389. 完全復活
アンジェラ、ミケーレ、マリアンジェラの三人は女神の洞窟の円台の上からあっという間にいつもの封印の間に転移してきた。
景色が変わり、ふと安堵した時、マリアンジェラが台から飛び降り、リリィの体の前に行った。
「ママ…。」
そう言ってリリィの頬を触る。同時にマリアンジェラの胸の辺りからポワンとほのかに暖かな光があふれ、そこから金色の核がゆっくりと飛び出した。
「あっ」
マリアンジェラがそう声をあげた時には、その核はリリィの体の中にスーッと吸い込まれて行ってしまった。
アンジェラが慌てて駆け寄る。リリィの核は傷がついていて、生身の体に入れると固まってしまうと聞いていたからだ。
リリィの様子をじっと見守る。さっきまでと変わらず、少し笑い顔のように穏やかに眠っている様だ。
「リリィ…。」
アンジェラが小さい声でそう言った時、リリィの目がパチパチパチッと大きく瞬いた。
「ん?」
少し首を傾げて不思議そうに皆を見上げる。
「ママー、おかえり」
すごい勢いでマリアンジェラとリリィの隙間に割り込んだのはミケーレだった。
リリィにしがみついて顔をぐりぐり押しつける。
「ミケーレ、マリー、アンジェラ…こんなとこで皆何してんの?」
どうやらライルに核を治してもらおうとしたところから記憶がない様だ。
アンジェラはリリィが消えてしまった後でマリアンジェラまで明滅し始め、女神の洞窟に飛んだと仮説を立て、ミケーレと救出しに行ったとが説明すると、急にリリィの顔が不安そうになった。
「どうしたリリィ…」
「ねぇ、ライルは?」
「あ、私の中に入ったままなの。」
マリアンジェラがサラッと言った。
「どうして出てこないの?」
「それは、わかんない。」
その時、マリアンジェラの体が金色の光の粒子に覆われ、その光の粒子が分離した。
ライルが姿を現わした。
「ライル、よかった。」
リリィが安心したように言った。ライルがバツが悪そうに言った。
「あの、洞窟の白い女の子、マリアンジェラのだけじゃなく、僕のエネルギーも目いっぱい吸収していったよ。マリー大丈夫か?」
マリアンジェラはライルに心配されて嬉しそうに頬をピンクにしている。
「うん。でもお腹すいた。」
「では、早く家に帰って食事をとろう。」
アンジェラがそう言った時、ミケーレがストップをかけた。
「パパ、ちょっとだけ待って。これ、全部拾って、それで、半分はそこの台の真ん中に入れちゃうね。」
ミケーレがポケットからバンダナを取り出し、少し結び目を緩めて、アンジェラが女神の洞窟に行く前に泣きまくって床に落とした涙の石をかき集め、バンダナの包みの中に入れた。
触らないように、パーカーの袖を長くして器用に集めている。
「何しているの?」
リリィが聞くと、アンジェラが答えた。
「ルシフェルがもう涙を流さなくなってしまっていただろ?あの石がないとマリアンジェラを助けられないからな…ここまで来たところで、涙の石が見つからず、悲しくなってしまったら、私の涙がその青い石に変わったんだ。」
ミケーレ以外の全員が目が点状態だ。
「パパ、しゅっごーい。大天使と同じってこと?」
「さ、さあ?そう言うことではないと思うが…。」
ミケーレが石の半分ほどの量を取り、円台の真ん中にある穴にコロコロと入れた。
一つ入るたびにきれいな青い光が柱のように中心部から上がった。
七個目を入れた時、上がった光の色が明らかに金色に見えた。
アンジェラは洞窟の女神に受けた説明を思い出し、皆に教えた。
「あの白い石の女の子は『帰るためには1つ。新しい天使を生まれさせるためには7つ。天使を癒すためには1つ。天使を作り変えるためには3つ。必要だ』と言ったんだ。そしてリリアナの子供たちはまだ天使ではないとも言っていた。」
「ジュリアーノとライアンのためにいっぱい入れておくの。」
ミケーレが言った。
アンジェラがたくさん涙を流したおかげで、大量の涙の石が手に入ったのだ。
30個以上の石を穴に入れたところで、アンジェラがもう十分だといい、皆は家に戻ることにした。
リリィがミケーレをライルがアンジェラを連れ、マリアンジェラは自分自身で転移した。




