318. あっちのアンジェラの捜索(2)
ライルは古本屋の店員に促されるまま別の部屋のドアの前に立った。
店員がドアを開けると、ドアの先には暗くて何も見えない空間が広がっていた。
それでも一歩前へ出た時、いきなり後ろから突き飛ばされたのだ。
「あっ」
という声が思わず漏れた。その先には床が無い大きな穴が開いていた。
瑠璃から借りたスマホがボケッとから飛び出し『ガツン』と何かに当たった。
ライルはとっさに翼を出し、そのまま空中に留まった。
あまりにも暗く何も見えない。
とりあえず、一番下までそーっと飛びながら下りてみる。
底はあった。下は土だろうか…。手探りで壁に触る。壁というよりは、やはり土でできている穴と言った方がいいのか…。
丸い穴であれば、ぐるっと一周したら終わるのだろうが、ライルは少し考えてから動きを止め耳を澄ました。
『ドクン ドクン ドクン』と心臓の鼓動が一人分、聞こえてきた。
眠っているのか、ゆっくりとした息遣いも聞こえてくる。
この空間に生きている誰かがいることは確かだ。
エネルギーをキラキラにして体の表面を覆うと、周りの様子が少し見えてきた。
よし、大丈夫、スマホを探そう。
僕は足元に注意を払いスマホを探す。あった。瑠璃のスマホだ。
通話は衝撃で切れ、しかも穴の中なので圏外になっている。
しかし、ライトはつけることが出来た。
周りを照らしてみると…深さは相当なものだ、20mはあるだろう。そして、直径4,5mの穴の一部に横穴が繋がり、また別の場所へ行けそうだった。バッテリーがなくなる前に先に進もう。
横穴は少しかがめば通れるくらいの穴だった。
その先に30mほど進んだところに広くなっている場所があった。
そして、そこでこちらの世界のアンジェラを見つけた。
さっきの心臓の音はアンジェラのものだった。息はしているものの、意識はない。
眠っているのかと思ったが、どうやら気絶したまま意識が戻っていない様だ。
先ほど僕がやられたように穴に落とされ、落下したのだろう。頭には大きな傷を負い。服には血がべったりとついている。よく見ると地面にもアンジェラのものと思われる血がついている。
どうにか這ってここまで来たが、気を失ったというところか…。
僕は、迷わずアンジェラを抱きかかえ、一旦ユートレア城のバルコニーで待っている瑠璃のところへ戻った。
「あ、アンジェラ…。」
瑠璃が泣きながらアンジェラに縋りつくが、僕はそれを止めた。
「治すのが先だ。離れて。」
僕は、ありったけの力で、アンジェラの傷を癒した。
意識はまだ回復していないが、それは四日もこの状態でいたのだ、出血もあり、難しいだろう。僕は、瑠璃に一度、イタリアの家に帰り、僕の世界に行くことを提案した。
「君のアンジェラはこのままにしておくより、僕の世界に連れて行って僕のアンジェラやアンドレから輸血をした方がいい。」
「いいの?」
「仕方がないだろう。」
僕はそう言って、二人をいったんイタリアの家に転移させ、倉庫のあの僕の世界への入り口を使って、僕の世界に戻ったのだ。




