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208. 事故と病気

 小さいライルが過去から訪問してくるようになり、それに合わせてライナが朝霧邸を訪れるようになってから二カ月が過ぎた頃、小さいライルが急に訪ねて来なくなった。


 来なくなって三日目、徠夢がアンジェラに連絡してきた。

 どうして来なくなったか心配だから、過去に行って確認したいというのだ。

 僕の事になど関心のなかった父様が心配するとは意外な気がする。

 僕はアンジェラと徠夢、留美を連れて転移した。


 11年前の三階の空き部屋だ。

 時刻は午後二時二十分過ぎ、今日も小さいライルは来なかった。

 原因は、すぐにわかった。この部屋に鍵がかけられていたのだ。

 だれか、大人が鍵を掛けたのだろう。

 そして、もう一つ原因があった。

 小さいライルは、熱を出し、寝込んでいたのだ。しかも、大人は誰も気づいていなかった。二階のライルの部屋に行くと、ベッドの上でうつろな目をして、大きく息をしているライルを見つけた。どうやら、肺炎になりかけている。

 呼吸の度に『ゼーゼー』と嫌な音がしている。

「ライル、どうした?」

「お、おとうちゃま、頭がいたいの。でも誰も帰って来な…」

 ガクッとして、ライルは気を失った。

「おい、なんとかできないのか…。」

 同じ能力持ってるはずなんですけどね、自分じゃやらないんだ…。

 僕は小さいライルの全身をスキャンして確認する。

「肺がヤバいですね。もう水が溜まってる。ウィルス肺炎かな、黒っぽく見えるから…。ウィルスは僕には治せないので、病院へ連れて行きます。」

 家の中には本当に誰もいなかった。

 しかも、食べるものも用意されていない。

 せめてあの部屋の鍵が開いていれば、転移してくることもできたのに。

 保険証を探しに家の中を探していると、ダイニングの入り口の花台にガラケーが置き去りになっていた。

 何の気なしにそれを触った。徠夢、留美、アンジェラの目の前で、僕の体は金色の光の粒子になり、砂のようにサラサラと崩れおちた。

「ライル!」

 アンジェラの叫び声が遠くに聞こえた。

 僕は、若い時の徠夢の体に入った状態で目が覚めた。水の中だった。

 溺れて、意識がない状態なのだ。僕は転移して水上に出た。

 橋の上で、トレーラーが横転して、何台もの車が巻き込まれている。僕は翼を出し、地上の安全な場所まで移動して、徠夢から出た。そして、肺から水を出し、徠夢を寝かせた。


 さすがに、僕一人でどうにかなるような状況ではない。

 ここに祖父母はいるのか?いや、いない。多分、さっきの家の中にいた時間帯よりももっと前に起きている事なんだろう…。

 この事故で本来、徠夢は溺死して、祖父母はその対応で家を空けたのだろう。

 車の中に閉じ込められている人で、まだ気を失っているが生きている人を助け、徠夢を寝かせた場所に戻った。

「おい、保険証のある場所を教えろ。」

 少し乱暴に揺すって徠夢を起こす。

「ゲホゲホ、ゴホッ」水を飲みこんでいたからか、かなり咳込んでいる。

 ダメだ。使えないやつだ。警察車両や消防車両が集まり出したので、徠夢をその場に置き去りにして戻った。


 保険証の場所は未来から来た徠夢が見つけていた。

「救急車を呼べ。」

 アンジェラに言われ、徠夢が電話をかけた。5分ほどで、救急車が来て、徠夢と留美が小さいライルに付き添った。

「後で行くから。」

 僕は、そう徠夢に言った。

 アンジェラが僕に「どこに行ってた?」と聞くので、溺れてるというか、ほぼ死にかけてた徠夢を助けてきたと言った。

 ダイニングのテレビをつけたら、その事故の中継が放送されていた。

 もう、事故が起こってから三日と言っている。

 三日経っても回収できない遺体が多いのだろう。


 小さいライルと交流がなければ、ここに来なかっただろうし、ライルも死んでいた可能性がある。

 どうにか、回避できたことは、よかったと思う。

 小さいライルは肺炎にかかり数日入院することになった。

 三階の空き部屋は鍵をぶちこわしておいた。

 徠夢と留美はこの時間の本物が病院で検査を受けていて動けないのをいいことに、小さいライルの入院に二人で付き添った。


「とうちゃま、かあちゃま。ライル、うれしい。でも、ライナが心配してるから戻ってあげて。」

 小さいライルがそう言ったが、徠夢が残り、留美が帰ることにした。

 家には置手紙を置いた。未徠が駆けつけてきたが、未来から来た徠夢がライルの看病をしているのに驚いたようだ。

 水中で溺れた徠夢も三日間入院して家に戻ったらしい。

 アンジェラと僕と留美で先に戻った。そして、一週間後、退院したライルと一緒に、徠夢は僕の部屋に戻ってきた。


 徠夢は帰るなり、僕に突進してきた。

「やめてください。父様、どうしたんですか?何に頭にきてるんです?」

「いや、頭になんか来ていない。橋の事故で救ってくれてありがとう。昨日、全て思い出したんだ。」

 まぁ、よくわからないが、二人とも生きててよかったな。


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