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35. 工作員

 家に着いた僕らは、まず動物病院の方から盗聴器や隠しカメラがないかを調べることにした。

 今日は、動物病院は休みで、母様はここにはいない。はずだった。

 ところが、ドアを開けようとしたとき、中から話し声が聞こえた。

 僕は父様と徠人を止めて、アダムに教わった遠くまで音が聞こえる能力を使ってみた。

 母様の声に間違いない。誰かが訪ねて来ているのか?

「明日、はい。夕食のスープ。はい。承知した。」

 これは、思いっきりやばいことを聞いてしまったと思う。

 二人に、すぐ家の方へ行くように促す。

 そして、玄関に入ってからさっき買ったスマホで二人にメッセージを送る。

「明日の夕食のスープに何か入れるつもりみたい。」


「女が家に戻ってきたら動物病院の盗聴器調べに行くぞ。」

「わかった。」

 父様にはつらい時間だったと思う。僕だって自分の母親が何かの陰謀に関わっているなんて思ってもいなかった。


 僕たちは、家に戻り、何もなかったように夕飯を終え、一旦各自の部屋に戻り父様は部屋に母様を引き留めるため、家に残り、僕と徠人は動物病院に行き、盗聴器の探査、そしてカメラの設置を行った。

 作業後すぐに家に戻り、入浴を終え何事もなかったように部屋で過ごす。

 久しぶりに僕は日記のノートを開いた。

 しばらく更新していなかった。徠人を見つけてからのいままでの経緯を更新する。

 さて、明日の夕食でターゲットになっているのは誰なんだろう。

 本当に母様が工作員で徠人の誘拐に一枚噛んでいるんだろうか。

 その時、スマホに動態感知の通知が来た。

 動物病院で何か動きがあったということだ。

 僕は徠人の部屋に行き、二人でカメラに映るものをリアルタイムで見る。

「え?」

 僕は思わず驚きの声をあげてしまった。

 母様は、そこで、両眼を見開いたかと思うと、瞳が消えた。

 白目だけになった母様は何者かわからぬ者と意識の上でやり取りをしている様だ。

 スマホや盗聴といった物ではなく、精神に作用する能力を使用したと思われるやりとりである。

 まじか?徠人の懸念が現実となった。

 母様は明日の夕食後に応援を寄こすように言っていた。

 ターゲットは僕だ。徠人はもう使えないと言っていた。

 何に使うのかは疑問なのだが僕たち一族を何かに利用するつもりでいるのは確かだ。

 そして、徠人が言っていたおじい様の弟は病死だと言われているが埋葬された場所が不明という点、とにかく引っかかる。

 僕は徠人を見た。

 ちょっとホラーな映像を見ているというのに、少し口元に笑みを浮かべふっとゆるんだ空気を纏い、僕に目線を向ける。あっ、頬が熱くなる。胸が熱くなる。

 視線を外したいのに外せない。どうしたのだろう、僕は…。

 徠人が急に僕の肩を抱きささやいた。

「大丈夫だ。全部うまくいく。」

 そこで、僕は意識を手放した。


 何だか息苦しくて目が覚めた。

 僕の部屋のベッドだ。

 あぁ、徠人が運んで来てくれたのか。

 嫌なものを見てしまった。

 母様は僕たちの命を脅かす工作員である可能性が高いのだ。

 しかも、あの通信方法。あれは、能力を使ったものだ。

 ネガティブな思考ばかりが自分の中でうごめき、大きくなっていく。

 あぁ、僕ってこんなに弱かったっけ?そう思った時だ。

 背中に暖かい物が…。

 あぁ、またかよ。

「あんた、どうして僕のベッドに毎回全裸で入ってるんだよ。」

 徠人が僕の背後で寝息を立てる。

 僕の声に反応したのか、少し目を開け徠人がこちらを見る。

 あぁ、何だよ、その目つき。

 僕は、頭の中では拒絶しながらも、徠人の魅惑にどんどんと堕ちていく。

「あんた、やっぱりなんか変な能力つかってるんだろ?」

「かわいいね、ライル。ふふっ。そんなものはないよ。愛だよ。ただの愛さ。」

 そこで、僕の意識が途切れた。


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