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239. パパのマリアンジェラ

 僕達の世界ではないもう一つの世界との接点である一枚の絵を触り、元の世界に戻ってきた。

 マリアンジェラは僕にがっちりしがみつき、何度も何度も僕の顔を確認している。

「マリー、もう大丈夫だよ。」

「こわかった。みんな消えたと思った。」

「もう、この布のある辺りに来ちゃだめだよ。」

「うん。絶対触んない。」

 僕はマリアンジェラを抱いたままダイニングへ移動した。

 皆、食事をとらずに待っていてくれた。リリアナもいた。

「パパ~。グスッ。」

 いきなりアンジェラに乗り換えて泣きじゃくる。

 アンジェラはマリアンジェラを抱きしめて優しく言った。

「よかった、マリーが無事で…。」

「うぇっ、うぇっ、あっちのおじさんは着てる服の趣味が最悪で、すぐにパパじゃないってわかったよ。ぐすっ。」

「どんな服を着てたんだ?」

「オレンジのジャケット。」

「…。」

 多分、自分も持っているから何も言わなかったんだろう…。

 涙をタオルで拭いて、ご飯を食べることにした。遅い昼食のはずだったのだが、もう午後四時になってしまった。

「このまま夕食の食材も出そう。」

 アンジェラがそう言って、ターキーのグリルとブロッコリーのアンチョビバター焼きを出した。ミケーレがプレートをアンジェラから遠ざけた。

「ミケーレ、そんなにブロッコリーが嫌か?」

 ミケーレがアンジェラを睨んでいる。

「アンジェラ、そう言えば、アンジェラの色が元に戻ってるね…。」

「あぁ、そうなんだ。ライル。アンドレとリリアナが一度戻ってきたんだ。その時にマリーがいなくなったと言ったら、リリアナが子供たちの面倒を見てくれると言ってくれて、残ってくれた。そして、ついさっき、この家の10年後のセキュリティの映像を見てくると言って、アンドレと徠牙が合体して10年後のアメリカの家に行ったんだ。」

「そっか、カメラ設置したら使えるようになってるはずだもんね。」

 僕はマリアンジェラをテーブルにつかせると、いったん着替えに部屋に戻った。

 なるべく家ではリリィでいようと決めているからである。

 リリィになり、服を着替える。


 ダイニングに戻り、自分も席に着き食事をとる。

「アンジェラ、わかったことを知らせておくね。」

 僕は、短い時間だったがもう一つの世界のアンジェラと瑠璃リリィを伴って10年後に行き、日本の新聞で朝霧邸で起きた事件をチェックしたこと、イタリアでも墓石があったが、3人のものだけだったことを知らせた。

「あちらの世界では、助かった者もいたということか?」

「イヤ、決してそうではないと思うんだよね。あっちにはリリアナもアンドレも、マリアンジェラもいないと考えた方がいい。ミケーレがミカエルだったり…。」

「どうしてそんなに違ってしまっているんだ。」

「あっちの瑠璃リリィは時を超えて転移することができないらしいんだ。アンジェラの命を救うとき以外は…。だから先祖たちは普通に病気や戦争、事故などで死んでいる。

 今考えられる脅威は、ライラであるのは一緒だけど、由里杏子の存在すら確認できていないんだ。その辺を調べるように言ってきたよ。」

「そうか、何かわかるといいな。」

「そうだね。」


 横目でちらちらと僕とアンジェラの会話をチェックしながら、ターキーのもも肉をでかいままかじっているマリアンジェラが、急に動きを止めた。

「どうした、マリー、喉でも詰まったか?」

 アンジェラがマリアンジェラの背中をさする。

「マリーが、あっちの世界では生まれないの?」

「いや、それはわかんないんだ。生まれていて、死んでいないのかもしれないし、全く同じじゃないんだよ。あっちには、徠夢に徠太っていう碧眼じゃない茶色い髪の弟までいたしね。」

 僕が慌てて補足する。自分が生まれないことに少しショックを覚えていそうだ。

 アンジェラが慰めるように言った。

「マリアンジェラが私の娘で、私は世界で一番幸せだな。」

「パパ…。」

 口の周りは油でギトギトだけどね。ふふっ。


 アンドレの部屋のドアが開く音がして、アンドレが戻ってきた。

「ただいま帰りました。」

「おかえり。どうだった?」

 アンジェラが聞いた。その前に、うっそ~、アンドレ×徠牙はまさかの金髪でうすい碧眼。

 まるでおとぎ話の王子様みたいだ。アンドレのいつもの精悍さがまったく感じられない。

「データは取れました。ライルのタブレットに送ります。」

 食事が終わったらデータをチェックしよう。


 アンドレが合体を解除し、徠牙も出てきた。本当に全員揃ったところで、ガヤガヤご飯を食べ、なんだか賑やかで楽しい雰囲気になる。

 マリアンジェラの横に座った徠牙が嬉しそうにマリアンジェラの口の周りについている油を拭いてあげている。

「あ、すまん。徠牙…。ありがとう。」

 アンジェラが徠牙にお礼を言った。

「いや、うれしいよ。またマリーの口の周りを拭けるなんて、何年ぶりかの幸せだ。」

 徠牙がにっこり微笑んだ。そうか…そのうち大きくなってなんでも自分でできるようになって、世話なんか必要なくなるんだね。ちょっと切ない。

 さあて、どんな映像が映っているのか…子供達には見せられないな。

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