表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/696

233. アンジェラ×アンジェラ

 僕は、アンジェラと子供たちが散歩に行っている時間に、未来のアンジェラが送ってくれたライラの凶行関連のセキュリティカメラ映像を事前に祖父の未徠と父の徠夢に送っておいた。

 そして、もう一つ重要なこと。それは、それらの映像と一緒に文書をデータで作って、ライラが将来、僕達血縁者を根絶やしにするために行動を起こすことをもう一つの世界の瑠璃リリィに知らせるためだ。

 手紙には『重要データが入っている。必ず家族で検討するように。』と書いて、マイクロSDにコピーしたファイルと共に封筒に入れた。

 宛名は瑠璃リリィ 差出人は僕、ライル、日付は2006年9月15日。

 これを見て、もう一つの世界でも危険を回避してくれるといいんだけど。

 僕は、絵画を置いてある倉庫の一角の布をよけ、一枚の絵の上に触れないように気を付けながら封筒を置いた。そして、布を戻した。


 倉庫からクローゼットに入った。そろそろ学校に行く準備をするため、ライルの姿に戻る。

 今日の分の衣服に着替えた。うっ、なんか今日のは雰囲気が違う。白のTシャツにかぶるタイプの黒のパーカーとタイトな白いデニムだ。微妙…。

 ランチを取りにダイニングへ行ってみると、子供達とアンジェラが散歩から帰ってきたところだった。

「あー!ライルと僕の服、お揃いだぁ~。」

 ミケーレが大喜びで僕に抱きつく…。それでか、普段着ないような服だったのは…。

 アンジェラがスマホでミケーレと僕の写真を撮りまくっている。親ばかか…。

「ライル、もう、行く時間か?」

「うん、ランチ持っていくとこ。」

「そうか、気を付けるんだぞ。」

「うん。あ、データお爺様と父様に送っておいたから。」

「わかった。まかせろ。」

 僕はクローゼットに戻り、学校の寮に転移した。


 少し経って、午前中の授業と授業の間、教室を移動中のことだ。僕のスマホにメッセージと添付された画像…。

「え?誰これ?神?」

 髪が銀髪で胸元までのストレートで、まつ毛も眉毛もグレー、瞳はとても濃いブルーの男性の写真だ。そこには分身体リリィからのメッセージが添えられていた。

『アンジェラ×アンジェラ』

 マジか…。本物天使のルシフェルとはまた違うんだ…。

『なんでこの組み合わせ?』

 僕が質問すると、リリィはこう返してきた。

『恥ずかしさのあまり、二人の間で会話が成り立たないので、いっそ一人になってもらおうと思いまして。』

 グッジョブ!しばらくこれで過ごしてもらった方がいいんじゃないのかね。自分自身にヤキモチ妬くとか、めんどくさいったらありゃしない。


 午後の授業もスムーズに終わり、学校でのスポーツの時間。

 毎日のこの二時間強制部活みたいのが、結構辛い。僕はニート状態でいたためかなり体がへなちょこである。かといって、マッチョにも絶対なりたくない。

 なぜならば、リリィになったときに悲惨なことになりそうだからだ。

 そうは言いながらも、二時間ぶっ続けで走り回っていると、段々足の筋が浮き出てきたように思う。水泳とかの方がよかったかな?

 後に検証したところ、リリィになったときにライルの時の変化は影響しないことが分かった。


 スポーツの時間を終え、シャワーを寮の自室で浴び、洗濯物を抱えて家のクローゼットに転移する。すぐにリリィになり、リリィの部屋着に着替えた。

 浴室の洗濯もの置き場に洗濯物を出して、ダイニングへ行った。

「ただいま~。」

「おかえり、お腹すいただろ?一緒にアトリエのソファの方で食べないか?」

 アンジェラがご機嫌で僕に話しかける。

「うん、ありがと。あれ?徠牙は?」

「どっか、その辺にいた気がするぞ。」

 その辺、と言いながらダイニング横の書斎を指さす。

 そっちを覗くと、徠牙が書斎で椅子の上に立ち、天井にセキュリティカメラを付けていた。

「あ、ただいま~。徠牙がそんなことしてるの?」

「おかえり、あ、あぁ、あいつは子供の世話で忙しそうだったからな。」

「ふぅん。終わったら、一緒にアトリエで話しない?」

「あぁ、ここで最後なんだ。終わったら行くよ。」

 僕はアンジェラと二人、先にアトリエに行った。

 アトリエにも、廊下にもいたるところにセキュリティカメラが設置されていた。

 子供たちを寝かしつけていた分身体リリィもアトリエに来た、そして何も言わず僕の中へすっと入り込む。

「ん?どうしたんだろ…。」

 分身体を取り込んだ時に今日分身体が体験したことが全部自分の記憶として認識された。

 どうやら、この前の大けがを全回復させるために僕に入りたかった様だ。

 アンジェラは静かにワインを飲み、チーズの盛り合わせを食べながら僕が食べるのを見ている。今日の晩御飯は、ムール貝のワイン蒸し、チョリソーグリルとパルメザンチーズのリゾット、シーザーサラダだ。家のごはん、最高!

 僕が食べ終わるころ、未来のアンジェラこと徠牙が入ってきた。

「お疲れ様。」

 僕が声をかけると嬉しそうに微笑む。

 アンジェラは不機嫌そうだ。僕は、分身体リリィが回復のため僕の中に入ってしまったことを知らせた。その後は、今日朝霧邸で起きたことも分身体の記憶からわかっていると知らせた。

 別世界の瑠璃リリィにも念のためデータと手紙を渡したことも話した。

 朝霧の方で、日本で探偵を雇って川上このみの消息を確認してもらうことになった。

「僕ね、気になったたんだよ。留美さんがさ、妊娠したきっかけとか、結局結婚したのは全部川上このみが関係していそうでしょ?

 あの人がどうやって、ライラの蛇を手に入れたのか、何の目的で皆を殺そうとするのか…それがわかれば糸口が掴めると思うんだよね。」

「そうだな。それは、重要なところだと思う。」

 アンジェラが言うと徠牙は首肯した。

 僕はお皿やグラスを片付けて、歯を磨いたりして寝る準備を始めた時、やはりアンジェラと徠牙は会話が弾まずアトリエのソファと壁際に置かれた椅子にそれぞれ座り、目も合わせない様子だった。

「あ、そう言えば、二人が今日合体したんだって?僕も、直接見たいな~。」

 二人は、なんだか渋っている…。もう一押しか…。

「リリィの送ってきた画像は見たよ~。でも直接見たいんだよね~。ちょっと触りたい気もするしさ~。ねぇ、お願い。」

 渋々ながら、徠牙が立ってアンジェラの側に行った。アンジェラも立ち上がって一歩前に出た。お互いがお互いの唇に右手の人差し指で触れた。

「わぁ~。」

 今までみた合体は青い光の粒子に包まれていたが、今回のは違った。

 二人の体が一瞬だけ白い発行体になり、次の瞬間一人になった。

「アンジェラ…。」

 僕が声をかけると、その美しい男が伏せていた目を開けてこちらを見た。ドキンと胸が鳴った気がした。背筋に何か衝撃が走る気もした。

「ヤバい。」

「リリィ、どうした?」

「ん…アンジェラ、ちょっとこっち来て、顔見せて。」

 近づいて、顔を寄せるアンジェラの両頬に思わず手を添えて口づけてしまう。

「あぁ、アンジェラ…無理、無理…。」

 不思議そうに首を傾げるアンジェラの手を取り、そのままユートレア城の王の間に転移した。

「ねぇ、絶対なんか変な能力使ってるでしょ?」

「リリィ、何のことだ?」

「わかんないの?」

 僕は無理やりアンジェラをベッドの上に押し倒して何回もキスをした。

「能力なんて、使ってないさ。これは魅力っていうんだろ。」

 アンジェラ×アンジェラがずるい顔をして笑った。

 気が付いたら、朝、ユートレアの王の間のベッドで、二人のアンジェラに挟まれて寝ていた。

『やらかした…。』いやいや、これは浮気ではない。そもそも、ここにいるのは両方夫だ。

 ユートレアの王の間のクローゼットの中で分身体を出し、あとでゆっくり徠牙を連れて帰ってくるように言った。

 自分はアンジェラと共に、自宅の寝室のベッドに転移する。

『教訓・夜はアンジェラを合体させてはいけない。』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ