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350. 居眠りしてました

「リリィ!リリィ!」

 リリアナが普段見せないほどの動揺した様子でリリィの体を揺さぶっている。

 ガクッとリリィの体が力なく崩れる。

「リリアナ、見て!TVに山小屋の天使が…。」

 ミケーレの言葉に皆TVを見ると、アンジェラの頭の辺りめがけて落下していたドローンを左腕に当て受け止めているあのプラチナブロンドのリリィが映っていた。

 表情一つ変えず、腕に食い込んだドローンを右手で外し、そっと地面に置くと、アンジェラを愛おしそうに見つめ、スッとアンジェラの頬を撫で自分の左腕の傷を隠すように押えると翼を広げ、フワッと上昇した途端、金色の光の粒子になりその姿は掻き消えた。

 同時に、ソファの上でガクッと崩れた体勢のリリィが金色の粒子を帯びキラキラと光ったと思いきや、がばっと起き上がり言った。

「あっ、居眠りこいた。ひぇ~、いちばんいいとこだったのに~。ぶぅ。」

「ママ?」

「マリー、この動画って後からでも見れるやつかな?」

「うん、ネットの方なら見れるんじゃない?」

「あー、良かった。居眠りこいてて見てなかったとか言ったら怒られちゃうよね~。」

 リリアナとアンドレがリリィの顔をまじまじと見て言った。

「ねぇ、自覚してないってことよね?」

「そうだな…。」

「え?なになに?リリアナ、アンドレ…何が言いたいわけ?」

 ミケーレがタブレットで、配信された映像を再生してさっきのところまで進めてリリィに渡した。

「ミケーレ、気が利くぅ。」

 そう言って受けとって再生したリリィだったが…顔がだんだん赤くなってきた。

 百面相みたいに、ぎょっとしたり、白目がちになったり、固まったりした後でポツリと言った。

「これ…って私だよね?」

 みんなガクッとなった。リリィは居眠り中の夢の中で同じ光景を見ていたらしい。つーか、それは多分、現実の転移先での出来事だ。無意識に体を置いて行ったのだ。

 不幸中の幸い?か、普段のリリィの姿ではなく、無意識に体を抜けて行ったせいか、上位覚醒後のデフォルトの姿であるプラチナブロンドの姿になっていたようだ。


 TVではその後も数分間放送は続いたまま、現場の混乱、ドローンから上がる黒煙、駆け寄るスタッフとライル、そして、放送の終了までしっかり配信されちゃっている。

 当然のことながら、視聴者から警察への通報などが殺到した。

 表向きは『ドローン故障による放送中の事故』、しかし視聴者の本当の関心は、『リアル天使・アンジェラ様に守護天使降臨』だ。

 この騒動の後、長い期間このことは世の中を騒がせることとなる。


 予定ではライブ終了後2時間ほどで解放されるはずだったアンジェラとライルは、警察署へ連れて行かれ事情聴取されたのだ。


 しかし、どうしたって説明なんかできないし、本当の事を言うわけにもいかず、アンジェラは『奇跡が起きたのでしょう。』『私は天使様に愛されているのです。』など、夢の様な言葉を繰り返すのみで、核心には触れないようにした。


 深夜になってから家に戻ってきたアンジェラとライルに、コソコソと近づくリリィだった。

「リリィ!」

 やっべ、怒られる…。と思ってシュンとしながら顔を上げると、アンジェラは優しく抱き寄せ、唇にキスしてくれた。

「リリィ、愛しているよ。」

「アンジェラ…。」

「怪我しなかったのかい?」

「あ、うん。体は家に置いてっちゃったみたいで。だから大丈夫。」

 アンジェラが言うには、運営側がすべての映像を警察に証拠として提出してしまったらしく、しばらくは騒ぎがおさまらないだろうとのことだった。


 ライルのスマホにはウィリアムからのメッセージがいくつか来ていた。

『ライブ見たよ。君の歌、最高だ』

『君の他にも天使がいるとは驚きだ』

『フロリダの僕のお爺様が経営するリゾートに滞在してくれないか』

 相変わらず、しつこいやつである。

 しかし、偶然とは恐ろしいもので、翌日から家族全員でフロリダにバカンスに行く予定となっていたのである。もちろん、滞在はアンジェラが経営する高級ホテルのスィートルームだ。夏だから、プールで遊びたいというマリアンジェラの希望を叶えたのである。


 バカンス直前の長い一日が終わった。

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