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190. 僕が変えた未来

 翌日、僕、ライルは日本の朝霧邸の祖父未徠を訪ねた。

 アンジェラの勧めでアメリカの全寮制プライベートスクールに編入を考えているので必要書類などの事でサポートしてもらうためだ。

 どうせ父徠夢に言っても協力してくれることはないだろう。

 未徠から、質問を受けた。

「ライル、留学する目的は何なんだ?明確な目的が無いとまた精神的に追い詰められるんじゃないか?」

「お爺様、アンジェラから提案されて自分でも考えさせられました。僕はいつも何かに必死で忙しくしていないと不安になる人間だと、最近ようやく自覚しています。

 色々と大変なことが多すぎて、その状態が普通になりすぎたのかもしれません。

 アメリカで飛び級制度を使って、最短で大学まで卒業して、将来の自分の視野を広げたいと思っています。」

「寮に入って寂しくないのか?」

「それは、転移用の場所として確保するだけです。基本、イタリアの家族と暮らします。学校はライルとして通いますが、アンジェラのために何かするときにはリリィになるかもしれません。」

「リリィになるとはどういうことだ?」

「僕の中に入ったまま出て来なくなりました。今現在は、別個体としての存在も確認できません。」

「不思議だな…お前の苦悩を解決するために発生したリリィがお前の苦悩を新たに生んでしまうとは…。」

「アンジェラに聞いたのですか?」

「そうだ。ライル、お前は何でも自分の中に溜めこむのが良くない。」

「はい。」

「がんばれよ。でも無理はするなよ。」

 その日のうちに必要書類が揃い、パスポートの申請を終えた。後日取りに行けば完了だ。家を出る前に、ここのピアノの弾き納めをした。

 この家でいろんなことがあった。悲しいことが多かった。また、時々訪れる機会もあるかもしれないが、距離をとるつもりでいるのだ。

 三曲ほど弾き終わった。さて帰ろうかと思ったのだが、家の中はシーンと静まり返っていて、僕一人しかいないみたいだ。

 未徠夫妻は先ほど、外出したが…高校に行ってる三人は学校だろう、アズラィールも大学だろうが、他にも何人もいるはずのやつらが出てこない。

 ものすごい不安に駆られた。

 僕は、慌ててイタリアに転移した。


「アンジェラ、アンジェラー。」

 慌ててアンジェラを探し回る。アンジェラはアンドレとリリアナと一緒に子供達とダイニングで夕飯を食べ始めるところだった。

「ライル、手続きは終わったか?」

「うん、それは大丈夫。」

「どうかしたのか?」

「あ、あの…日本の家にいる皆って今どうなってる?」

「皆、と言っても未徠夫婦と徠夢とアズラィールだけだろ?」

「え?徠神、左徠、徠央、徠輝、ニコラス、フィリップ、ルカ、マルクス、そしてライラは?徠人は?」

「えっと…マルクスはうちのじいさんだよな?」

「う、うん。そうともいうけど。」

「うちのじいさんは、ドイツの畑で薬草を作って元気に生活してるはずだ。」

「いつから?」

「最初っからだろ?あと、誰って言った?」

「じゃあ、ニコラス。ニコラスは?」

 それには、アンドレが答えた。

「ニコラスはユートレアの教会で司教をしていましたが、今はマルクスの家で一緒に薬品の会社を経営していますよ。途中、何度かライルに命を助けてもらったおかげで、超長生きしていますよ。あの、黒い羽の指輪のおかげもあります。」

「左徠は?ねぇ、左徠は?」

「どっかの研究員だった未徠の弟か?」

「え、左徠は高校生じゃないの?」

「いや、未徠と同じように医大に進み、どこかの大学で研究員をしていたが、二十代で研究所の爆発事故で亡くなったはずだ。どうして急にこんなことを聞き始めるんだ?」

「アンジェラ…、だって、僕の記憶と全部違ってて…。ここは、僕の世界じゃないかも知れない…。」

 ライルが顔面蒼白で言った時に、アンジェラはライルを抱きしめて言った。

「馬鹿だな、お前が望んでやったんじゃなかったのか?全部をあきらめるつもりで…。」

「え?どういうこと?」

 ライルは両目から涙を溢れさせ、アンジェラを見上げて聞いた。

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