表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/696

261. 助っ人現る

 アンジェラは自分のアメリカの芸能事務所を任せている副社長との電話を切った後、思いを巡らせているうちに動揺し、胸が苦しくなった。

「うっ。」

 脂汗が額からにじみ出る。ぐらっと体が傾き、デスクの上の物に手が当たってしまった。

『ガシャン』と音がして、ガラスで作られたペン立てが割れた。床に落ちたペン立てが割れてしまった。慌てて拾おうと机の横に回り込むと、頭がくらっとした。驚き、翼が開く。

『ぶわっ』と翼が開いたと同時に割れたペン立ての上に手をついてしまった。

 手のひらにざっくりとガラスが刺さり、どくどくと血が流れてくる。

 その時だった。アンジェラは背中に温かい物を感じた。


 翼の下から顔出したのは翼を出した小さいライルだった。

「あ、アンジェラちゃん、お手々痛くなっちゃったの?」

「ライル、どうしてここに…。」

「え?この前綺麗な羽もらったでしょ。あんまり綺麗だから、出して触りたくなったの。そうしたら、ここに出てきた。ほら、お手々治してあげるから、こっちに出して。」

「あ、危ないから、ガラスが…。」

「小さいライルだからできないと思ってるの?じゃあ、大きくなるね。」

 小さいライルはそう言うと、いつもの14歳のライルの大きさになった。

 机の脇にあったゴミ箱の上に手を浮かせて、触らずにガラスの破片を取り出している。

 物質転移の応用のようだ。

「すごいな、オマエ…。」

「そお?11年後の僕ができることを全部教えてもらったの。やり方とか、アドバイスも。

 あ、あとね。記憶のもらい方も…。」

 そう言ったライルの手と触られているアンジェラの手が金色に光った。

「あ、そうだったんだ。リリィが大変なことになってるんだね。」

 そう言って急いでアンジェラの手を治してくれた。でもそこで終わりではなかった。

「アンジェラちゃん、ストレスと過労で心臓に負担がかかったみたいだよ。このままだと危険だから、ちょっと治すね。」

 過去から来たライルがアンジェラの胸に手を当てると苦しさがどんどん無くなっていく。


「服に血がついたところは僕直せないから、手を洗って、お着替えしてきてくれる?」

 過去から来たライルが、アンジェラの体を支えて立たせてくれた。

「オマエ、本当に小さいライルなのか?」

「うん、そう。ねぇ、早く手を洗ってきて。」

 アンジェラが急いで手を洗ってくると、過去のライルは床に着いた血をティッシュで拭きとり掃除までしていた。

「よしっ、準備できた。」

「ライル、何の準備だ?」

「え?ブランドの会長さんにお願いしに行くんでしょ?僕が一緒に行くよ。」

「で、でもお前はまだ小さいから…。」

「アンジェラちゃん、大丈夫だよ。僕ね、しゃべり方は子供っぽいかもしれないけど、もう中身は大人と同じくらいになってる。うまくやれるし、僕の力がすごいところを見せてあげる。11年後のライルがまだ気付いていないこともできるんだよ。」

「どんなことだ?」

「じゃ、特別に見せてあげるね。」

 そう言って、ライルは姿を変えた。全く関係のない、アンジェラの記憶の中から取り出したトーマス・トルーマンの姿にだ。

「な、なんだと…。」

 着ていた洋服まで全く一緒だ。どうなっている?

 次の瞬間にはトーマスの妹のベスになっていた。

「どお?すごいでしょ?」

 小さいライルの姿に戻ると、「もう一つできること」と言って右の手の平を上に向けた。

 そして手を握るとそこには大きな剣が出た。

「ほら、これ勇者の剣みたいでしょ?でもね、切れるわけじゃないの。切れたら危ないしね。触るとビリッってなって、しばらく動けなくなるんだ。あ、そういえばさ、ブランドの会長さんのところより、直接行った方が早くない?」

「しかし、もし捕まったりしたら…。」

「きっと大丈夫だよ。リリィだけ見つかれば、あの場所を燃やしちゃえばいい。遠慮することないよ。やられたらやり返してもいいんだよ。」

「あの場所は、多分、そこに行くと能力が使えなくなるとリリィが言っていた。」

「それなら、対策を考えてきたよ。」

 まだ躊躇しているアンジェラに、小さいライルが言った。

「早く行かないとリリィが切り刻まれちゃうよ。」

 そうだ、この前リリィが見てきた未来では、臓器を取られたり、血を抜かれたり、皆何かしら欠損部分があると言っていた。このままではリリィが危ない。

「分かった。でも先に皆を避難させたい。」

「じゃあ、今はアンジェラちゃんの中に入るね。」

 そう言うと小さいライルはパタパタと翼で上昇し、アンジェラの首にぶら下がると、アンジェラのくちびるをチョンと触った。光の粒子になり、小さいライルが消えた。

 アンジェラの見た目は変わっていない。


 しかし、次の瞬間、目の前の景色が変わる。子供部屋に転移。遊んでいる子供たちを、子供部屋の遊び道具も一緒に聖マリアンジェラ城のホールに転移した。

 次に景色が変わったときには朝霧邸だった。

 サロンでくつろぐ未徠夫妻と徠夢夫妻をテーブルとイスごと転移した。

 次は徠神の店だ。営業時間が終わって片付いたところだ。皆で談笑していた。

 それもまとめて転移した。


 ドイツのマルクスのところでは、昼間っから酒場で飲んでいるマルクス、フィリップ、ルカ達だ。

 ちょっと店の外に呼び出し、ホールに送り込む。


 アンドレとリリアナのところに転移した。

「あれれ?」

 二人はユートレアの王の間で仲良しの儀式の最中だった。

 シーツでぐるぐる巻きにされたアンドレとリリアナが聖マリアンジェラ城のホールに全裸で転移させられたのは二人にとっての黒歴史である。

 アンジェラの中に入った小さいライルは、一度ホールに転移するとアンジェラから外に出て言った。

「これからリリィを奪還しに行ってくる。ぼくが手伝う。

 皆は絶対にここから出ずにアンジェラの連絡を待ってくれ。」

 そう言ってアンジェラと手を繋ぎ、城を後にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ