304. お互いの気持ち
僕はイタリアの家で今使っている部屋のベッドの中に転移した。
いやぁ、マズイ…全裸で妹と夫のベッドの間に紛れ込むって…事故だけど、恥ずかしすぎる。
突然、目の前にリリィが転移してきた。
「わっ。」
「ねぇ、ライル。ちょっと話があるんだけど、いい?」
「じゃあ、パンツと服取ってきてよ。」
あきれた顔をしながらも、リリィは着替えを持ってきてくれた。
僕はベッドの中でモゾモゾしながら服を着た。ベッドから出て、ベッドのふちに座る。
リリィはちょっとずつ僕の方に近づいてきた。
「なんだよ。」
僕が少し反抗的に言ったと同時くらいに、リリィが僕に抱きついた。
「な、なにしてんの?」
僕があわてると、余計にぎゅときつく抱きついてリリィが言った。
「ねぇ、ライル。このまま聞いてくれる?」
「な、なに?」
リリィはまたぎゅっと腕に力を入れて言った。
「私ね、ライルとバラバラになってから、ものすごく寂しいの。
どうしてかわかんないけど、何やってても何かが足りない気がして、涙が出そうになるの。
幸せなはずなのに、ここは私の居場所じゃないって、そんな気がして…。」
「リリィ…。」
「ねぇ、ずっとじゃなくていいから、家にいる時や、夜寝る時は融合でも憑依でもなんでもいいから一緒になれない?今日、朝起きてわかったの、ライルが私の中に入ってたから今日は楽しい気分で目が覚めたんだって。」
「で、でも…。」
「わかってる、言いたいことはわかってるよ。でも、融合しているときはライルはリリィの一部だし、リリィはライルの一部になるんだもん。そうなれば、今まで通り家族のことも愛せるよ。」
「…わかってるんだ。全部。」
「うん、だって…同じ気持ちになってるんだもん。」
「で、でも…。きっと、アンジェラや子供たちが愛してるのはリリィで僕じゃない。」
「何言ってるの?みんなが愛してるのはライルとその中にいるリリィなんだよ。
そして、ライルのこと、一番愛してるのは私…。今は年が逆になってるけど、ライルは私の唯一の大切なお兄ちゃんだよ。ずっと一緒にいたい。できればずっとくっついて生きていきたい。」
リリィの涙を流しながらの話に、ライルは内心安堵していた。
「僕、自分だけが要らない人間かと思って…。」
「それ、私も同じこと考えちゃってた…。」
二人は抱き合いながら、なんだか笑いが込み上げてきた。二人はやっときつく抱き合ってた手を緩め、向き合った。
「なんでバラバラになる必要があったのかってことだよな?」
「そうそう、そこ、知りたいよね?」
「上位覚醒したときに、聞こえた気がしたんだ。何か恐ろしいことが起きる前提ってなんだろう?」
「あ、ライル。昨日のアンジェラからのメッセージ見た?」
「いや、まだ見てない。」
「ミケーレが、絵本に変化があったって教えてくれたの。その恐ろしいことのヒントになるかもしれないでしょ?」
「そうだな。あとで見に行こう。」
「ねぇ、ライル。朝ごはん食べたら、一人になろ?」
「うん、いいよ。」
そう言って二人は手を握り合い、それぞれの支度をしに行動を別にした。




