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348. 宮殿でのライブ(1)

 7月2日、金曜日。

 ここ2週間、仕事を意欲的にやったので、明日から2週間は空けてあるというアンジェラの話を今朝聞いた。

 どうも計画的に色々と動いているらしいが、そのうちの一つが今夜のシークレットライブらしい。休み前の最後のお仕事だと、これも、さっき聞いたばかり。

 出演はアンジェラがメインで、今までの楽曲をライブで配信するのだが、どうしても断れないVIP客を入れてやるらしい。どこぞの皇族もいるんだって。

 客は20組限定で、場所はスペインのとある宮殿の庭園でやるらしい。

 残念ながら、家族は今日は家で待機。セキュリティ上の理由らしいけどね。

 ちなみに、今夜のライブにはライルも最後に特別に参加させられることになっている。

 アンジェラ社長としては、自分がプロデュースしたアーティストをどうにか売りたいってのもあるんだろう…。


 午前中にスペインの指定されたホテルの会議室に移動予定となっている。

 まだ、移動前の自分の時間をまったり読書をして過ごしている時、アンジェラが部屋に入ってきた。

「ライル、これが今日の衣装だ。先に着ておいてくれ。」

 ブラウスのような少しだぼっとした白いシャツと黒い綿パンだ。

 アンジェラと全く同じお揃いらしい。

「あと、出来たらでいいんだが、私の曲とライルの曲、今日はピアノ演奏と歌だけにしたいと考えている。ライルが弾いてくれないか。」

「え、じゃあ予定している曲のリストとピアノの動画か楽譜を送ってくれる?」

「わかった、今すぐ送る。」

 すぐに楽譜も動画も送られてきた。ピアノソロバージョンもあるんだ…。

 確かに庭園で演奏するなら、バンドよりピアノだけの方が雰囲気が良さそうだ。


 リリィは自分が見に行けないのを残念がっていたが、さすがに王族を含むVIP相手にわがままも言えないらしく、アンジェラもあきらめたようだ。

 念のため出発までの間、サンルームのピアノで練習をした。

 ミケーレがサンルームのソファに座って聞いている。うれしそうだ。

 二度ほど弾いて問題なさそうなので、行く準備を始めるとミケーレが僕に青い薔薇を一輪渡してくれた。音楽を聴いていて出てきたやつだ。

「いってらっしゃい。お家で見てるね。」

「うん。ありがと。じゃ、行ってくるね。」

 午前11時過ぎ、僕はアンジェラを連れて、指定された場所へ転移した。


 そこからライブの場所までは車で1時間半だ。

 ライブ配信用の機材とスタッフが乗ったロケバスと僕とアンジェラを乗せたタクシーと、主催の関係者が乗ったタクシーで移動を開始した。

 午後1時、現地へ到着後、セキュリティチェックなどを終え、宮殿の中へ…。

「宮殿?王宮だよね、ここ…。」

「そうなんだ、王宮だ。だから家族は入れなかったんだよ。」

「ひぇ~、なんだか怖いな。」

「まぁ、話しかけられることはないだろう…。機材の準備やスタッフの打ち合わせで二時間はかかるから、その間暇だったらピアノでも弾いていてくれ。」

「まじか…。」

 読書の本でも持ってくればよかったと思うライルだった。

 暇だが歩き回るわけにもいかず、アンジェラに言われた通りに撮影用に設置されたグランドピアノのところに行き、ミケーレからもらった薔薇の花を楽譜台のところに置いて、クラシックの曲ばかり、次々と弾いた。


 ピアノを弾いているときは無心になれる。周りの事は一切気にせず、ずーっと集中して弾いた。キラキラは出していないが、エネルギーはたくさん集まってきた。

 その時、少し年下か同い年くらいの女の子が話しかけてきた。

「あの…今日、ここでライブする方ですよね?」

「あ、はい一応そうらしいんですけど。僕はアンジェラのおまけでして。メインはアンジェラですよ。」

 僕の顔を見て、顔をぽッと赤らめるその子は、少し下を向いてぎゅと手を握った後でライルに言った。

「あ、あの…実は動画配信を見まして。」

「はい?」

「あ、あなたの動画を見まして。」

「あ、はい。」

「今日、あなたを呼んで欲しいってお願いしたの、私なんです。」

「え?そうなんですか…。って、ここ王宮で、そんなリクエストをできるあなたはどなたですか?」

「あの、私、ここに住んでいるシルビアです。」

「へぇ、ここに住んでいるんですね。僕はライル・アサギリです。」

「あ、あの…連絡先を交換してもらえないでしょうか。」

「え?あ、あぁ…事務所にそう言うのは勝手に交換しちゃダメと言われてて…すみません。」

「そうなんですか…わかりました。ごめんなさい。」

「いえ、こちらこそ、ごめんなさい。」

 それ以上会話は成り立たず、ちょうど開始の30分前ミーティングをするというので、僕はその場を後にした。


 ミーティングが始まり、動きの説明を受けた。僕とアンジェラしか演奏しないので、最初から指定位置、僕はピアノの前、アンジェラは中央の椅子の前にスタンバって立ったまま始まり、僕がピアノの椅子に座ったら、5秒待って演奏を開始するとの事だった。

 曲の順番は先にアンジェラから聞いていた通りで、アンジェラが5曲、僕が1曲、そして最後にアンジェラの翼を出す、というか出ちゃう曲でしめて終了、とのこと。

 撮影には、3台の有人カメラと上空から撮影するドローンが3台用意されているとの事。

 場所は歴史あるところだけど、撮影に関しては少しチャレンジしてそうな感じ。

 運営はどうやらこの国の国営放送らしい。

 全て運営側の希望に沿っているらしく、アンジェラは挨拶も何もしないで、ただ歌い、終了というパターンだそうだ。

 ふぅん、国営放送だったらクラシックの演奏会とかの方がよかったんじゃないか?と内心思いながら、言われた通りピアノの椅子の前に立つ。

 スタッフが僕の髪を少し直してくれた。そう言えば、何もしないでそのまま来た。

 一度証明が全部落ちる。そして、撮影用のドローンが上空へ上がって行った。

 いよいよ、ライブが始まる。

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