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230. アンジェラ救出

 9月14日、月曜日。

 いつもより少し早く起きて、お手伝いさんの補助をしてから、子供たちを起こしに行った。

 なかなか寝起きが悪い。

 ぐずぐずの寝ぼけたままの二人と、目をこすってあくびをしているライナを連れて洗面台へ。

 顔を濡れタオルでぐりぐり拭いて、強制的に起こした。

「ほらほら、ちゃんと起きて自分で朝ごはん食べてね。ママ、ちょっと行きたいところあるから、こぼさないで食べてて。なるべく早く帰ってくるけど。」

 朝食用に用意されている食材でハムサンドを作りカゴに入れて準備をした。

 アンジェラが起きてきたので、出かけることを知らせる。

「アンジェラ、ちょっとおととい未来に置いてきたリリィの所に行ってくるね。」

 もうちょっと情報収集してくると告げ、未来へ転移する。


 今いた場所と全く同じ場所に転移する。ダイニングには誰もいない。

 寝室に行ってみる。誰もいない。

 場所だけの転移で目標人物を思い浮かべる。自分の分身体の側に転移する。

 そこは、封印の間だった。

「うそでしょ…。」

 分身体のリリィは内臓が見えるほどの大けがをした状態で気を失っていた。

 慌てて怪我を癒し、体に触れた時にこの二日間で起きたことを記憶のコピーで知る。

 ライラが今度はアンジェラを狙ってきたのだ。

 しかし、ライラは転移はできない様だ。翼を使って飛び、斧でサンルームのガラスを割って室内に入り、寝室にいた二人を襲ったようだ。

 分身体のリリィがライラを身を盾にして抑え込んでいる間に、アンジェラは地下二階の隠し部屋に入った様だった。アンジェラが隠れたことを確認した後に、怪我を負った分身体は怪我が悪化しないよう封印の間に逃げ込んだのだ。

 僕は分身体のリリィの傷を癒した後、自分の中に吸収した。気絶したまま連れ歩くのは大変だからだ。

 残念なのは、やはりいる時間が違うと意思の疎通も、見えているものも、何も共有できないことだ。襲撃されたのであれば、連絡のしようもない。

 不幸中の幸いだ、分身体を置いて行って良かった。

 僕は家の地下二階の音楽スタジオに転移した。

 きっとアンジェラはどこかに隠れているはずだ。

「アンジェラ~、僕だよ~。封印の間にいたリリィを助けてからここに来たよ~。

 隠れてたら、出てきて~。」

 あまり大きくない声で、声をかける。ベッドのある部屋のクローゼットの中からガタガタと音がして、アンジェラが這い出てきた。ひどく震えている。

 僕は思わず、アンジェラを抱きしめた。

「アンジェラ、ごめんね。こんな、また襲ってくるなんて思っていなかったから。」

「う、ううっ。リリィ…。」

 アンジェラはずっと泣いていたんだと思う。でもがんばって、耐えてたんだ。

 持ってきたサンドウィッチをアンジェラに食べさせ、少し落ち着かせてから、話をした。

「今、ここで集められる情報を集めたいんだ。ライラはいつ、ここへ来た?」

「昨日の早朝だ。」

「アイツは転移できないんだよね?斧でガラスを割ったのが見えた。あと、攻撃も斧でだけなのか?雷や、物質の移動なんかは使えないんだろうか?」

「翼で飛ぶのは見たが、転移はしていないと思う。翼が、コウモリの様で、移動は早い。」

「アンジェラ、ここにインターネットに繋げるものはある?ニュースとかが見たいんだけど。」

 アンジェラはポケットからスマホを取り出した。充電器は念のためここにも置いてあったようだ。しかし、ここは、電波が届かないのだ。

「ねぇ、アンジェラ。アメリカの家ってまだ持ってる。」

「あぁ。掃除やメンテナンスは頼んでいるから、使える状態にあると思う。」

「あの場所って、ライラに知られていると思う?」

「イヤ、あの家の事はアントニオと家族、他にはパーティーに招いた客とホテルの支配人くらいしか知らないはずだ。それに、たった1日であそこにまでは移動できないと思う。」

「充電器、持って。」

 あの、転移用に用意した部屋まで、二人で転移した。

「アンジェラ、ライラが起こした事件のことニュースになっていたりする?」

「あぁ、日本でも大騒ぎになったんだ。イタリアとドイツでも。」

「アイツ、どうやって日本からイタリアやドイツに移動してるの?」

「わからない。」

「とりあえず、ニュースチェックして、画面のキャプチャーして。あと、日本の家のセキュリティカメラの映像、ダウンロードしてくれる?」

「あ、あぁ。すぐにやるよ。」

「終わったら、一緒に2026年に行こう。僕がアンジェラを守るから。」

 アンジェラは涙を堪えながら、情報を集め、次々とファイルをコピーしていった。

 そして、僕たちは2026年9月14日へと戻ったのだ。



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