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366. 衝突で受けた傷

 7月7日、水曜日。

 昨日見ることが出来なかった宇宙センターの展示を見るため、子供達とアズラィールと左徠、そしてリリアナとアンドレとライルが出かけて行った。

 リリアナとアンドレの赤ちゃん達は今日もベビーシッターのお世話になっている。


 アンジェラとリリィは昨日のこともあり、一度家に帰って絵本の内容が変わっていないか確認することにした。

 アンジェラを連れて家に転移する。

 アンジェラの書斎に置かれている絵本とミケーレがいつも読んでいる紺と赤の表紙の二冊を二人で確認することにした。

 気になるのは、『星降る夜の天使たち』だ。アンジェラがパラパラとめくる。

「確か、最後は灰色の岩のようなものが描かれていたな…。」

 そう言って開いたページは、そのままの灰色の岩の様な物が描かれているが…少し背景が変わっていた。前回見た時の写真をスマホでアンジェラが確認している。

「リリィ、見てみろ。背景が白かったのが夜空になっている。」

 深い藍色と黒で塗られた夜空にまるで流れるように岩の周りに動きの軌跡が描かれていた。

「飛んでるみたいになったね。」

「そうだな…。」

 リリィがページに触るとページが白く光り、文字が浮き出た。

『悪の化身がやってくる』

「うわっ。」

 リリィが慌てて手を引っ込める。アンジェラは次のページを開いた。大きな岩を頭にした大蛇が夜空の上で口を半開きで飛んでいる姿だ。

 その頭の先には月が描かれている。

「やっぱり月にぶつかっちゃうんだ。」

 恐る恐るまたページに触る…。ページがまた白く光り文字が浮き出た。

『このままでは、この地球ほしが死の星となる』

「ちょっ、ヤダ…やっぱりこのままじゃだめなんだわ。はぁ~。」

 アンジェラが次のページを開いたがそこは白紙だった。

 アンジェラは変わっていた2ページを写真に撮り、リリアナとアンドレ、そしてライルに送った。その後で印刷し、封筒に入れた。そして別の便せんに手紙を書き始めた。

『ディア ブラザー

 二人とも元気にしているかい?

 こちらでは、リリィが未来に飛んでしまい小惑星の衝突を体験してしまった。

 その時の情報から小惑星の軌道が変わり、月に衝突すると考えられる。

 今のところ手立てはない。

 衝突した場合、月がいくつもの破片になり地球に衝突し、津波や、破壊が起き陸地の生命体は生存が不可能なほど打撃を受けることになりそうだ。

 絵本の更新されたページと共にお知らせしておくよ。

 アンジェラ・アサギリ・ライエン 2027.7.7』

 サラサラッときれいな字で書き終わると、封筒に入れ、封蝋で封をした。

 封筒の表に『ブラザーアンジェラへ』と書き、さっきの大きい封筒に入れると、スタスタと寝室を経由してクローゼットを通り過ぎ、倉庫の中へ入って行く。

 私は、アンジェラの後をまるで子供のようにちょろちょろとついて回るのが精いっぱいだ。


 封筒を例の絵画の上に置き、そのまま踵を返して戻ろうとするアンジェラとぶつかった。

「おっと…。」

 そう言って私を支えてくれるアンジェラ…。

「大丈夫か?」

「うん、ごめん。」

 そう言った時、すかさず私を抱き上げて運んでくれる。

「アンジェラ、あったかい。」

 自分からも抱きついて思わず口からそんな言葉が漏れてしまった。

 アンジェラの顔を見上げると、すっかり獲物を狙っている猛獣の目になっていた。

 クローゼットを通り抜け、寝室のベッドの上に置かれた。

「ん?」

 アンジェラに押さえつけられてたくさんキスをされる。

「むぐ…。」

 変な音が出てしまった。

「イヤなのか?」

 アンジェラが悲しそうに言った。

「そ、そんなんじゃないよ…。ここ明るいから…ユートレアに行こ。」

 アンジェラは嬉しそうに頷いた。


 二人でユートレアに転移したが、ユートレア城の王の間で、不思議なことが起きた。

 王の間は窓があるが、二重に遮光性の高いカーテンが引かれ、中は明かりをつけなければ昼間でもかなり暗い。

 アンジェラがリリィの髪に指をかけた時、リリィの体がうっすらと光のベールに包まれたようになった。

「ん?なんだ、リリィこの光は…。」

「へ?いや、わかんない。」

 光はとても美しく、アンジェラの心を揺さぶった。

「あぁ、リリィ。私は、私は…。」

『バタッ』とアンジェラがリリィの上で気絶した。まだ何もしてないのに…。

 スースーと寝息をたて眠るアンジェラを横目で見ながら、リリィは自分の体の違和感を感じとった。そう、どこかが変なのである。

 それは、この光に関係していると思った。

 アンジェラのポケットからスマホを出してライルに電話をかけた。

「ライル、ちょっと来てくれない?今ユートレアの王の間にいるの。」

「リリィ、それって…見ても平気なヤツ?」

「うん、平気だから来て。」

 一分もしないうちにライルが転移してきた。


「どうした?」

「アンジェラが、私から光が出てるって言って、その後気絶した。」

 ライルがアンジェラを確認するが、悪いところは無さそうだ。

 次にライルは、リリィの方を見た。

 じーっと見つめていると、確かにジワジワと体の周りにうっすらと光の膜の様な物がにじみ出ているように見える。何かと思い、リリィの腕を持ち上げたり、背中の方に回ったりして確認してみたが、特に変わった感じはしない。

「なんだろうな…。」

「さっき、アンジェラが私の髪に指をかけた時にアンジェラが寝ちゃったの。」

 うわ…なんだよ。やっぱりそう言うことしに来たってことか…。内心恥ずかしいと思いながらも、なるべく顔に出ないようにしてリリィの髪に指をかけてみる。

「ん?」

 ふわっと髪が揺れ、リリィを包んでいる光が増した。

 そして、ちょうどリリィの胸、心臓の上辺りに強烈な鼓動を感じる。

「リリィ、今ちょっとドキドキした?」

 顔を真っ赤にして横を向き小さい声で返事をするリリィ…。

「ちょっとね。」

 ライルはリリィの胸の核の辺りを念入りに見た上で言った。

「リリィ、お前の核に傷がある。そこからエネルギーが大量に漏れていると感じるよ。

 ここが暗いからわかったんだけど…。少なからず僕以外の者には影響がありそうだ。」

「え?どうしよう…。わ、私、死んじゃうのかな。」

「わからないけど、今生きてるってことは、死にはしないんじゃないか?もしかすると、生身の体に入って出られなくなるかもしれない事の原因がこれだったりするかもしれない。あと、しばらくアンジェラと仲良くしようとしてドキドキするたびにアンジェラは眠ってしまうんだろうな…。ふふ。」

「えー、それ一番やだぁ…。」

「小惑星と月に挟まれた時に傷がついたのかもしれないな。そう考えると、僕らは、完全には不死身ではないという事か…。」

 予想外のことで、自分たちの弱点が一つわかった。

 しばらく王の間でアンジェラを休ませてから家に戻り、絵本のチェックを続けるというリリィの言葉に、僕はリリィの頭を撫で、無理するなと言い残し、フロリダのマリアンジェラのいる場所に戻ったのだった。

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