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16. ライルの日記

 僕は夜中にふと目を覚ました。

 アダムは腹を出して寝ている。ブランケットをかけ直してあげた。

 そうだ、そういえば日記を書いていない。

 こんなにたくさんの事が起こっているんだから、記録を残しておきたい。

 僕はそっとベッドを抜け出し、デスクのライトをつけてノートを開いた。まだ二日分しか書いていない。


 七月二十三日金曜日、市の資料館に行き、姉妹都市の展示の写真立てを触ったことから一八七五年七月二八日のドイツに行きアズラィールに会う。

 沼地で沈んで二〇二一年の家の裏庭にアズラィールと一緒に戻る。戻ったのは午後三時ころ。

 あと、何あったっけな?

 あぁ、父様が昔の朝霧家の資料を見せてくれた。

 その中にアズラィールが書いたと思われる記録があり、そのことから家の裏庭の池に帰ってくるとわかったらしい。

 その記録から、ここにいられるのは約三日間だと考えられる。


 七月二四日土曜日、話の中でアズラィールはまだ覚醒していないことがわかった。彼の父親は一八七五年当時行方不明。

 北山先生の拉致事件が発生、バロンの顔に付着した血液に触ったら先生の中に意識だけが転移した。転移先でイヴに助けられて無事帰ることが出来た。

 他の人の体に入っていても能力は使えるようだが、手が使えないと治癒はできない。人の中に転移する仕組みがわからない。どうやって脱出するかもわからない。

 どうやったらアズラィールを覚醒することが出来るのか。

 ここまで書いてふと気配を感じて振り返ると、アズラィールが立っていた。

「ライル、何してるの?」

「あ、起こしちゃった?ごめん。僕が覚醒した時から起きた不思議な事や、わかった事を日記にまとめているんだ。正直、自分でもよくわからないことが多くて。」

「そうなんだね。それ、読んでもいい?」

「あっ、うん。ちょっとというかかなり恥ずかしいけど、何かのヒントになるかもしれないから、いいよ。」

 アズラィールはライルの日記を読んだ。

「ライル、ちょっと聞いていい?」

「なぁに?」

「ライルは、ライルのお父さんの中にも入ったことがあるんだね。」

「あ、うん。そうなんだ。でもその時は体は動かせなかったし、その時間と少しずれた後の時間だったんだ。」

「その時々で状況が違うってことなのかな?」

「そうじゃないかと思うけど、全然わからない。」

「アダムはどうして人の姿になれるの?」

「それもわからない。ドーナツがどうしても食べたかった。とアダムは言ってたけど、どうしてかはわからないよ。」

「謎ばかりだね。」

「うん。でも、どうにかしないと。」

「そうだね。ありがと。」

 僕らは少し話した後で、またベッドに入り眠りについた。


 七月二十五日日曜日の朝がきた。

 アダムのベロベロ攻撃はまだないようだ。

 薄目を開けてアダムを確認する。おや、いないぞ。

 トイレかな?ベッドから出てトイレに行ってみる。

 いない。ダイニングも確認するが、かえでさんが食事の準備をしているだけでアダムは見当たらない。

 僕は焦って父様と母様の寝室へ走り、ノックもせずに中に入った。

「あ?」

 アダムはちゃっかり母様にしがみついて寝ている。

 そこへ父様が寝室についている浴室から出てきた。シャワーを浴びていたようだ。

「お、ライル。どうした?おまえもママのおっぱいが恋しくなったのかい?」

 むきゅ~っ。顔が真っ赤になるのが自分でもわかって恥ずかしい。

「そ、そんなんじゃないよぉ。アダムがいなくて驚いて、探してたんだ。」

 父様は微笑んで僕の頭を撫でた。

「人間の姿になっている時は大きく見えるけど、アダムはまだ乳離れしていないくらいの仔犬だからね。夜中にベッドに入ってきて杏子に甘えてたよ。」

 く~っ。ちょっと胸がチクチクした。僕の母様なのに。

「僕が抱っこしてあげようか?」

「いらないよ。父様の意地悪。」

「さぁ、顔を洗っておいで。朝食にしよう。」

 僕は自室に戻りアズラィールと共に朝食のためダイニングへ向かった。



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