表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/696

179. 瑠璃(リリィ)とライル

 天使が住む場所で、自分たちを助けるために自らを犠牲にしたライルの魂の核を二人の天使は手に取り、たくさんの涙を流した。

 小さな金色の核は、二人の涙を吸い込み、虹色の核へと変化した後、白い小鳥へと姿を変え、どこかに飛んで行った。


 朝霧家では、窓のガラスを通り抜けて入ってきた白い小鳥に皆が注目する中、小鳥が『ピィー』と鳴き、瑠璃リリィの胸元にとまると、小鳥からあふれ出た金色の光の粒子はやがて、ひどくやせ細っている翼を広げた少年天使のの姿へと変わっていく。

 しかし、あくまでも光の粒子の集合体という感じだ。

 黄金に輝く天使が瑠璃リリィに馬乗りになった状態で静止した。

瑠璃リリィをお迎えに来たの?」

 思わず留美が天使に問いかけた…。

『北山先生…。』

 天使に旧姓で呼ばれ、気が動転する留美だった。私を知っている誰かなの?

 次に徠夢が口を開いた。

「お前は誰だ、うちの娘、瑠璃リリィをどうするつもりだ。」

 天使は冷静に瑠璃リリィの頬を撫で、答えた。

『もう、父様の犠牲にはなりたくないって言ってるよ。』

 未徠は、半信半疑でこう言った。

「今、アンジェラ・アサギリ・ライエンが心肺停止で危篤になっているんだ。瑠璃リリィと一緒に死ぬつもりで…。」

『アンジェラ…、僕はもう飛ぶ力も残っていないんだ。』

 ライルは泣きながら、瑠璃リリィの手を握った。その時、指輪に気づいた。

 ライルは指輪を触ると、その物質から過去の記憶を取り入れた。

 そして、とてもやさしい顔で、そっと瑠璃リリィの頭の手術をした個所に手を当てた。

 金色の光が手の先から出て瑠璃リリィの頭を覆う。

 次に瑠璃リリィの心臓の辺りに手を当てて、小さく息を吐いた。

『皆に約束して欲しいんだ。彼女が行きたいと言えば、止めずに行かせてあげて。

 彼女が嫌だと言えば、それ以上何も言わないで。僕と同じで彼女はとても弱いから。

 約束が守れるなら、彼女がもう一度笑うところを見せてあげるよ。』

 徠夢以外は皆頷いた。

『残念だよ。父様はちっとも変わらないんだね。』

 その時、未徠が徠夢を殴った。

「馬鹿もん。神が与えてくれた機会をお前のねじれた心のために逃すのか…。」

 徠夢が渋々「わかったよ、すまない。」と言った。

『いいかい、もし同じようなことが起こったら、彼女は一瞬で死ぬよ。絶対に約束は守ってね。』

 金色に輝く天使はそう言うと白い小鳥に戻って、瑠璃リリィの頭に向って突進した。

『パアッと』光の粒子が飛び散って消えた。

『ピーーーッ』と心停止の音を伝えていた生命維持装置の音が、『ピッ、ピッ』という心拍音に変わった時、瑠璃リリィは両目をしっかり開け、上半身を起こした。

「なっ。」

 驚いたのは皆だが、医師である未徠には完全に理解不能な出来事だった。

 心停止して五分以上が過ぎ、脳も機能しているとは思えない状況で、自力で起き上がったのだ。

 しかも、次の瞬間、首の呼吸器の管を左手で引き抜き、反対側の手で、傷を癒す。

 両腕の点滴の管も引き抜いた。

「ぐへっ。」

 気管に残っていた血が噴き出た。

 近寄ろうとした徠夢を瑠璃リリィは静止した。

 瑠璃リリィはふらふらと立ち上がり、大きな翼を出した。皆、目を疑って驚いていたが、そんなことはお構いなしに瑠璃リリィは留美に「ポーチを取って」と言った。留美は瑠璃リリィにポーチとスマホを渡した。

「行ってくる。」

 それだけ言い残して、瑠璃リリィは光の粒子になり消えて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ