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347. 進化系ライルの在り方

 6月16日、水曜日。

 アンジェラは思い立ったら結構行動が早い…。

 2日しか経っていないのに、今日は貸し切った東京のスタジオとライブハウスで録音と撮影をすると言われた。

 気に入らないのは、どうして僕の撮影に家族が全員ぞろぞろとついてきているのかという事だ。

 リリィだけならまだわかるが、ここになぜリリアナとアンドレ、しかも赤ちゃんは乳母に任せて来ているらしい。そして、リリィとマリアンジェラとミケーレ、そしてプロデューサーでもあるアンジェラがいる。

 いくら、アンジェラの事を知っているバンドの人たちでもアンドレの容姿とか、リリィとリリアナを見ておかしいと思わないのか???

 まぁ、それはさておき、録音は至ってシンプルだった。スタジオで先に録音されている音に合わせて指示通りに歌うのだ。

 しかし…正直に言うと僕の歌はリリィほどではなかったようで…結局途中、裏に呼び出された時にリリィに唇を噛まれ、融合した状態で録音を終えたのだった。

 まぁ、リリィが歌ったわけではない…。けど…、これって実際僕なのか…少し疑問ではある。

 融合中は姿を現わしている方の人格が優先されるため、まぁ、これはこれでアリなのかとは思う。しかも、リリィからチューされて少し高揚気味ではあった…。これは内緒だが…。


 撮影の間も、融合したまま行った。

 僕の中にリリィがいると、セクシーに見えるのだとアンジェラが後でこっそり教えてくれた。

『うぅむ…。複雑だ。』

 この日の撮影と録音を終えた時、リリアナが言った。

「ライル、マジ最高!イケてる。売れる。リリアナが保証する。だから徠神のお店でご飯食べて帰ろう。」

「そ、それが目的の同行かよ~。」

 アンドレが薄目で笑った。知ってたのか、お前~。


 結局午後8時過ぎまで、リリアナとマリアンジェラの爆食いは納まることなく続き、すでに分離した僕とリリィは向かい合わせに座り、時々アンジェラとリリィのいちゃいちゃにいらだちながらも平和にその日を終えたのだった。


 翌日、今度はマリアンジェラとの撮影だった。

 海のシーンを多めで撮影したため、家の裏手の砂浜で数時間を過ごした。

 というか、遊んであげた…。大きい14歳の姿に変化したマリアンジェラは、こう言っては何だが、ヤバい。かわいい。美しい。三歳児じゃなければ本当に惚れそうである。

 これは、きっとアンジェラとリリィの遺伝子のなせる業なんだろうけど…本気で最強の美しさだ。よく考えればリリィの上位覚醒後のプラチナブロンドの姿と殆ど違わない容姿なのだ。母親に似たのか…。

 まさか、生まれた時から上位覚醒してるとか?ってないよな?


 色々と思いを巡らしながらも、その日はいっぱい詰め込まれた撮影シーンをこなすだけで時間がどんどん消化されていくのだった。


 更に翌日の6月18日、金曜日。

 僕にはなんの断りもなく、楽曲の動画が配信された。

 ネットでは僕の名前がトレンドの上位に入り、その他にも『ライルと共演誰?』、『歌の想い人は誰?』、『アンジェラを蹴落としそうな新星登場』などなど、メディアは好き勝手に

 僕を話題の種にしている様だ。

 アンジェラがプロデュースしてるって知らないのか???

 まぁ、いいだろう。今後どうなるか見届けてやろうじゃないか…。あまり売り出されている当事者としての自覚はないが…。


 その日の夕方遅い時間に、僕のプライベートにメッセージが届いた。

『ライル、やばい。僕、本気で君の事好きになりそうだ。』

 送ってきたのはウィリアムだ。やっぱりこいつはゲイなのか?

 ある程度予想していたので、リアクションは万全だ。

『僕はそういう趣味はない。あきらめろ』

 すぐに返信が来た。

『そんなキツイところもいいね。』

 ウィリアムはただの変態だ。


 大したことのないモデルとしての仕事や、CMの仕事がその後も週に1,2回続いたが、やはりミュージックビデオの影響が大きかったようで、思った以上に仕事が増えてきた。

 アンジェラは動画配信だけではなく、CDも発売するといい、ジャケットの撮影も予定に組み込まれた。

 その撮影では僕の姿になったリリィと直接向かい合わせに座って目を見つめるシーンがあった。これって…大丈夫なのか?合成でもなんでもない、本物の同じ人間が向かい合わせってヤバいよな。

 しかも、リリィの瞳を見ると、例えそれが僕の姿になっていようと、僕は腑抜けになってしまう。

『あぁ、僕のものだ…。』

 そう言った感情があふれて我慢がきかなくなるのだ。


 ジャケットはすごく魅力的に出来上がった。

 撮影は上半身裸で行われ、表には僕の顔のアップ写真の顔半分を拡大されたもの…そして、ライルになっているリリィが顔をくっつけて逆さまに同じポーズをとる写真だ。


 そして、僕は、いつの間にかそういう撮影の時間を楽しむようになっていた。


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