2.僕の家系の秘密?
実は、今日から学校は夏休みに入り、しばらく自由な時間を満喫できる予定なのだ。
お、いたいた。かえでさんは、庭の手入れをしていた。
「かえでさん、教えてもらいたいことがいくつかあるんだけど今いいかな。」
「丁度おやつにしようとお声をかけようかと思っていたんですよ。ライル様。」
「かえでさん、その様つけるのやめてよ~。」
「何をおっしゃっているんですか。私は従者ですので、当然でございます。」
従者って何だよ~?お手伝いさんの間違いじゃないの?
「ライル様、手をお洗いになってサロンにいらっしゃってください。」
「はーい。」
僕は、ダッシュで手を洗いに行き、そのままサロンへ。
お茶やおやつはサロンと呼ばれるサンルームのような場所で食べることが多い。
サロンに到着すると、そこにはもうかえでさんがお茶の準備を整えてケーキが3種用意されていた。
げ、秒じゃん。この人相変わらずすごいな。
「か、かえでさん早いね。」
「ライル様に負けるわけにはいきませんので。」
顔色一つ変えず、かえでさん即答。
ケーキとお茶をいただきながら、先ほどの聞きたかったことを質問してみる。
「あ、あのかえでさん、かえでさんってうちのお父様が生まれた時からこの家にいるって本当なの?」
「そうでございます。こちらに仕えさせていただき、五十二年でございます。」
「ご、五十二年~?」
「はい、私はこちらで生まれましたので。」
かえでさん、今、してやったりな顔した。
そうか、かえでさんは元々ここで働いていた人の子供で、そのまま勤めているんだ。
「そ、そういうことですね~。ははは。それは生まれて五十二年ということですね。」
「そうとも言います。ライル様、ご質問はそれですか?」
「あ、いやそれだけじゃなくて、僕のおじいさまの事とか聞いてみたいな~って。」
「どのようなことをお聞きになりたいのですか?」
「あ、う~ん。どんな人だったか、とか。兄弟はいなかったのかとか。詳しく教えて。」
かえでさんは、少し困った顔をしたが、少しずつ話を始めた。
「そうですね、ライル様のおじい様は、私が生まれた年の次の年にお生まれになりました。ご兄弟ですが、お生まれになったときは一卵性の双子で、おじい様の未徠様と左徠様は、まるで鏡に写した様にそっくりのかわいいお子様だったと母から伺っております。」
「え?おじいさまには兄弟がいたの?今どこにいるの?」
かえでさんの顔が、また少し曇る。
「5歳の頃、突然のご病気で、亡くなったと聞いております。」
「あ、そう、そんなことが…。変なこと聞いてごめんなさい。でも僕、お友達みんなに親戚がいるのにどうして僕にはいないのかな。って思ってて。」
かえでさんは、少し笑顔を作りやさしく話しかけてくれた。
「ライル様。大丈夫ですよ。誰も話してはいけないと言ったわけではありません。知る権利もあると思います。私の知っていることならば、お話しいたします。」
「ありがとう。他に親戚とか血縁者っていたの?」
かえでさんは、記憶を辿るように目を閉じて話を続けてくれた。
「実は、ライル様のお父様、徠夢様も双子でお生まれになりました。」
「え、ええっ?」
「やはり、聞いたことはございませんでしたか?」
「う、うん。初めて聞いたよ。」
「もしかすると、徠夢様は忘れたいと思っておられるのかも知れませんね。」
「え、自分の双子の兄弟を忘れたいって、どういうこと?」
「誘拐されたのでございます。身代金を要求され、支払った末に結局戻っては来られませんでした。」
「死んだってこと?」
「わかりません。もう二十四年以上前の事です。」
僕は、体中の血液が冷たくなるのを感じた。
「他に何か聞いていることない?」
「そうですね。昔、朝霧家の一人娘が不治の病にかかった時の伝説的なお話があるそうですよ。私も、祖母から聞いた話なので詳しくはわかりませんが、昔話のような伝え聞かせるお話として、この土地に伝わっていると聞いたことがあります。」
かえでさんには他に知っている話はないということだったので、お礼を言ってその場を離れる。
その時、かえでさんが地下室の書庫に古い写真が残っていると教えてくれた。
次、チェックするべきはそこで決まりだ。