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275. うそついちゃった

 アンジェラの姿になったリリィに抱かれていたミケーレが慌ててジタバタと暴れる。

「こらこら、そんなに暴れちゃ危ないだろ…。怖かったのか?」

 そういうと、今度は14歳のライルの姿に変わる。

「どうなってる?」

 アズラィールは自分の前で起きている状況に目を疑った。

 ライルはリリィには変化へんげできたが、それ以外には変わったことなどない。

「あぁ、すまん。アンジェラは見ただろう。小さいライルの分身体がトーマスに変化するのを。」

「確かに、見た。」

「さっき核を回収した時にその能力を受け継いだんだ。」

 ライルになっている状態で、ミケーレをアズラィールに渡し、祭壇の上の棺に近づく…。

「色々と大変だったよ、今までの人生は…。たった14年でまるで何百年も生きたような気分だった。」

 ライルが自分の動かない体の頬を撫でながら悲しげに言った。

「ライル…。」

 それを見て、アンジェラがライルの名前を呼んだ。

「うれしいよ。アンジェラ。僕をライルと認識してくれて。拒否される覚悟もしたんだ。」

「まだ、納得はしていない。」

「そうだろうね。僕も正直変な感じだよ。そうだな、例えば…僕は、今、幽霊と同じだ。

 精神だけが存在し、肉体がない。しかし、死んでいるわけでもない。触ろうと思えば触れるし、触れれば温かい。切れば血を流しているように見せることもできるしね。」

「う、うううっ、うわ~ん。」

 マリアンジェラがまた泣き出した。

「うるさいな。泣くなよ。」

「ママもライルもそんなこと言わないもん。いつもやさしく抱っこしてくれたのに~。うぇぇえぇぇん。」

 アンジェラの腕の中でマリアンジェラが泣き叫ぶ。

「マリー、泣かないで、ほらマリーが泣いたら、皆が悲しくなるよ。」

 アンジェラが優しくマリアンジェラの背中をトントンして慰めた。

「うぇっ、ひっく、うっ、えっ。」

 涙をアンジェラの服で拭っている。


 ライルはプラチナブロンドの女性に姿を戻し、口を開いた。

「マリー、ごめんね。ライルの性格が歪んじゃってて…多分小さいライルの分身体の影響かな…。あと、アンジェラ、ありがとう。」

「何のことだ?」

「夢の中の草原の丘、山小屋でのこと、あれが最後の試練だったの。」

「試練ってどういうことだ?」

「あなたが私に一緒に来て欲しいって言ってくれなかったら、私はあの体と一緒に終わりを迎えることになっていた。どんな姿になっても愛してもらえていることが戻る条件だったの。

 そして、キスすることで目覚めることになっていたのよ。」

「何のことだ、アンジェラ?」

 アズラィールに聞かれ、アンジェラは赤面する。

「父上には関係ないことだ。」

 とてもじゃないが、夢遊病のように口に吸い付いて離れなかったとは恥ずかしくて言えない。

「あら、いいじゃない。教えてあげたって。アズラィールは絵本読んだでしょ?」

「あ、うん。読んだけど…。」

「私、感動したわ。姿が変わってしまっていても、アンジェラはまた私の事を愛してくれるんだって…。」

「???」


 一通り話終わったのか、プラチナブロンドのリリィは棺の中のライルを封印の間へ連れて行くと言い始めた。

「どうして封印の間に連れて行くんだ。もう死んでいるなら、きちんと葬ってあげるべきだろう?」

「うーん…。ちょっとアンジェラとだけ話しがしたいから、借りるね。」

 そう言うと、リリィはマリアンジェラをアズラィールに預けて、アンジェラだけを連れてどこかに消えてしまった。


 リリィとアンジェラはユートレアの王の間にいた。

「私だけに話ってなんだ?」

「アンジェラ、ごめん。うそついちゃった。」

「どこの何がうそなんだ?」

「ライルの体が死んでるってところ。」

「わかるように言ってくれ。」

「うーん、自分でもよくわかってないけど…。あの体は、核が無いからこのままでは生命の維持は難しいの。今は冬眠している様な状態なのよ。あとね…あの体じゃないとできない事が一つだけあるのよね。」

「それは、なんだ?」

「妊娠と出産。」

「…。」

 アンジェラがプシューってなったまま赤面している。

「だから、とっておきたいの。その時まで。」

「どうやって、元にもどるんだ?」

「え?私があの体の中に入っちゃえばいいだけよ。そしてこの姿になればいいでしょ?」

「その姿ではなく、いつものリリィでいて欲しい。」

「うーん、それはどうかなぁ…。この状態がデフォルトになっちゃったからな…。」

「核、一つ多く持っているんだろ?それを入れたら、前みたいに…」

「それは命の危険が伴うときのために使うことにしたの。だって、分身体を使うってことは、自分自身に嫉妬する原因なんだもの。」

「リリィ、あの宗教団体は撲滅したんだろ?じゃあ、命の危険なんかないじゃないか…。

 頼むから元に戻ってくれ…。」

 プラチナブロンドのリリィは少し考えてから、返事をした。

「わかった…。そんなにあの体がいいなら、戻るわよ。せっかく汗もかかない筋肉痛にもならない状態になれたっていうのに…、残念だわっ。」

 それは確かにすごい…と内心思ったアンジェラであった。


 二人は聖マリアンジェラ城の聖堂に戻ったのだった。

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