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381. 親子鑑定と大失敗

 翌日、午後2時頃、アンジェラは僕を彼の書斎に来るように言った。

 僕が希望したことで検査に出されたDNA鑑定の結果が出たのだ。

 アンジェラは僕に最初に念を押した。

「後悔することになるかもしれないぞ、それでも見るのか?」

「大丈夫だ。どんな結果でも受け入れる。」


 サンプルはどこから採取したものか僕には知らされなかった。

 まず、アンジェラ、リリィとマリアンジェラの親子関係の鑑定だ。

 アンジェラは結果を見ていない様だ。封を目の前で切り、僕に手渡してくれた。

『父である確率:99.9999%』

『母である確率:99.9999%』

「え?マリーは二人の遺伝子を普通に受け継いでいるってこと?」

 アンジェラが鑑定結果を覗き込む。パアッと顔がほころびうれしそうだ。

 アンジェラもこの結果を予想していなかったのだろう。

 ミケーレ、アンドレ、アンジェラはやはりDNAが完全一致していた。


 次に僕とリリィの兄妹鑑定。

『父が一致する確率:00.0000%』

『母が一致する確率:00.0000%』

「え?これってどういうこと?」

「ライル、そういうことか…双子の兄弟として生まれた私と兄上でさえ、DNA上は全く関係がない。いままでは2つしか種類がなかったが、3つ目がリリィということだ。」

「え?僕とリリィは双子の兄妹じゃないの?」

「双子の兄妹さ。でも人間の細胞レベルでは何も共有していないってことだ。

 神、あるいは最初の天使であるあの方たちが創造した個体である私たちには、常識は通用しないということだ。」

「じゃあ、マリーの鑑定にはなぜリリィとアンジェラは親だという結果がでているのさ。」

「天使×天使しか本当の意味での子をなすことができないのだろう。」


「じゃ、僕とマリーはしようと思えば結婚してもいいってこと?」

「ライル、お前やはりそれが目的で、DNA鑑定を依頼したがったのか…。」

「そうだよ。神であることをやめてまで僕のために生まれてきてくれたんだ。今までは血が繋がってるからって拒絶していたけど、もうそんな必要ないだろ?」

「ライル、お前はマリーの親であり伯父であるということに変わりはない。いくら遺伝的に問題ないとしても、そこは超えてはいけない所だと思うのだ。」

「じゃあ、僕たちの気持ちはどうなるの?あんなの見せられて、僕がマリーをあきらめることが出来ると思う?」

 そこに、リリィが入ってきた。そして、開いていたドアをパタンと閉めた。

「声が大きいよ、二人とも…。」

 そう言った後、リリィはデスクの上の結果を見て、ショックを受けていた。

「え、うそ。私とライルって血縁無し?私、誰?そう言えば、あんまり似てないなとは思っていたけど…。」

「リリィ、心配するな。お前は間違いなくライルの妹として生まれている。ただ、人間の遺伝的要素は天使には関係ないのだろう。最初の天使のあの方たちが、君を私に与えてくれたのだと思う。男ばかりでは繁殖できないからな。」

「アンジェラ、繁殖って…。いやらしい言い方しないでよ。」

 リリィは真っ赤になってアンジェラに小さくパンチをしている。

「実際、マリアンジェラは私達二人の子と結果が出ている。」

 もう一枚の結果をリリィに見せる。

「あ、本当だ。なんだかうれしいね。ふふ」

 リリィは僕の方をチラリと見て言った。

「マリーのこと、あまり思いつめないで。今回のことで、自分がどうしてこんなにライルに執着していたかわかったみたいだから。これからは少し態度も変わってくると思う。」

「…。僕の気持ちは無視されるの?」

「無視なんかしてないよ。ライルもそんなにすぐに結論出さなくていいよ。

 まずは二人が本当の意味で大人になるまで、考える時間もたくさんあるってことだよ。」

 僕は納得したわけではなかったが、その場を離れた。


 僕は自分の部屋に戻りベッドの上に座り読書をしていると、マリアンジェラが部屋に入ってきた。まだ、大きいままだ。

「横に座ってもい~い?」

 いつもなら何も言わずに突進してくるのに、どうしたのかと思いながら、返事をした。

「いいよ。」

 マリアンジェラがちょこんと僕の横に座って、読書中の本を覗き込む…。

「これ、面白い?」

「さぁ、どうかな…面白くはないかな。」

「ふーん、面白くないのに読むんだ。ふーん」

「マリー、そんなこと言いに来たの?」

 かわいいな、と思いつつ、平気なふりをして僕は言った。

 マリアンジェラは首をふるふると横に振り、僕の手に手をのせた。

「ライル、今までしつこくしてごめんね。」

「え?」

「どうしてライルのことが好きか、もうわかったから、これからは自分で抑えられると思う。」

「そうなの?」

「うん。マリーはライルが悲しまないように側にいて助けたかったの。別にチューしたいとか、そう言うのが目的じゃなかった。でも忘れちゃってたから、変なことしちゃってたけど、思い出せてよかった。」

「そっか…。」

「うん。」

「何か変な気分。」

「何が?」

「マリーが、女神だったなんてさ。」

「そうだね。パパとママの子なのに、元女神って変だね。ははは」

 そこにアンジェラが来た。

「マリー、ここにいたのか…。おやつ食べるってミケーレが待っているぞ。

 リリアナが徠神の店のスィーツを買ってきたようだぞ。」

「うん、ライル、行こ。」

「あ、あぁ。」

 アンジェラがこちらをギロリと見る。こわっ。


 ダイニングに行くとずいぶんと大きなお持ち帰り用のボックスに20個ほどケーキやプリン、タルトなどが入っていた。

「わぁ、おいしそうね。」

 リリィが取り皿を配りながら言った。

「これと、これと、これが新作だって言ってたわ。」

 リリアナが説明すると、ミケーレが手を挙げた。

「僕、その最初の新作がいい。」

 アンジェラがマリアンジェラに気を遣って、聞いた。

「マリーはどれがいい?パパがとってあげようか?」

「うん。じゃ、パパ。さっきの二個目の新作とこっちの桃のタルト、とって。」

 アンジェラはニコニコしながらケーキを取り分け、フォークと一緒にマリアンジェラの前に置いた。

「パパ、ありがと。」

「あ、私はね、いつもの定番のやつ~、プリンのっかってるやつと、キイチゴのタルト。」

 そう言ったのはリリィだ。味もよくわかんないのに、食べる時は積極的だな。

「ライルは?」

 リリアナに聞かれたので、とりあえず答える。

「あ、僕は、味がわかんないから、今日はいいや…。」

「あ…そうだった。ちょっと、こっち来てよ。」

 リリィが僕を引っ張って僕の部屋に行く。融合したいのだ。

「また、ニューハーフみたいになるぞ。くく…。」

「ちょっと、やめてよ。今回はチェックしてから行くわよ。」

 そう言いながら、融合した後、鏡の前でリリィの姿を調整し、ダイニングに戻った。

 ウキウキでスキップしながら席までいくリリィ…席に着いた途端、二口で一個目のプリンがのってるのを食べ、二個目は一口で食べそうな勢いだ。

「リリィ、どうしたんだ…そんなにあわてて…。」

 アンジェラがリリィに声をかけた。

「あ、ごめん。慌ててるわけじゃないんだけど。味がするのがうれしくって…。

 なんか、生きてるって感じ…。それにさ、食べても食べても、どっかに消えちゃうんだよ。この体…。」

 それを聞いて皆はシーンとなった。

 自分の分を食べ終わると、リリィが引っ込んでライルが出てきた。

「あれ?交代してくれたんだ…。」

 食べるつもりはなかったけど、代わってくれたので、食べておこうとケーキを選ぶ。

 生チョコのしっとりケーキと、チーズケーキを選んだ。

「やべ、これうまい。」

 パクパク食べるライルを皆、ガン見中である。ライルはまたプラチナブロンドに青みがかった姿になっていたのだ。

 マリアンジェラがライルをチラチラ見ている。

「ん?どうしたの、マリー。」

「あ、ううん。イケメン観察してただけ。」

「え?あ、あはは…。これか…。」

 自分の髪の毛を引っ張って色を見るライルだった。

 食べ終わると同時にライルは自室に戻り、リリィと分離した。

「ねぇ、今度からさ、僕先にしてくれない?」

「え?なんでよ。」

「途中で変わると、自分の姿をチェックしないで出ちゃうだろ。」

「そんなの、嫌よ。ニューハーフって言われちゃうじゃない。ライルはいいじゃん、イケメンになるんだから。」

「なぁ、リリィ。それより、核って治せないのかな?全然自然には治ってる気がしないよな?」

「確かに…変わってない。ライル、ちょっとやってみて。」

 リリィはそう言って、つるペタが見えないギリギリまでシャツの胸元を広げる。

 ライルはそっと手を体の中に入れる。

「リリィ、ちょっと核に触るよ。」

「うん。ちょっと初体験だね。」

「やらしー言い方するなよ。」

「そう言う方がやらしーんじゃないの?」

 バカな言い合いをしつつ、ライルがそっと手を伸ばす。手が触れるか触れないかの時に、リリィの胸元が発光した。

『キィーン』

 ハウリングのような嫌な音がした直後、意外なことが起こった。

 リリィの瞳孔が開き、意識を失くしている。

「誰か、誰か来てくれ!!!」

 僕は、自分の力ではどうすることもできず、叫んだ。

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