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197. 瑠璃からの手紙

 翌日、ライルは自分の日記を読み返していた。細かい日時までは書いていなかったが左徠が二十代の時に爆発事故で研究室が爆発してしまったことは確実なようだ。

 未徠に会って詳しい事故の日にちを教えてもらおう。

 誰が左徠を助け出したのか、どうして爆発事故が起こったのか知りたい。


 ふと、考え込んでいるときに別の世界の瑠璃リリィのことを思い出した。

 あっちでも左徠が見つかったりしていないのだろうか?

 自宅の寝室からクローゼットを抜けて主にアンジェラの絵画を保管している倉庫に入った。念のため、アンジェラに何か変わったことがないかチェックすると告げた上で行動する。アンジェラは最近すごく僕のことを心配していて、過保護っぷりがすごい。

 でも、それが僕にはとてもうれしい。

 倉庫に入り、普段と変わらない様子を見ながら、先に進む。

 一番奥の右側に、そこだけ布がかけられた絵画があった。

『これかな?』

 絵画を触らず、布だけをそっとよけると、確かに、マリアンジェラとミケーレの絵が真ん中あたりに立て掛けてある。

「あ…。」

 思わず声が出た。その絵の上に黄色いふせんがついた封筒が置いてあった。

 僕は絵画に触れないように気を付けて、封筒を持ち上げた。

 布を元通りに戻し、封筒を寝室に持っていく。

 ふせんには、『ライルへ  瑠璃リリィより2026年3月11日』と書かれていた。

 リビングでワインを飲んでいたアンジェラのところへその封筒を持って行った。


 今日の日付だ。並行世界での今日、置かれたばかりの封筒と言うことになる。

 封筒の中を開けてみた。

 ライル宛の手紙と写真が入っていた。

『ライルへ 体調は戻りましたか?私はあなたに治してもらってから、全く問題ない状態で過ごしています。一つ、残念なのは、ライルが私の中にいた時は使えた能力ちからが、一度使った能力ちから以外にどんなものがあるのか、さっぱりわからない=使えない点です。結局、全部あなたが持っている能力ちからを借りていただけだったのでしょうか?転移と治癒と翼は使えます。

 ところで、封印の間というところに、そちらで連れて行ってもらいましたが、こちらの世界にも同じ部屋はあるのですが、天使の像は一つもありませんでした。

 あと、母留美が妊娠して十月に出産予定です。』

 写真は徠夢の弟である徠太の娘、麗佳れいかと一緒に写っている。

 写真の裏には、『従妹の麗佳と瑠璃』と書かれていた。

 麗佳はこっちの世界に存在しない人だ。


 僕は、自分も近況を知らせたいと思っていることをアンジェラに話した。

 アンジェラは微笑んで、左徠が生きていたことでも書いたらどうだと言ってくれた。

 そうだな、それは、僕達にはとても重大なことだ。

 母親の事も書こう。あっちの世界と違って、こっちはいまいちな親との関係を保っている。僕が過去を変えたせいで母親が変わったことや、僕が置き去りにされてたことも。

 近況として、僕は、9月からアメリカのボーディングスクールに編入することも手紙に書いた。

 こっちの世界のリリィが僕の中に入り、もう別個体として存在していないことも書いた。

 そして、子供たちを描いたアンジェラの絵をポストカードにしたものを一緒に入れた。

 瑠璃リリィが成長し、向こうのアンジェラと結婚したら、うちの子達と同じ顔をした子たちが生まれてくるんだろうか…。


 封筒の表に『瑠璃へ  ライルより 2016。3.11』と書き、それを持って寝室のクローゼットを抜ける。

 アンジェラも一緒についてきてくれた。

 慎重に布をよけ、あの絵の上にそっと手紙をのせる。

 その上に布をふたたびかぶせる。また数日経ったら確認してみよう。

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