206. 誰???
早朝、三人を家に連れ帰りベッドに寝かせ、ライナの様子を見に行った。
昨夜寝たままの状態で寝続けているようだ。
家に置きっぱなしにしていたスマホにはアズラィールや未徠、徠神からメッセージがきていた。
「これはリリィとアンジェラが背負うものではない。」という意見がほとんどだった。
僕はライルの姿に戻り、シャワーを浴び、身支度を整え一人で先に起きた。
考えがまとまらず、サンルームで椅子に腰かけ、ボーッと外を見て過ごした。
段々辺りが明るくなり、太陽の光が差してくる。
日本はもう昼過ぎか…。僕は、何も考えずに、日本の朝霧邸の自室に行った。
何か用事があったわけじゃない。
なんとなく、ライナが自分の今までの人生を振り返るきっかけになった。
お爺様は仕事中だろう、お婆様はいるかもしれないから、昨日途中で帰ってしまったことを謝っておこう。そう思い立って、部屋のドアを開けた。
「わっ。」
また、北山留美が部屋の前にいた。この人はいつもここで何をしているんだろう?
「すみません、いると思わなかったから…。もしかして、何か僕に話あるんですか?」
「あの、ライル君、ご、ごめんなさい。私、あの、あなたに謝らないといけないって、ずっとずっと思ってて…。」
「何をですか?」
「…。」
「用が無ければ、そこ、通して下さい。」
「あの、自分勝手で、ごめんなさい。あと、ここの部屋に小さい男の子がいて。
いつも外を見ていたのだけど…。気になっちゃって。」
「何言ってるんですか、ここには誰もいませんよ。」
「あ、ほら、椅子の上に立って、外を見ている子が、そこに。」
僕は振り返って自分の目を疑った。三歳ほどの年齢と思われる僕がそこにいた。
「え?何、これ…。」
僕はそのまま気を失ってしまった。
僕は気が付くと朝霧邸の自室のベッドに寝かされていた。
もう一台のベッドには、さっきの男の子が寝かされていた。
頭が割れるように痛い。何が起きたんだろう。アンジェラに電話をかけて、マリアンジェラかリリアナと一緒にこっちに来てもらえるよう頼む。
五分ほど後、アンジェラがマリアンジェラを抱っこして転移してきた。
「どうした、ライル。」
「さっき、お婆様に昨日のお詫びをしようと思って部屋のドアを開けたら、北山先生がいて、この部屋にいつも男の子がいるって言って、振り返ったら、その子が…。」
マリアンジェラとアンジェラが僕の指さす方を見ると、小さい男の子が寝かされていた。
そこへ、留美が未徠を伴い、バタバタと走ってきた。
ちょうど、病院の休憩時間に入ったところだったようだが、ライルが倒れたと言って未徠を呼びに行ってたらしい。
「ライル、大丈夫か?」
「お爺様、あ、頭が痛くて…。」
「お義父さん、あ、あの子がいつもここにいる子で、さっきライル君が倒れたら、同じように倒れて…。」
お爺様は男の子の脈や呼吸を確認し、眠っているだけだと言った。
そして、僕に確認してきた。
「昨日の子、ライナは女の子だっただろ?この子は誰なんだ?」
「僕にもわかりません。」
「ちびっこライル~?」
マリアンジェラが首をかしげて言った。確かに僕の小さい時に似ている気がする。
でもそういう存在に分離した記憶はない。
頭痛薬をもらい、サロンで少し食べてから、自室を覗きに行った。
僕にそっくりな子供はまだ眠っていたが、そこにマリアンジェラが走って行って彼を揺すって起こした。
「お~い。もし、も~し。」
「マリー、やめなさい。」
アンジェラが止めてもマリアンジェラは、言うことをきかなかった。
自分より少し大きいその子の頬にチュとキスした。
パチっと目を開いて、その子がこっちを見た。
「わ…わぁ…誰?何?」
「それ、こっちのセリフなんだけど、君は誰?」
その男の子は慌ててベッドから飛び起きお爺様にしがみつくと言った。
「おじいちゃま、この人たちだあれ?」
「「「おじいちゃま~?」」」




