は当然ユートレアの王の間だ。

 転移するなり、大声で怒鳴る。

「ちょっと、いつまで寝てんのよ。きゃー」

「リリアナ、ノックくらいしなさい。」

 冷静なアンジェラの窘める声に反応し、リリアナ、即行で退場。しかし…。

『み、み、み…見ちゃったじゃないの…』

 リリアナはかなりショックを受けていた。仲良しの最中の二人を目撃してしまったのだ。

 自宅の自室に顔から火が出そうな赤面で戻ったリリアナだった。


 程なくして、仕方なく、仲良しタイムを終了し、家に戻ったアンジェラ達だった。

 二人でシャワーを浴びながら、リリィがアンジェラに聞く。

「アンジェラ、昨日って私がユートレアに連れて行ったんだっけ?」

「…。あ、あぁ。まぁ、そんな感じ。」

「ん?」

 ゾンビ映画の恐怖のあまり泣いたまま寝落ちして、寝ぼけていたため全く覚えていないが、アンジェラは転移できないと知っているので、きっと寝ぼけて自分でユートレアに行っちゃったんだな…と思ったリリィだった。

「いつの間にか二人とも上位覚醒の姿になっちゃってたね…。へへ。」

 そう言って、自身を金髪の姿に変えるリリィだった。

 アンジェラはまだうまく姿をコントロールできない。

「リリィ…」

「チューは元に戻ってからだよ。」

 後ろからリリィを抱きしめたアンジェラがいきなりキスを拒絶され、ガックリ肩を落とす。

「…。」

「あれ、できたじゃん。よくできました。」

 いきなり、元の姿に戻ったアンジェラにリリィがご褒美のキスをする。

「リ、リリィ…」

 130歳を超えてもリリィへの愛が止まらないアンジェラだった。


 その時、浴室のドアが開いた。

『バンッ』

「パァパ、お腹すいて死ぬ。早くしてよ~。リリアナが怒ってて、何もやってくれないの~。」

 裸で抱き合う両親の姿を見ても何も動じない娘、マリアンジェラがそう言い捨ててドアを閉めた。

『バンッ』

「早く行かないと、血を見るかもね。」

「そ、そうだな。急ごう。」

 大食いの女神を娘に持つ二人は、急いで服を着てダイニングへ向かったのだった。


 ダイニングでは、目をこすりながら自分の席に座るミケーレ、しかめっ面をして腕を組むマリアンジェラ、そして、短パンにTシャツ姿の上にエプロンを着けて、器用にスクランブルエッグを作るライルがいた。

「あ、ライル…。」

 リリィが言った。ライルが横目でリリィとアンジェラを見て、クスッと笑った。

「な、なんだ?ライル、何か言いたいことがあるのか?」

 アンジェラがライルに言うと、ライルはマリアンジェラとミケーレのお皿にスクランブルエッグを盛りながら言った。

「リリアナに邪魔されたんだろ?」

「そ、そんな…邪魔とか…ではないけど。」

 リリィが反論した。

「許してやってよ。リリアナは双子が心配でイラついてるんだ。」

「だ、だが…ノックもしないでだな…。」

「それは僕も言っておいたよ。僕も見られたもん。」

「え?何を見られたの?」

 マリアンジェラがライルに聞いた。

「ふふ、裸で寝ているところ…。」

「え?」

 その言葉と同時にマリアンジェラが巨大化した。180cmくらいの大きさになり、リリアナの部屋にドスドスと歩いて行った。

「ま、マリー、ちょっと待って…。」

 ライルが追いかけたが、どうやら少し遅かったようだ。

 リリアナの『ぐえっ』という声と『やめて下さい』というアンドレの声が聞こえた。

 ライルは怖くて部屋の中は確認はできなかった。

 それからだ、リリアナはどんなことがあっても他の人の部屋に入るときはドアの外に立ってドアをノックするようになった。


 マリアンジェラが小さい姿になって、リリアナの部屋から出てきた。

「ま、マリー何をしたんだい?」

「ん?ちょっとね、見たものの記憶を消したっていう感じかな…。しかもね、リリアナったら…パパとママの…あ、何でもない。」

 すました顔してダイニングに戻るマリアンジェラの頬が少し赤くなっている。


 ダイニングに戻ると先に焼いておいたベーコンが皿に盛られ、焼いたパンと共にすでにミケーレが食べていた。

「マリーどうしたんだ急に…。」

 アンジェラが問うと、なぜかミケーレが笑いながら言った。

「リリアナの眼に焼き付いたブツを消し去りに行ったんだろ?」

「しゅごーい、ミケーレ、大正解。」

 ま、とにかく、マリアンジェラの機嫌が直ってよかった。

「パパとママの今朝の分も消しといたよ。」

 アンジェラとリリィ、喉から心臓が出そうなほどの赤面である。

 リリアナと一体今朝、何をやらかしたんだろう?と思うミケーレだった。

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