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169. 過去の改変(1)

 目の前が真っ白になり、眩しさに目を細めた後、視界がはっきりしたと同時に左の肩に痛みが走った。

『バンッ』

 私の目の前のすごく近いところにあの天使さん、アンジェラがいた。

 今日は飛んでいないけど、翼を広げている。

 私はまた、空中に飛んだ状態で、彼の首にかかっているあの黒い羽のネックレスを手にしていた。目が合ったと思った。

「うっ、いったぁい。うぇえええん。」

 その場に天使さんと一緒に倒れこむ、痛さに泣いてしまいそうになったところで、天使さんの体にいくつも鉄砲の弾が当たって血が出ているのに気が付いた。

「うわわぁぁぁん、やだ、やだ、やだ、やだあぁぁぁ。」

 私は慌てて天使さんの上着のボタンを外して、血が出ているところに指を突っ込んで、弾を全部取り出し、治れ治れと思いながら傷を手で押さえた。だけど、心臓に手を当てると、止まっていた。

「だめ、だめ、ダメ~。」

 心臓にも手を当て、動くように念じた。

『げほっ』といって、天使さんは息を吹き返した。息をし始めたら翼が縮んで消えた。

 天使さんはとても大きいので、抱きついた状態で飛んでも、足を引きずってしまった。

 一生懸命引きずって、仲間の人が見つけてくれそうなところまで連れて行った。

 岩の陰に隠れて、天使さんが仲間に見つけられるのを見守った。

「助かった…。」

 ホッとしたら、目の前が白くなって自分の部屋の床に倒れこんだ。

『ドサッ』という音に気付いた父様が、部屋に走って入ってきた。


瑠璃リリィ、どうした?どこに行ってたんだ!」

「うぇえええん、痛いよぉ。」

 肩から血を流し痛みを訴える娘に、父様はお爺様を呼んでくれと北山先生に言った。

 お爺様が慌ててやってきて、救急車で病院に行かないと対応できないと言っていた。

 私は、怒られるのが嫌で、左肩の前の方から指を体にめり込ませて、銃弾を体の外に押し出した。指の先から出る何かのおかげで背中の傷も少しずつ塞がっていった。

 父様が救急車を呼ぼうとしたときには、どこに傷があったかわからないほどになっていた。血の付いた弾丸を見て、父様とお爺様は言葉を失った。

 傷の痛みが治まり、疲れて眠ってしまった。眠ってるうちに血で汚れたワンピースはパジャマに着替えさせられていた。


 暗くなるころに目が覚めた。ベッドの横に椅子が置かれており、そこに北山先生が座って私の手を握っていた。

「北山先生、どうしてここにいるの?」

「…。瑠璃リリィ、きっと混乱してるのね。大丈夫よ、安心して寝なさい。」

「…。あ、先生、スマホ、取って。」

 北山先生がスマホを渡してくれた。

 さっき開いていたページがそのままである。画面のスクショを撮った。

 そして、ページをリロードした。

「あっ、変わってる。」

 今度は、『アンジェラ・アサギリ・ライエン=著名な画家として有名。精神を病んで自殺。』となっていた。

「むぅ。せっかく助けてあげたのに。」

 私が思わずそう言うと、北山先生が囁くように言った。

「ねぇ、誰を助けたの?」

「え?あぁ、夢で見たの。天使さん。」

「天使さんがどうかしたの?」

「うーん、戦争で鉄砲で撃たれたのを、弾を取ってあげたの。でも瑠璃リリィも一つ当たっちゃって、痛くて泣いちゃった。」

「天使が戦争に行くの?」

「うーん、その人だけ天使さんなんだよ。でっかい白い翼があるの。」

 私は迷いながらも、スマホのスクショの画面を見せた。

「ほら、戦争で死んだってなってたのに、自殺に変わったんだよ。」

 北山先生はぎょっとした顔をして、父様を呼びに言った。


 父様とお爺様が慌てて部屋に入ってきた。

 それまでの話を北山先生が二人に説明している。

瑠璃リリィ、嘘は言っちゃいけないよ。」

「…。」

「本当のことを言いなさい。どうしてこんな怪我をしたのか教えておくれ。」

「嘘じゃない。」

 私は、立ち上がってクローゼットの前に行き、パジャマを脱いで、白いワンピースに着替えた。

「嘘じゃないから、天使さんを助けに行ってくる。」

 私はさっきの検索のページのスクショをまた撮り、スマホをポーチに入れて肩にかけた。三人の前で、引き出しを開け、三人には見えないように黒い羽のネックレスを右手で握った。

 瑠璃リリィの体は右手の先から金色の光の粒子になって、サラサラと崩れ落ちる。

 それを見ていた三人は、凍り付いた。目の前で娘が、忽然と消滅したのだ。

「「瑠璃リリィ!」」

 瑠璃リリィは跡形もなく消えた。




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