339. 絵本の内容(6)
タイトルのない白い絵本が本当にこれで正解かどうかはわからないが、面白いことが起きるものだとアンジェラは内心ミケーレが考えて行動したことに感心していた。
そして、もう一つ、この絵本それぞれに関係のある者が触ると話が進んでいくのではないのか…とも考えていた。
アンジェラはライルに聞いた。
「ライル、お前はあの羽を集めていたことを覚えているか?」
「いや、自分で集めたことは覚えていないよ。最近それを集めている小さい時の僕自身を見ていて知っているだけだ。」
「そうか…。この白い表紙の絵本に触ってみてくれないか?」
「あぁ、うん。いいけど。」
ライルがミケーレの手から白い絵本を受け取った。
絵本全体が光り、表紙に文字が現れた。
『天使の羽のコレクション』
「あっ。すごい。ライルが触ったら、タイトルが出たよー。」
ミケーレが興奮してアンジェラの膝の上でぴょこぴょこ上下する。
「あぁ、そうだな…。すごいな。この羽のコレクションは元々ライルがやっていたことだからかもしれないな。」
「しゅっごーい。中も見せて~。」
マリアンジェラもミケーレの脇の間から頭をぐりぐり出して覗こうとする。
ライルがミケーレの前に絵本を置き、ページをめくった。特に先ほどと変わった様子はない。
「ページの中を触ってみてくれないか?」
アンジェラに言われて紙をべたべたと触る。
ページの途中からキラキラと光の粒子があふれ出た。
「おーっ。」
ミケーレが読み上げる。
「いやしのてんしは、あいするかぞくのはねを一まいずつあつめました。パパー、字が出た。」
「ミケーレ、すごいな読めるのか?」
「うん、絵本読めるように練習してるの。」
次のページも触ってと言われ、アンジェラの羽が描かれているページとその横の空白のページを同時に触る。
「青いキラキラだ…。」
マリアンジェラが小さい声で言った。青い光の粒子があふれ出た。
羽の横に文字が浮き出た。『幸福の天使』
「パパ、これ読めない。何の天使?」
「幸福の天使と書いてあるぞ。」
「しゅっごーい。パパは幸福の天使なんだー。」
そして、空白のページには、次の文章が書かれていた。
「君がこまったどんなときにも、かけつけられるように。」
「ほぉ、なんだかドキドキするな…。」
「ねぇねぇ、次のページはマリーのだよ。」
ライルは同じようにマリアンジェラのページを触った。白い光の粒子が眩しいほどあふれ出た。そして、『平和の天使』という文字が出た。
「へいわのてんしだって、すごい。マリーかっこいいね。」
ミケーレが言うと、マリアンジェラは少しはにかんで、「かっこいいの?」と言った。
「君が辛い想いをしないように。」
空白のページに出た言葉は、アンジェラが読んだ。
更にページをめくる、次はミケーレの羽のページだ。
ライルはページを触った。同時に紫色の光の粒子があふれでた。
「きれいね。」
マリアンジェラが言うと、ミケーレも頷いた。
『情熱の天使』という文字が浮き出た。そして空いてるページには『君の想いが叶うように』と文字が浮き出た。ミケーレは首を傾げてアンジェラに聞いた。
「じょうねつって何?」
「そうだな…何にでも一生懸命取り組む気持ちだな。」
「ふぅん。よくわからないけど…。」
「あれじゃない?ミケーレはママのことが大好きで超マザコンじゃん。一生懸命にママに取り組んでるから、そういうことじゃない?」
マリアンジェラの言葉に、『BINGO』と内心思ったアンジェラだった。
「まぁ、そういう感じだな。」
「そっか、僕、ママに一生懸命だもんね。それが『じょうねつ』かぁ。」
ニヤニヤするライルと苦笑いのリリィだった。
次はリリィのページだ。
しかし、ライルが触っても何も起きなかった。みんな一斉にリリィの方を見る。
「え?私?触れって?」
皆無言で頷く。リリィがページを触る。だが、何も起きなかった。
アンジェラが続いて触ると、信じられないくらいの金色の光の粒子が机いっぱいにあふれ出た。『愛の天使』という言葉が浮き出た。そして空いているページには、大きくて真っ赤なハートマークが…。
「うわっ、はずっ。」
そう言ったのはライルだ。アンジェラとリリィが赤面…。
次はアンドレのページだ。ライルが触ると何も起きなかった。皆リリアナを見た。
リリアナは大きなお腹を抱え、ふぅとため息をつきながら、ページをさわさわと触った。
青い光の粒子があふれ出た。
『正義の天使』、『君の正義を守るために。』
「確かにね、王としてのアンドレをリリアナが支えるって感じだよ~。」
そう言ったのはリリィだ。
アンドレは嬉しそうだ。リリアナは普段通り、自信満々な顔で頷くのみ。
次はリリアナのページだ。
「これ、どうなると思う?」
ライルが面白半分に言った。
「アンドレが触ったら変わるんじゃない?」
リリィがそう言うと、アンジェラは言った、
「いや、リリィじゃないのか?」
最初はライルが試した。何も起きなかった。次にアンドレが触った。
金色の光の粒子があふれ出た。
『愛の天使』
「あ、ママと同じだ。」
ミケーレが言った。でも…その続きが…《アンドレ専用》。
「マジか…。」
ライルの半笑いとともに発せられた言葉に、アンドレ渾身のガッツポーズ。
空白のページには、黒い大きなハートマークが…。
「ぶっ。」
吹き出したのは、ライルとリリィ、さすが双子同時である。
「だいぶ浄化されたと思ったんだけどな…、まだ黒いのかな?」
アンジェラが妙に本気のコメントをする。それ、それ、言っちゃダメなヤツ…。
ライルとリリィの目くばせに気づかず地雷を踏むアンジェラだった。
『パァン』といい音がしたかと思ったら、リリアナがその辺にあった雑誌でアンジェラの頭をぶっ叩いた。
「失礼ね。」
そう言ってリリアナは怒ってどっかに行ってしまった。アンドレものこのこそれについてゆく。おぉ…完全に尻に敷かれている…。どうしてこうもアンジェラとリリィの関係とは真逆なんだろうか…。面白すぎる。あくまでもライルの意見である。
ぶっ叩かれたアンジェラは、苦笑いでごまかしていたが…本当に寛大な人だ…。
そんなこんなで、絵本を確認する時間は終わったのである。
アンジェラは関係ないかもしれないが、白い絵本のページも印刷してブラザーアンジェラに渡した。




