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386. アンジェラの涙

 アンジェラはリリアナに封印の間に連れて来てもらった。

 ミケーレも一緒に来た。

 リリアナはアンジェラに「ちょっと用事がある」と言っていなくなった。

 アンジェラとミケーレは封印の間でさっきウィリアムから入手した絵本を見ながら二人で考えた。

「ミケーレ、お前はここに来たのは何回目だ?」

「パパ…僕ね、ここ、多分初めて来た。」

「夢…か…。」

「うん、あの大きな方のパパにそっくりな天使が絵本にのってた方?」

「そうだ。」

「きれいだね。」

 ミケーレがそう言った時、アンジェラはそっとルシフェルの頬を触った。

 ルシフェルが瞼を開き、美しい碧眼を見せた。

「…。お目目青いね。」

 ミケーレが言った。

「そうだな。」

「泣かないね…。」

「泣かないな…。」

 アンジェラはルシフェルが泣かなくなったことをリリィから聞いていた。

「今すぐ 来なさい ってパパに言ってるの?」

「さぁ、どうかな…。」

 アンジェラは、大天使ルシフェルの後に天使アズラィールの頬も触り、涙が出ないことを確認した。

「残念ながら、何も進展がないな…。」

 アンジェラがそう言ったとき、ミケーレが後ろを見て言った。

「あ、ママの…体だけ置いてったってやつ?これ?」

 そう、ここにはリリィの体を置いてあった。ひび割れた核で体に入ると動けなくなると思われたため、体をここに保管することにしたのだ。

 うっすらと笑みを浮かべているような眠り顔をしたリリィの体を少し見つめていたアンジェラだったが…ふと思いつめたようにその体を抱きしめた。

「うぅっ、リリィ、リリィ…どこにいるんだ…。」

 それまで我慢していたのが堰を切って流れ落ちるようにアンジェラの感情を揺さぶり、アンジェラは涙を流した。

 ミケーレさえ、それを見ているのが辛くなるほどの悲しみの涙だった。

『カッーン、カーン』そう音がしたかと思うと、アンジェラの足元に数粒の青い小さな丸い石が転がっていた。

 それは、アンジェラの目から流れ落ちた涙が空中で石に変わったのであった。

 まだ涙は出続けている。『コーン、カツーン』

「ミケーレ、こ、これは涙の石でいいのか?」

 ミケーレは自分のポケットからハンカチを取り出すと手に触れないように気をつけて落ちた石を全部拾い集めた。

「パパ、大丈夫?」

「あ、あぁ。」

「パパ、全部で12個あった。どうすればいいのかわかる?」

「この石を触ると、涙が止まらなくなるんだ。そして、突然石が光って、女神の洞窟へ飛ぶはずだ。でも、この他の石を持っていないと、帰って来られないんだ。」

 アンジェラはライルが変えてしまった今世ではないが、ライルを探しに行った時に起きたことを思い出し、石を2個だけ床に置くと、残りの10個をハンカチでしっかり縛り、ポケットに押し込んだ。


「ミケーレ、準備はいいか?」

「うん、パパ。」

 二人は涙の石を一つずつ手に取ると、体の内側から何とも言えない悲しみが湧き上がってくるのを感じ、涙を流した。

 アンジェラの涙はまだ、石になってしまう。ミケーレの涙は液体のままだ。

 慌ててアンジェラは自分の持っている涙の石をミケーレの顔の下に持って行った。

 二人が手に持つ涙の石は、ミケーレの涙がしみこむほどにドンドン大きさを増し、いつの間にか直径5cmほどに成長していた。

 そして、その時は訪れる。

 涙の石が明滅を始めたのだ。


 アンジェラの涙はブルーの真珠の様だった。

 それが明滅を始め、それでもミケーレの涙を吸い込み続けている。

「ミケーレ、大丈夫か?」

「アンジェラも、涙を流しながらミケーレに話しかける。」

「うっ、う、うん。パ、パパ。大丈夫、だ、け、ど、悲しい…。」

 その言葉を聞き終わったくらいの時だ、ミケーレとアンジェラの視界が突然真っ暗になり、そして、さっきよりヒンヤリした床に放り投げられた。

「いたっ」

 涙の石を落とさないよう気を配っていたミケーレは尻もちをついた。

 アンジェラは翼を出し、バランスをとったせいで大丈夫なようだった。

「パパぁ…どこ?真っ暗でこわいぃ。」

 ミケーレが弱気な声を出した時、アンジェラが体全体を光らせ手を差し伸べた。

「さぁ、こっちにおいで、ミケーレ。」

「うん。」

 二人は手を取り合って奥へ進んだ。

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