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388. 帰還

 アンジェラが絵本をめくっているのを見て、マリアンジェラが聞いた。

「パパ、何してるの?」

「あぁ、これか…。また絵本が見つかったんだ。ここに来るために涙の石が必要だったからな…。

 帰り方も出てくるのかと思って確認しているんだ。」

「あ、ちょっと待って。」

 マリアンジェラが白い壁に右手の掌をくっつけた、また小さい手がにゅーっと出てマリアンジェラの手首を掴んだ。

『ぐわっ』とその腕を引き、壁の中から小さい白い石の少女を引っ張り出す。

『きゃぁあっ。』

「白ちゃん、学習しないのね。」

『だ、誰が白ちゃんだ…。失礼な。』

「だって、アフロディーテって大きい女神だよ。あなたは違うと思う。」

 アンジェラとミケーレは最初から固まっていた。

「石が動いてる?」

 ミケーレが後ずさった。

「ね、キモイでしょ。」

 マリアンジェラが得意げに言った。自分だってさっきまで石化してたのに…。


 マリアンジェラは、白い石の少女に向き直って言った。

「帰り方教えてくれるって言ったでしょ。今すぐ教えて。お腹すいたの。」

 白い石の少女は、少し頬っぺたを膨らませて怒っている様子であったが、マリアンジェラに言った。

『このままじゃ永遠に帰れないのよ。』

「約束が違うじゃない。早く言いなさいよ。」

『むぅ。涙の石が必要なの。世界の悲しみを形にした天使の涙が。』

「それをどうすんのよ。」

『わたしに捧げると、代わりに小さい鍵の代わりの球をあげるわ。』

 ミケーレが口を挟んだ。

「何個必要なの?」

「帰るためには1つ。新しい天使を生まれさせるためには7つ。天使を癒すためには1つ。天使を作り変えるためには3つ。必要なの。」

「え?じゃあリリアナの子供たちが生まれるのには7つずつ必要だったの?」

『あれは、まだ天使じゃないわ。ただの成長が早い人間の子供と一緒よ。あなた達のいる世界では、もうルシフェルは涙を流さないでしょ?それはもう天使が新たに生まれることはないという事よ。』

「石があれば生まれるの?あの子達も天使になれる?」

『そうよ。石があれば天使になれるわ。封印の間と呼ばれている部屋の中央にある台座の中央に石を奉納するための入り口があるはずよ。』

「じゃ、はいこれ。」

 ミケーレがズボンのポケットから涙の石を取り出した。

 封印の間でアンジェラが流した涙のうちの一つだ。

 ミケーレが白い小さな少女に手渡すと、少女は少し困った顔をした。

『ごめんなさい…私力不足で…』


 話を聞くと、本来、女神像は2mもある大きさなのだが、マリアンジェラがエネルギーの80%を所有したまま地球に行ってしまったので『女神の祈り』を行うにはパワー不足ということだ。

 マリアンジェラがおもむろに白い小さな少女の両手を取った。

 マリアンジェラがぐんぐん小さくなり、その分白い小さな少女が大きくなった。

「「うわっ」」

 ミケーレとアンジェラは驚きの声をあげた。

 アフロディーテこと白ちゃんはミケーレから受け取った涙の石を胸元に吸い込み、口からとても小さい球を出した。

「さぁ、乗るんだ。」

 アンジェラがマリアンジェラとミケーレに声をかける。

 二人を抱きかかえ、円台の上に乗った三人の目の前を、小さな球がふわふわと移動し、円台の中央にスッと入って行った。円台の周りに光が投影され、ぐるぐるとまるで魔法陣のような文字が浮かび上がる。

 三人の姿は、女神の洞窟から一瞬で消えた。

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