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373. 遊園地での一日

 チャペルでの撮影時、トルレスは撮影のエキストラに混ざり、結婚式の誓いの言葉のシーンを間近で見ていた。それは、結婚式を祝福する親族役の中の一人…。

 しかも、マリアンジェラの花嫁姿を見てアゲアゲの上を行っていたところへ、演技も完璧、そして誓いのキスを見ちゃったものだから、興奮しまくり状態であった。


 衣装を着替えている最中のこと、トルレスはアンジェラが撮影に来ていると聞き、アンジェラを探して撮影現場をうろうろしていた。

 そう、この男アンジェラの大ファン、そして個人的にアンジェラともかなり親交は深い方なのだ。だが、アンジェラは謎の多い男だ。近年は結婚して子供も生まれたと聞いてはいるが、家族の姿を見たことはない。

 そう言えば、ちょうど一年ほど前の船上パーティーで見かけたことがある。

 彼は、あのパーティーにも参加していたのだ。

『あぁ、あの時連れてきていた少年がライル君なのだな…。』

 トルレスはふと思い出した。

 そして次の瞬間、彼の頭の中に衝撃が走る…。

 マリアンジェラが、用意された控えの部屋で着替え終わり、出てきたのだ。

 彼はマリアンジェラに目を奪われた。

『はぁ~、美しい…。』

 うっとりとマリアンジェラを見つめたその後ろに、マリアンジェラの着替えに付き添っていたリリィも出てきた。

「ねぇ、ママ、やっぱりこの服もちょっとここがきついよ~。」

 胸元を気にするマリアンジェラに、リリィが頭を撫でながら言った。

「すぐ終わるから、ちょっとだけ我慢してよ、ね。あとでアイス買ってあげるから。」

「ほんと?イチゴとチョコとキャラメルも買ってくれる?」

「もちろん。」

 二人のやり取りを聞いていたトルレスは、ふと顔をあげリリィを見た。

『ぎゃー、て、て、天使様…。こ、こんなところにいらっしゃった…。』

 そう、トルレスは、あの船上パーティーでリリィがド派手に沈没を回避した様子を甲板で目の当たりにした一人だった。

 そして、あの美少女マリアンジェラが天使様を『ママ』と呼んでいる。トルレスの頭の中はパニックだ。

 そこに、見慣れたアンジェラの姿が近づいてきて、リリィにべたべたとくっつき濃厚なチューをしているのを目撃…、パニックだった頭の中が、無になりそうな状態に…。

『???誰???』

「あ、パパぁ、あとでママがアイス買ってくれるってー。」

「そうか、よかったな、マリー。食べすぎに注意するんだぞ。」

 トルレスは、『アンジェラ様がパパで、天使様がママで…。』脳内で復習中だ。


 アンジェラがトルレスに気づいて近づいてきた。

「やあ、久しぶりだな、トルレス。」

「あ、アンジェラ様、本日は急な依頼ですみません。感謝しかありません。」

「いや、ちょうど今日、ここへ家族で来る予定だったんだよ。」

「そうなんですか…。ところで、そちらの方は?」

 トルレスは天使様が気になって仕方がない。

「あ、初めてだったかな?私の妻、リリィだよ。」

「お、奥様ですか…お美しい。初めてお目にかかります。トルレス・ゼノスでございます。」

「はじめまして。リリィです。よろしくお願いいたします。」

 そう言ったとき、リリィの横にいたミケーレがリリィの手を引っ張って言った。

「ママ、おしっこ」

「あ、あら、すみません。ちょっと行ってきますね~。」

 ミケーレを抱っこしてトイレの方へ去ったリリィを見て、トルレスは独り言を言った。

「アンジェラ様の奥様だったのですね、あの私達を助けて下さった天使様は…。」

「え?」

 アンジェラはしっかり聞いていた。そして、言った。

「口外無用だ。いいな、トルレス。」

「はい。もちろんです。一つ、聞いてもよろしいですか?」

「なんだ。」

「マリアンジェラさんはアンジェラ様のお子さんですか?」

 アンジェラは一瞬悩んだが、返事をした。

「そうだ。」

「おいくつの時のお子さんですか?すごく大きいですよね…。」

『しまった。どうするべきか…。』

 そこにマリアンジェラがいることをすっかり忘れているのか…二人の会話を聞いていたマリアンジェラがアンジェラに言った。

「パパ、それ言っちゃったらママに怒られるよ。」

「マ、マリー。どうしよう。」

「じゃ、おじちゃんに教えてあげる。けど、絶対に他には教えない、いい?」

 マリアンジェラは赤い目を使って言った。

 トルレスの目に赤い輪が浮き上がった。

 その瞬間、あの美しい少女はとてもかわいい小さな子供になっていた。

「パパ、抱っこ」

 アンジェラがマリアンジェラを抱っこして言った。

「私が26歳の時の子供だ。今3歳だ。」


 トルレスはいつの間にか、撮影現場の近くのベンチに座ったままうたたねをしていた。

『はっ、私はここで何をしているんでしょう?』

 彼が周りを見渡すと、ちょうど撮影機材を片付けているスタッフがいた。

 ちょうど、撮影も終わり、ねずみワールドの開場の時間になろうとしていた。

 そして、少し離れた売店で、開店と同時にアイスを注文して食べているプラチナブロンドの小さい子供とアンジェラを見つけた。

「はぁっ、夢ではなかったのですね。」

 そこにライルとリリィとミケーレも合流して5人で楽しそうにアイスを食べている。

『何と美しい家族だ。そして、私は今何と幸せな気分なんだろう…。』

 後日、出来上がったCMの動画を見て、またしても感動のアゲアゲ効果を実感するトルレスだった。


 CMがTVとネットで公開された後、ねずみワールドの入場者数は跳ね上がり、そこで結婚式を挙げるカップルもどんどん数を増やして行った。

 その後、アンジェラのところに事務所を通してねずみワールドの年間パスポートが5人分届いた。

「あのおじちゃん、気が利くね。」

 マリアンジェラがアンジェラに言った。

「そうだな。マリーのことがすごく気に入ったらしいからな。」

「うふふ、そういうのうれしいね。」

「そうか、今度はマリーも歌うたってみるか?マリーのことが好きなファンがいっぱいできるぞ。」

「え?お歌うたったら、ファンできるの?」

「あぁ、そうだぞ。」

「いいね、それ…。」

 アンジェラ社長の甘いささやきにのせられそうなマリアンジェラだった。


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