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310. あっちの世界の拉致事件(1)

 お茶を出した後、僕、ライルと融合中のリリィは、アンジェラの横に座ろうと彼らのテーブルを挟んで向かい側へと移動した。

 アンジェラが急に僕の手首を掴み引っ張る。

「え?」

 ストンとアンジェラの左の膝の上に座らされる…。え?このまま話聞かされるの?ううっ。

 ここは拒否るとアンジェラがおかしな行動を取り始めるパターンなので、黙って従い、お茶をすする。

「で、どんな話なのかね。」

 うちのアンジェラの口調が刺々しい。確かに、あまりあちらの世界に干渉しない方がいいってこの前も言ってたもんね。

「あの、前にも一回来た瑠璃と書いてリリィと読む、リリィです。」

「あぁ、知っているが、つい最近も君の従妹が来てうちの妻が手を貸したはずだ。

 その時に、なるべく干渉しないようにと話したはずなんだが…。」

 うちの旦那様は家族以外には厳しい…。

「す、すまない。それは、もちろんわかっていて、私は警察の捜査を見守った方がいいと考えているんだが…。」

「アンジェラ、そんなこと言ってたら、手遅れになっちゃうじゃない!ひどいよ。」

 あっちのアンジェラとJC瑠璃リリィが痴話げんかを始めた。

「おい、痴話げんかはいいから、早く目的を言え。」

 あ…、眉間にシワ寄っちゃったよ。あっちのアンジェラが恐る恐る説明を始めた。

「実は、瑠璃リリィの母が妊娠中で、少し体調を悪くして救急搬送されたんだが、搬送先の病院から瑠璃の父、徠夢と共に行方不明になってしまったんだ。」

「え?二人とも?」

 思わず聞いちゃった。

「そうなんです。それが、今から三日前で、搬送先の病院の名前を父が電話で伝えてきたのが最後で、病院に駆けつけたらどこにもいなくて…。

 すぐに警察に届けたんですが、何も手がかりが無くて…。」

 瑠璃リリィが疲れた顔でそう言ったのだが…。うちのアンジェラが、言い返す。

「なぁ、JC。君は一度触れた人間のところに転移する能力があるんじゃないのか?」

「…。」

「あの、それが…。瑠璃リリィは私のところと自分の部屋にしか移動することが出来ないんです。」

 あっちのアンジェラがJCの代わりに代弁する。

「まじ?」

「はい…。」

 正直心の中で『つかえね~』と思う。

 うちのアンジェラが大きなため息をついた。

「それで、犯人の目星はついているのか?」

「いえ、全く…。」

 アンジェラが僕に耳打ちをするふりをして耳にキスをする。ひゃっ。膝に座らされてるだけでも恥ずかしいのに…。もぉ、そんなに仲良しの邪魔されて怒ってるのかな…。

 しばし沈黙が流れ…一つ閃いたことがあった。

「あ、そう言えば…アンジェラは知らないかな、もう5年位前にさぁ、北山先生がナイフで刺されて拉致されて、僕が廃屋になってる元ペンションに転移しちゃって、助けたことがあったんだよ。」

「あ、覚えているぞ。事件の時はいなかったが、入院先に一緒に見舞いに行っただろ。」

「そうそう、傷の治りが良くなくて入院が長引いてたから…。

 あの時の犯人って、元同僚の眼鏡かけた痩せた男でさ、そういうのあやしいよね。」

「リリィ、あれは、過去を変える前だから、実際にはこの世界では起こらなかったことになっているんだろ?」

「あ、そっか。でもストーカーや同僚は同じ人物の可能性はあるよね。

 もし、その男だとしたら、父様達の命が危ないかも…。」

 アンジェラがおもむろに嫌な顔をする。僕はアンジェラにぎゅって抱きついて、言った。

「ライルが行くよ。大丈夫、絶対死なないし、怪我もしないから。ね、行かせてあげて。」

 そう言うと、リリィの体から金色の光の粒子が浮き出るように外に出た。

「うわぁ…な、何?」

 瑠璃リリィが驚きのあまり、動揺の声を漏らす。

 アンジェラのすぐ横にライルが実体化した。リリィとお揃いのパジャマを着ている。


「マジか…。面倒だな。」

「え、じゃ私が行ってこようか?」

 ライルの反応に、リリィが言うと、ライルは苦笑いをして、「そういう意味じゃないよ。」と言った。

「ちょっと着替えてくる。」

 そう言ってライルは消え、3秒ほどで戻ってきた。

「アンジェラ、仕方ないからちょっと行ってくるよ。三日経っても戻って来なかったら、あっちの世界にリリィをよこして。体は置いてきて。いい?」

「致し方ないな。もし間に合わなかったら、明後日の撮影はリリィに行ってもらうぞ。」

 アンジェラも渋々許可を出す。

 ライルはビックリしたまま固まっているあっちのアンジェラとJC瑠璃リリィを物質転移で倉庫へ移動させた。

「きゃー」「うわっ」

「君たち、うるさいね。僕、うるさいのダメなんだよ。」

「あの、お姉さんとライル君、どうしてバラバラになってるの?この前は一人で時々変わってたのに…。」

「あぁ、僕達元々別々の人間だったんだ。双子だけどね。色々あって、別行動することも可能になったんだ。でも、僕は彼女みたいに優しくはないよ。」

「ええっ?」

「さっさとあっちの世界に行くよ。」

 ライルは白い布を持ち上げ、二人に絵を持ち上げるように促した。

 二人の体がグニャリと空間に吸い込まれていくのがわかる。

「うわ、ホラーだね。」

 そう言いながらライルも続いた。

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