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178. 運命の二人

 徠太からの着信を受け、スマホで話をしながら、話し合いをしていたダイニングのテレビをつけた。徠太の娘、麗佳が「瑠璃リリィちゃんの天使さんがテレビに出てるから教えてあげて。」と泣き始めたというのだ。

 チャンネルを合わせると、目に飛び込んできたのは衝撃のニュースだった。

『世界的なアーティストであるアンジェラ・アサギリ・ライエン氏が、滞在中のホテルで大量の睡眠薬を飲んだ上、手首を切り自殺。現在病院に搬送されているが、心肺停止とみられる。』

 顔写真やミュージックビデオが流れ、どれだけ売れているアーティストか手に取るようにわかる。それを見た留美は思った。

「まさか…、瑠璃リリィの事を悲観して…。」

 留美はショックを受けた。数時間前に訪ねてきた男が、娘の状態を悲観して自殺を図ったのだ。

 確かに、あの憔悴しきった様子は、ただの数回会っただけの関係とは思えなかった。

 留美は、今まで抑えていた感情を吐き出してしまった。

「あんたが悪いのよ。瑠璃リリィのことなんでも否定して、最後には殴ってまで言うこと聞かせようとしたんでしょ。あんたが、彼の事も殺したも同然よ。」

 留美が徠夢につかみかかって吐き捨てた言葉を誰も止められなかった。

 その場にいたみんながそう思っていた。瑠璃リリィを殺したのも、徠夢おまえだ。

 嫌な沈黙が流れた。徠夢も反論できなかった。実際そうだった。娘可愛さに、異常に執着していた。他の者に渡したくないと思ってしまった。


 その時だ、瑠璃リリィの部屋から生命維持装置のアラーム音がけたたましく鳴った。異常を知らせる音だ。

 未徠が慌てて走る。他の三人も続いた。

 瑠璃リリィは血圧が下がり、心拍が乱れ、状態が悪化していた。

 未徠が何か手を尽くそうとしても、どうにもならないほど悪化していた。

 もう、脳が生命を維持することができない状態なんだろう…。

 聴診器を使い心音を確認する未徠を見守る三人。未徠はもうできることが無いと判断した。四人の前で、空しく心音を表す音が途切れ、『ツーーーー』という音に変化した。皆、来る時が来たと覚悟をしていた。

 最後に愛する人に会えて、殆ど同じ時に没することができるのだ。

 これもきっと運命なのだろう…。あまりにも悲しい運命ではあるが、受け入れるほかない。


 留美が堪えきれずに嗚咽を漏らした時、窓にコツンと何かが当たった。

 音を出したそれは、ガラスをすり抜けて、部屋の中に入ってきた。

 金色の粒子を振りまく、小さな白い小鳥だった。

 閉まっているまどのガラスをすり抜けるだけでも驚きを隠せないが、その小鳥は可愛い声で『ピィー』と鳴くと、瑠璃の胸元に止まったのだ。

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