384. 変化したページ
時間は少し遡る。アンジェラは、自分の目の前が真っ白に光った後、マリアンジェラが腕の中から消えてしまったことを認識した。
「マリー…一体何が起こっているんだ。」
アンジェラは涙をにじませながら床に膝をついた状態で、唇を噛み自分にできる事の少なさに苛立ちを覚えていた。
さっきまで確認しようとしていた絵本の続きを見なければ…。
私にできることは限られているが、私は絶対にリリィもマリアンジェラも諦めない。
アンジェラは動揺する気持ちを抑えながら書斎に向かった。
さっきの絵本『星降る夜の天使たち』を手に取り、ページを開く、二人の天使が飛び立つところが描かれているはずのページだ。
「なっ…」
アンジェラは思わず声をあげてしまった。
絵が変わっていたのだ。
石像である双子の天使像の前に、別の天使二人が降り立ち、双子の天使を迎えに来たような絵に変わっていた。
しかも、迎えに来ている二人は私自身とマリアンジェアらにそっくりな天使だった。
次のページをめくると、四人の天使が夜空に向かって飛び立つ絵が描かれていた。
リリィもマリアンジェラも、ライルも、そして私も、皆で小惑星の飛来に立ち向かうのだ。
「大丈夫、帰って来る。」
アンジェラは一人で自分に言い聞かせるように言葉に出して言った。
誰も返事をする者はそこにはいなかったが、体の中から力が湧き出るのがわかった。
待とう、三人が帰るまで。早くその日が来ることを祈りながら。
アンジェラは絵本の変わってしまったページを写真に撮り、印刷した。
もう一つの世界のアンジェラに知らせるためだ。
報告していなかったことも含めて手紙を書いた。リリィが『月の石』を触り未来の月に転移してしまう事故があり、その時に核を負傷してしまったこと。
そこから漏れ出たエネルギーの影響を受け、自分が上位覚醒したことなどだ。
しかし、アンジェラはふと、思う。こちらの世界の小惑星をどうにか衝突させないようにできたとして、あっちの世界の方はどうなるのだろう…。
いや、わからない。全く同じではないのだ。ライルも生まれず、天使は極少数、しかも長生きしているのは私と同じアンジェラとして生まれた者だけだ。
ただ不安にさせるだけになってしまう可能性もあるが、情報を共有すると決めたのだ、それは約束を果たそう。
手紙を書き終え、大きめの封筒に全てを入れ、倉庫の方に移動した。
そして、いつものように封筒を白い布を持ち上げ、例の絵画の上に置いた。
そのまま倉庫を後にし、さっき撮った写真をリリアナとアンドレに送る。
『三人が帰るまで、待とう』そうコメントを付けた。




