表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/696

180. 命を救え

 息を吹き返した瑠璃リリィは、瑠璃リリィとして生きた記憶と、核に刻まれたライルとして生きた記憶を両方持ち合わせていた。

 能力も以前より数段高い。

 転移で向かった先は、現在のアンジェラの場所だ。

 心肺蘇生を続けていた医師も、もう見込みがないと、手を止めた時だった。

 医師が脈を取り、死亡宣告しようとしたときだ。

 目の前に、翼の生えた女の子出てきて言った。

「あんた、邪魔。さっさと輸血の血液持ってきてよ。」

 赤い目でそこにいた人たちに命令する。

 そして、アンジェラの心臓の辺りに手を当てた。

「大丈夫、大丈夫だよ。アンジェラ…もう私が来たからね。」

 もう片方の手で頭を触る。

「よし、安心してよ。もうどこにも行かないから。」

 そして、手首の傷を触る。

「もう、馬鹿なんだから。自分では死なないって約束したのに。」

 胃の中を手をかざして視る。幸い、もう薬物は除去されているようだ。

「輸血して。」

 看護師に命令し、輸血が始まって少しした時、瑠璃リリィはアンジェラの顔に自分の顔を近づけて唇に口づけをした。

「フィアンセが来てるんだから、早く目を覚まして。」

 もう一度、心臓の辺りに手を当てる。

「アンジェラ、アンジェラ…。ほら、見て指輪してきたよ。でかくて落っこちそう。

 明日、首にかけるためのチェーン買ってくれる?」

『ぴくっ』とアンジェラの指が動いた。

 停止していた心臓が動き出し、呼吸が再開した。

 瑠璃リリィはアンジェラの脳をくまなくチェックし、呟いた。

「さぁ、どうやってスキャンダルをもみ消そうか…。」

 輸血量が失血した分を補えるほどに達したとき、瑠璃リリィはアンジェラを連れ、自宅の自分の部屋のベッドの上に転移した。

 すぐに、未徠の部屋に行き、未徠を呼んだ。

「お爺様、ちょっと診てもらえますか?」

「なっ、瑠璃リリィどこに行っていたんだい?」

「アンジェラを連れてきたの。どんな具合か診て欲しいの。」

 未徠がアンジェラを診察する。

 少し熱があるが、呼吸も心拍も問題は無さそうだ。詳しく聞くと、先ほどまで心肺停止状態だったと言うではないか…。

 先ほどまで瑠璃リリィが使っていたモニターを使い、心拍数や血圧などを測りながら様子をうかがうことにした。

「お爺様、ありがとう。」

 そこへ、瑠璃リリィの母、留美が走ってきた。

瑠璃リリィどこへ行ってたの?」

「アンジェラのところ。連れてきた。」

 部屋のベッドで横たわるアンジェラを見て、ドキリとした。

「ねぇ、母様。アンジェラの電話番号知ってる?」

瑠璃リリィ、あなたのスマホにその番号からメッセージが来てたわよ。」

「え、そうなの?」

 そう言うと、瑠璃リリィはスマホを取り出し、その番号に電話をかけた。

「もしもーし。アンジェラさんの携帯電話でよかったですか?」

 そう話し始めた瑠璃リリィは、電話に出たのがアンジェラの会社で日本事務所の責任者をしている人物だと確認し、言った。

「あ、私はアンジェラのフィアンセで、朝霧瑠璃リリィです。

 アンジェラは今日、うちに泊まるから。え?スキャンダル?

 大丈夫。うちはアンジェラの実家でもあるから、実家に行ってただけだと言って。

 そして、事務所から、今夜の騒ぎはワインをこぼしたのを見たスタッフが勘違いして救急車を呼んでしまった。と明日の夜のライブが終わった後に事務所から発表して。ライブには必ず行くから、この番号に場所と時間を送って。衣装はそっちで用意しておいてください。何かわかんないことあったら言って。まだ、アンジェラは寝ているから、すぐには無理よ。じゃ、よろしくお願いします。」

 瑠璃リリィが電話を切るのを見ていた留美が、瑠璃リリィに話しかける。

瑠璃リリィ思い出したの?」

「あん?あぁ、北山先生が母親だってこと?そこら辺の物に残ってる記憶でわかったわ。ごめんなさい。私の頭の中にはその記憶は欠如しているみたい。でも大丈夫、母様って呼んでたかしら?それともお母さん?」

「ママって呼んでたわ。」

「え?マジ?徠夢のこと、父様って呼んでなかった?」

「呼んでたわ。」

「統一性がないのね。まぁいいわ、ママが良ければそう呼ぶわ。」

 留美は複雑な顔をしたが、頷いた。

「えっと、じゃあママ。どっかに余ってるベッドあるわよね?それ、ここに運ぶからどれ使ったらいいか教えて。」

「誰かお父様にでも頼みましょう。」

 という留美に、瑠璃リリィは首を横に振った。

「私、すごい技を使えること、思い出したの。大丈夫だから場所だけ教えて。」

 通常、客間として使用している部屋にある普段はソファとして使えるベッドを使うことにした。そのベッドのホコリを払い、指先でチョンと触った。

 ベッドがその場から消え、瑠璃リリィの部屋の開いてるスペースに収まった。

 リリアナが使っていた物質移動の能力だ。

「ママ、シーツとブランケット用意してくれる?」

 留美が用意したシーツを広げてベッドにセットした。

 すぐに食べられるものも用意してもらい、留美を部屋から追い出した。

「ありがとう、とりあえず寝るから、おやすみ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ