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363. 未来を知るヒント

 今のは一体???

 私は慌ててフロリダの宇宙センターに行った。

 海に面したその場所は、すでに跡形もなく海の底に沈んでいた。いや、津波で破壊され流されたというべきか…。

 いたるところで大きな砂煙が上がり、山に近いところでは火災が起きている。

 そして海に近いところでは、信じられないほどの高い波が陸地に押し寄せすべてを破壊しつくしていた。

「何?なんで?やだ…やだよ…こんなの。」

 私はイタリアの家に転移した。そこは、もう地形が原型を留めず、家があった場所も無くなっていた。

「あ、あぁ…アンジェラ…。私…もう生きていけないよ。」

 最後の望みと思い、日本の朝霧邸に転移した。そこにも津波は達していた。

 家など、どこにあったのかもわからぬ状態だ。

 日本は殆どの土地を失い、富士山の一部や高い山の尾根などだけが海から出ている程度だった。


 私は封印の間へ行った。

「ミケーレ、マリー、アンジェラ…。」

 三人は外傷はないが意識を失った状態で石座に座らされている。

 何?何でこんなことになっているの???

 アンジェラの唇にそっと口づけた。

 アンジェラから記憶が流れ込んでくる。

 その記憶によると、2029年4月13日の朝のネットニュースでアポフィスが軌道を変え、月への衝突の可能性が拡大したと発表されたとある。

「月…?」

 そして、アンジェラはライルに頼み、家にいた皆を封印の間へ避難させ、何が起きても悲しまぬようにと、ライルが皆の意識を刈ったのだ。

 ここは、2029年4月13日…。私は未来に転移し、まさしく星降る夜を体験したのだ。

 私が体を持たない状態であったが故、今こうしてこの状況を確認できている。

 それは、元の時間に戻って、このことをどうにかしろという事なのだろうか…。

「ライル…。なぜ、ライルがここにいないのか…。なぜ、私の体がここに無いのか…。」

 謎が多いが、私はここに留まらず、元の時間軸に戻り、対策を練るべきではないのか…。


 家族が無事であったこと、でも他の親族の場所には転移できなかったことなど、どう考えても世の中の殆どの人間や動物が死に絶えるか、壊滅的な被害を被るこのディザスターを、私が知ったところで、どうにかできるものなんだろうか?

 左徠やアズラィール、お爺様、お婆様、そして父様、母様…徠神、徠央…、ニコラス…、う、ううっ。もっと私がちゃんとしていれば、こんなことにならなかったのに…。

 私は自分を責めた。

 まだ起きてもいない事だとわかってはいても、責めずにはいられなかった。

 心が折れそうになった。

 その時、優しい金色の光の粒子がほのかに光り、実体化してライルが現れた。

「ラ、ライル…。」

 泣きながら縋り付く私に、ライルは言った。

「リリィ、2年もの間、どこに行っていたんだ。皆、ずっと心配して、悲しんで、そして…。」

「え?何?なんなの?」

 ライルは唇をかみしめながら言った。

「リリィをあきらめるために、体を埋葬した。」

「わ、私の体…どうして?ここに置いておけば、戻れるはずじゃ…。」

「半年待ったんだ。でもリリィは戻らなかった。皆、君を諦める必要があったんだ。」

「でも、私、さっき2027年のフロリダから来たばかりだよ。どこにも行ってない。

 今すぐ帰れば、大丈夫だよね?」

「本当なのか?おかしいだろ…。」

「信じて、ほら、見て。」

 私はライルにおでこをくっつけた。

 ライルの顔が恐怖で歪む。

「リリィ、小惑星の直撃を受けたのか?」

「そうみたい。でも、音も何も聞こえなくていきなりだから、対応できなかった。

 ねぇ、これから帰るから、絶対に体を埋葬したりしないで。」

「今の僕に言っても無駄だ。あれは過去に起こったことだ。」

「じゃあ、もしかして、体に私が入ってることに気づかないで埋葬したってことも考えられない?何らかの事情で…。」

「でも、埋葬したところで、消滅なんかしないはずだろ?」

「あ…、やだ…。私の体、絶対手放さない。私、帰る。」

 そう言って、私は元居た時間軸へと帰ったのだ。

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