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164. 決断
僕は約五百年前の封印の間に転移してきた。
ここは、以前のままだ。ルシフェルの体は金属か石かわからないが、乳白色で半透明のような封印の間の壁や玉座と同じような物質でできているようだ。
天使の姿のルシフェルをそのまま石像にしたようなその亡骸は、今まで何度か頬に触れ落ちた涙の石を使ったことがある。
今日も頬に触れば、涙を流すのだろうか…。
金色の眼球に赤色の瞳。その容貌に以前は驚いてしまったが、それこそが悪魔と言われる所以であろう。
僕はルシフェルの前に跪き、今の想いを口に出した。
「ルシフェル、僕はもうこの世界に未練はないよ。僕が生まれない、誰も僕を愛してくれないこの世界なんて…。もし、願いが叶うなら…、アンジェラが僕だけを愛してくれる、そんな世界に生まれたい。」
もう、辛いのは嫌だ。もう、孤独は嫌だ。何もかも失った僕には、悪魔ルシフェルを復活させて、自分の理想の世界に生まれ変わるしか希望がなかった。




