表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
340/696

340. アスタラビスタ、ブラザー

 絵本のチェックがすべて終わり、いよいよあっちの世界のブラザーアンジェラとJC瑠璃リリィが自分の世界に帰る時間になった。

「夕飯も食べて行けばいいのに…。」

 そう言ったリリィにブラザーアンジェラが言った。

「もう十分に色々と頂いたよ。本当に感謝している。」

 そう言って、握手をした。ライルにも、アンジェラにもアンドレにも握手をし、頭を深々と下げた。

「ブラザー、できれば窮地に追い込まれるようなことは無い方がいいのだが、もしまた困ったことがあったら、私たちにできる事ならお手伝いするよ。」

 アンジェラがさわやかに言ってガシッとハグをした。

 その横でマリアンジェラが呟く。

「アスタラビスタ、ブラザー。」

「ん?」

 ミケーレは首を傾げる…。アンジェラだけが苦笑いだ…。どこから仕入れてきたネタなんだろう?


 あっちの世界の二人はそのまま倉庫の絵画の布をめくって自分たちの世界に戻って行った。

「なんだか変な気分。寂しいね。」

 アンジェラと二人で見送っていたリリィがそう言うと、アンジェラがリリィを抱き寄せた。

「そうだな、ちょっと寂しいな。」


 今日は日曜日だが、明日からまたライルの学校も始まる。

 そんなにのんきにはしていられない。もうすぐリリアナの出産も控えている。

 アンジェラとリリィは、少し前から準備をしていたのだが、双子だと聞いていなかったため、赤ちゃんの洋服などを慌てて手配したり、子供部屋にベビーベッドをもう一台追加したりと大慌てで準備をしていた。


 夕方になり、最近は忙しくて直接来られなかったアントニオさんが来てくれた。

 この日は彼が腕を振るったイタリアンで夕飯を終えた。

 アントニオさんは食後もミケーレとマリアンジェラと遊ぶのが楽しみで仕方ないらしい。

「アントニオ、すごく助かるよ。ちょうど、来客が帰ったんだが、もうすぐリリアナの出産を控えていてね、準備がギリギリになってしまって…。」

 アンジェラが、アントニオさんにお礼を言っていた時、ミケーレがあの絵本の一冊を開いてアントニオさんに見せた。

「ねえ、ねえ、おじちゃん。これ見て、すごいんだよ。うちの家族が絵本に出てくるの…。」

 そう言って見せたのは、真っ赤な表紙の『星降る夜の天使たち』だ。

「あ、おや?どこかでそう言った種類の絵本を私も見たことがありますよ。」

「アントニオ、それはどこだ?」

「えーっと確か…。あ、そうそう。ユートレア城の内装をリノベーションしたときに、王の間のベッドの土台の中に隠し扉の様な物がありまして、そこから出てきたんです。」

「それは、いつ頃だ?今どこにある?」

「あれは、もう40年ほど前ですかね。もっと経ってますかね…。城の冷暖房と水回りを近代的に大改築した時ですから…。確か、その時にアンジェラ様の指示を伺って、元の場所に戻したような…。」

 え?いっつもその絵本の上で、いちゃいちゃしてたってこと?

 リリィとアンジェラは慌ててユートレア城の王の間に行って王の間のベッドのシーツやマッドを全部よけて確認した。

 確かに、隠し扉の様なスライド式の薄い収納はあった…しかし、絵本は見つからなかった。

 めちゃくちゃにしたまま家に戻り、アントニオさんに再度聞く。

「絵本はなかったぞ。どこかに移した記憶はないか?」

「さぁ…私はその一回だけしかそのことを聞いてはおりませんな。当時のベッドメイキングなどをしていた者に聞いてみましょう。」

 そういうと、アントニオは何カ所かに電話をかけ始めた。

 三本目の電話でアントニオの顔に笑みが浮かんだ。

「お、そうかそうか、わかった。ありがとう。」

 そうアントニオが言い、スマホを切ってこちらに向き直って言った。

「結局、こちらにお運びするように言われたそうで、書庫の中ではないかと言っていますよ。私がお探ししましょう。紫の表紙だったと思います。」

 そう言ってアントニオは書庫へと入って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ